「ヴィー様の手って、大きくて触れられると安心するんです」
「はぁ……素敵っ」
マドロールはその日も、幸せそうな表情でヴィツィオのことを凝視していた。
マドロールはヴィツィオのことを見つめるのが好きである。前世から推しであったヴィツィオが動いている姿をこの目で見れるだけでなんて幸せなんだろうかと、ずっとそんなことばかり考えている。
(ヴィー様は、本当にいつも素敵。かっこいい。完璧すぎる。でも生きているのよ。もうそれだけで幸せ……っ)
前世のことを思うと、マドロールはヴィツィオが生きていると実感するだけで本当に幸福である。
前世では現実にヴィツィオはいなかった。その声を実際に聞くことも、その姿を見ることも、何も出来なかった。だからこそ、本当にこの奇跡を感謝している。
じーっと、ただヴィツィオを見つめるマドロール。
……後ろに控えている侍女たちはすっかりその様子に慣れているので見守っている。
ちなみに今、ヴィツィオは臣下からの報告を受けている最中である。こうして皇帝として足を組み、堂々とした様子で命令を下すヴィツィオをマドロールは幾らでも見ていられる。
(とても素敵で、かっこよくて……はぁ、好き。私には向けられなくなった素敵な視線も凄くいいのよね。ヴィー様の優しい表情も、私のことを大切にしてくれている態度も好きだけど、こういうヴィー様もかっこよすぎる)
冷たい視線。全く表情が動かない。そんなヴィツィオの一面もマドロールは愛している。
どんな一面だって、マドロールの知らない思ってもない一面を見たとしてもマドロールはそれを愛でるだろう。
ヴィツィオへの話が終わった臣下は、そそくさとその場を後にする。その男性はあまりヴィツィオと関わりのない城で働くことになったばかりのようだ。マドロールもあまり見たことがなかった。
その男性はじーっとヴィツィオを見つめているマドロールを見つけて驚いた顔をしていた。
そしてその男性が去った後もマドロールは仕事の邪魔をしてはいけないと思っているのか、じーっとヴィツィオを見ていた。
「マドロール、こっちにこい」
「はい!!」
中々自分から近づいてこないマドロールにヴィツィオが声をかける。そうすればマドロールは嬉しそうに笑って近づいた。
「ヴィー様、今、私の相手をしていて大丈夫なんですか?」
「ああ」
ヴィツィオはそう言って、マドロールの手を引いてそのまま膝の上に乗せた。
膝の上に乗せられたマドロールは、幸せそうだ。
(ヴィー様の膝の上に乗れるとか、本当に神様ありがとう! って感じよね。ヴィー様に密着できるの、幸せ! 遠くから見ても近くで見てもヴィー様の美しさは完璧だわ)
じーっと至近距離でヴィツィオの顔を凝視するマドロール。いつものことである。
「ヴィー様は本当にかっこいい……! 見ているだけでドキドキするの」
「そうか」
「はい! 幸せです!!」
マドロールがそう言ったら、ヴィツィオが笑った。
そしてその後、何を思ったのかマドロールはヴィツィオの手を見る。
「ねぇ、ヴィー様の手を触ってもいいですか?」
「マドロールは許可なしに触れていい」
「ふふっ、私だけの特権って感じですね!」
そう言いながらマドロールはヴィツィオの手を取る。マドロールの手よりも大きな手である。
「ヴィー様の手って大きいですよね」
そんなことを言いながらヴィツィオの手を自分の頬に持ってきてすりすりする。
(ヴィー様の手を自由に動かしていいって権利をもらえるだけで、なんだか特権って感じがする。大きくて、素敵な手)
顔を少しだけ赤くして、誰が見ても幸福そうにヴィツィオの膝の上でその手を頬にあてているマドロールは可愛らしい。
「それ、楽しいか?」
「はい!! 私、ヴィー様の手、大好きです! もちろん、手だけじゃなくて全部好きですし、好きなところを語ったらきりがないんですけど。手も大好きだなーって思います!!」
ヴィツィオの手はとても綺麗だ。その手を自分で自由自在に出来るだけで嬉しかった。
「ヴィー様の手って、大きくて触れられると安心するんです」
幸せそうにはにかみながら笑えば、ヴィツィオが笑った。
そしてマドロールに好きにされていた自分の手を動かし、自分の意思でマドロールの頬に触れる。
そのまま口づけを落とせば、マドロールはまた幸せそうな表情を浮かべた。
今日も皇帝夫妻は仲良しである。
短編の少し後の話




