「準備をするのも楽しいの」―属国観光編②―
「何を持っていこうかしら!」
「マドロール様、私たちで準備しますよ」
「折角のヴィー様との旅行だもの。私も準備したいわ。こういうのは準備をするのも楽しいのよ」
マドロールの旅行の荷物は侍女たちが準備するものである。
だが、マドロールは旅行の準備を一緒にしたいと思ったらしく混ざっている。
(ヴィー様と一緒に旅行に行けるなんて、本当に楽しみ。ヴィー様のかっこいい姿を沢山見ることが出来るかしら? ヴィー様はいつもかっこいいけれど、いつもと違う場所だからこそ、ヴィー様の素敵な様子を見ることが出来るかも……)
マドロールはそんなことを考えて楽しそうににこにこしている。
前世でも旅行に向かうとなると楽しくなるものだ。ワクワクして、楽しい気持ちになって、何が待っているだろうってそんな気持ちになる。
「今回は帝国の皇妃として出かけるわけだけど、お忍びもきっと出かけるわよね。お忍び用の服も持っていかないと」
「もちろん、用意しますよ」
「ヴィー様が可愛いって言ってくれる服装にしたいわ」
「そうですねぇ。でも陛下はどんな服を着ていてもマドロール様のことを可愛いっていうと思います」
「そうかもしれないけど、ほら、やっぱり私ヴィー様の前では一番可愛い恰好をしたいって思うのよねぇ。旅行前に商人呼んで色々と買いそろえたいわね!」
そんな風に言うマドロールが可愛くて侍女は思わず頬が緩んでいる。
マドロールはヴィツィオが大好きでたまらないので、ヴィツィオの前では可愛い服装をしておきたいらしい。
「旅行先でのヴィー様もきっとかっこいいんだろうなぁ」
「マドロール様はいつでも陛下のことをかっこいいとおっしゃってますよね」
「だってかっこいいですもの! ヴィー様は本当に最高にかっこよくて、世界で一番だもの」
マドロールはそんなことを言う。
本当に心の底からそういう気持ちでいっぱいの様子だ。
(はっ、というかこれって、いわゆる新婚旅行という感じよね! 新婚旅行って響きがいいわ。私とヴィー様で一緒に新婚旅行って本当に考えただけでワクワクするわ。どんなものが見られるかしら)
マドロールは今日もそうやって妄想をしている。
「マドロール、何してるんだ」
「ヴィー様!!」
マドロールが侍女たちと一緒に旅行の準備をしていると、ヴィツィオがやってきた。ヴィツィオがやってくると侍女たちはすぐに跪く。
侍女たちは皇妃であるマドロールにはまだ気やすい対応だが、ヴィツィオの前では緊張した様子である。
「属国に行くのが凄く楽しみだなーって思って、準備をしてたんです」
「そんなのこいつらに任せればいいだろ」
「えー、でもヴィー様、旅行って準備をする段階から楽しいんですよ? これ持っていきたいなぁとか、色々考えるとワクワクしますよ!」
マドロールは意気揚々とヴィツィオに話しかける。
こんな風にヴィツィオに気やすい態度で話しかけられるのもマドロールだけである。
「そうか」
「はい! ねぇ、ヴィー様。今回はお仕事で行く感じですけど、色々見たりもできますよね?」
「仕事はついでだ。メインはマドロールとの旅行だ」
「ふふ、でもちゃんとはしましょうね。その合間で出かけたいです! ヴィー様のかっこいい姿沢山みたいなぁって!!」
「そうか」
「はい! 私、あんまり出かけたこともなかったので、こうやって大好きなヴィー様と一緒に出掛けられると思うと楽しみで仕方がないです」
マドロールがそう言って笑えば、ヴィツィオが優しい目でマドロールを見る。
ヴィツィオはマドロールが楽しそうにしている様子を見るのが好きなのだろう。その優しい表情を向けられると、幸せな気持ちでいっぱいになるのだった。
「ヴィー様、旅行、楽しいものにしましょうね! まぁ、ヴィー様と一緒の旅行ならきっとどんな場所に行くとしても楽しいですけど!」
「そうだな」
「楽しみですねー」
「俺も楽しみだ」
マドロールの言葉に、ヴィツィオも笑った。
その後、マドロールは城に商人を呼んだ。
沢山の商品を見せられる中で、どんな服を買おうかとかで一生懸命マドロールは悩んでいる。
「マドロール様、こちらはいかがですか?」
「マドロール様、こちらが良いと思います」
商人や侍女たちの話を聞きながら、マドロールはどれを購入するかを決めている。
結局気になったものは全部購入していた。これも帝国が栄えている証だろう。皇妃としての費用が確保されているので、マドロールはそこから色々購入しているのであった。
そしてそうやって準備を行っているうちにあっという間に出かける日がやってきた。




