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「父上も母上も仲良しでうれしい」

数年後のお話。時系列はバラバラです。

「ヴィダディ殿下!! 待ってください!」

「いやだよー!」



 皇族たちの住まいである城の中を走り回る、小さな人影。黒い髪と赤い瞳の小さな少年の名はヴィダディ。この帝国の皇太子である。今年四歳になるヴィダディはそれはもう元気に育っている。



 両親や周りに愛されてすくすく育っているヴィダディは少々……いや、かなりやんちゃであった。



 走り回るヴィダディのことを追いかけているのは、護衛の騎士である。

 ヴィダディは、皇帝であるヴィツィオの血をそれはもう濃く継いでいる。その強さというか、運動神経のセンスというのはぴか一である。暴君である皇帝に似ていて、割と自分勝手で不遜な面もある。だけれども、皇妃であるマドロールの性格もちゃんと引き継いでいる。



 走り回っているヴィダディは、石に躓き転びそうになる。

 周りにいたものたちは、はっとする。

 皇族であるヴィダディが怪我をするというのは大事である。

 だが、目の前でヴィダディは華麗に態勢を整え、くるりと地面で一回転して怪我を回避する。



「あー。びっくりした!」

「びっくりしたじゃないですよ! 怪我をしたらどうするんですか!」

「だいじょうぶ、だいじょうぶ!」

「大丈夫じゃないです!」



 ヴィダディの護衛騎士や侍女たちは非常に彼に振り回されていた。

 ちなみにヴィダディは周りが慌てれば慌てるほど楽しんでいる愉快犯な節もあった。とはいえ、本当に周りが責任を取るほどのことはしないが。



「ヴィダディ殿下! これからロルナール殿下の元へ行くのでしょう? そんなに泥だらけじゃいけませんよ!」

「はっ、そうだった!」

「では、綺麗にしてから行きましょうね。はい、行きますよ」



 今年二歳になる可愛い妹に会いに行くためにはこのままではいけないと立ち止まったヴィダディを騎士は捕まえ、風呂へと連れて行った。



(はやくきれいにして、ロルナールに会いに行かないと!)



 ヴィダディは妹であるロルナールのことをとてもかわいがっていた。小さくて、母親であるマドロールに似ていて、可愛くて仕方がないのだ。

 まだ小さくて自由に走り回ったりもできない妹が、もっと大きくなってもっとおしゃべりできるようになったり、一緒に駆け回れる日をヴィダディは楽しみにしていた。ひそかに城の敷地内に作っている秘密基地(自分しか知らないつもりだが流石に護衛には知られている)にも妹を案内したいなどと考えている。



 風呂で綺麗に身体を洗われたヴィダディは、泥一つついていない綺麗な服に着替えさせてもらう。

 それが終われば、妹のもとへと向かった。

 妹の部屋へは妹の乳母である女性と自分の母親がいる。





「母上!」

「まぁ、ヴィダディ。ロルナールに会いに来たの?」

「うん!」





 少し生意気なヴィダディだが、母親のマドロールのことは大好きなので母親の前では素直な子供である。


 マドロールは、いつもにこにこしていて幸せそうにしているので、その様子を見るのがヴィダディも好きである。なので、母親の笑顔を損ねる存在は許さないぞという同盟を父親である皇帝と結んでいる。もちろん、その同盟をマドロールは知らない。

 ちなみにだが、皇族は子育てに両親がかかわらないことも多いがマドロールは前世の記憶があるのでなるべく子供たちと過ごすようにしている。





「ロルナール、かわいい」

「ええ。かわいいわよね! こんなにかわいい娘ができてとっても嬉しいわ。これからどんどんかわいくなるのよ!」

「母上に似ているから、絶対かわいくなる」

「あらあら、まぁ、ありがとう! かわいいって言われるのなんだかうれしいわね」




 ヴィダディとマドロールは二人で眠っているロルナールをのぞき込んでいる。ロルナールは、マドロールに似ていて銀髪である。今は閉じられている瞳は赤色だ。ヴィダディは母親と妹とおそろいの赤い瞳がお気に入りである。

 そうやってほほえましい会話をロルナールを起こさないようにこそこそと話しながら、皇女のことをのぞき込んでいる二人を見ながら乳母も侍女たちもにこにこしている。彼らにとって皇帝一家の仲睦まじい様子は日々の癒しであった。



 そんなふうにしていると、その部屋に別の人物がやってくる。



「マドロール」



 やってきたのは、皇帝であるヴィツィオである。

 この男、子供のことはかわいがっているもののマドロールの名を真っ先に呼んでよっていくのであった。相変わらず皇帝夫妻は仲良しである。



「父上、ロルナールは寝てます。しーっですよ」

「ああ」



 ヴィツィオはヴィダディにそう言われて、うなずきながら軽く頭をなでる。なでられたヴィダディは嬉しそうにしていた。



「ふふ、ヴィー様、私たちの子供たちはとっても可愛いですね」

「マドロールが一番可愛い。二番目がロルナールで、次がヴィダディだな」

「まぁ、ありがとうございます。ヴィー様。私にとってもヴィー様が一番かっこいいですわ。永遠にですわ」



 推しから一番可愛いといわれたマドロールは嬉しそうに笑っている。この二人は子供の前だろうと割とこの調子であった。



 ちなみにその様子を見て、ヴィダディは、



(父上も母上も仲良しでうれしい)



 とこちらもにこにこしていた。




 今日も、皇帝一家は平和である。


第一子 ヴィダディ 4歳 黒髪赤目 男

第二子 ロルナール 2歳 銀髪赤目 女

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― 新着の感想 ―
[一言] ウィダティももっと褒めて差し上げて! クスッ
[一言] みんな、可愛い♥️
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