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捨てられる予定の皇妃ですが、皇帝が前世の推しだと気づいたのでこの状況を楽しみます! 関連話  作者: 池中織奈


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「ただ、あまりにも頼みすぎて……ヴィダディが無茶をするのは嫌だから、そんなに何でもは口にはしないようにするわ」―新米皇妃、頑張ります③―

「ヴィダディと喧嘩するなんて全く想像が出来ないわ」



 夫婦喧嘩の話は私も聞いたことはある。擦れて、離縁することになった人たちだって知っている。とはいえ、私とヴィダディが喧嘩をするというのは想像もできない。

 ヴィダディってあんまり怒らないと思う。というか、妻である私に対して怒りを見せることはあまりないだろう。



「確かにそうね。お兄様は奥さんのことを大切にするようにって、子供のころから言い聞かせられてきたらしいの。そうしないとお母様が悲しむから。私だってもしあなたが悲しむことがあったらお兄様に助言するわ。もちろん、ランジネット側に問題があったら意見はするけれど……」

「ええ。そうしてほしいわ。ヴィダディはいつも私に優しくて、ちゃんと何かあった時は相談し合えているから、喧嘩はきっとおこったとしても少ないでしょうね」



 喧嘩はしたくないし、もし喧嘩をするとなっても数が少ない方がいいとはランジネットは思っていた。ランジネットはヴィダディの微笑んでいる顔が好きだ。もし喧嘩にでもなれば、夫を悲しませてしまうことになる。



「でも喧嘩するほど仲が良いというだろうし、私は誰かと恋人になったら喧嘩はしてみたいかも……。恋人同士のやり取りとかもやってみたいわ」

「ふふっ、ミドロールはとても可愛いわ。私とヴィダディはすぐに結婚したから思えば恋人期間って短かったかも……」



 それは少しだけもったいなかったかもしれないと、そんな風に思ってしまうのはミドロールが恋に対して夢を見ているからだ。

 ミドロールはどちらかというと、クールな印象を人に与える見た目をしている。

 しかし可愛らしい乙女心を持ち合わせているのである。




(帝国の第二皇女で、見目美しく、それでいて剣技も習っていて……こんなにも可愛らしいなんて、ミドロールに結婚相手が居ないのが不思議だわ。親しくならないとその可愛らしさが理解出来ないからなのかしら)




 ランジネットの目から見て、ミドロールはそれはもう素晴らしい皇女である。身分や見た目もさることながらその中身も素敵なのだ。

 だからランジネットの目から見ると、ミドロールは凄く異性に囲まれそうに見える。



(あとはそうか、私はお会いしたことはないけれどお義父様が娘を可愛がっている方だったからというのもあるのか。『暴君皇帝』と呼ばれていた方……逆らうと命がないと言われていて、だからこそそんな皇帝陛下の娘であるミドロールに近づく人も少なかったのかもしれない。手紙をいただいた限り、とても子供思いの方だけど……)



 ランジネットはヴィダディの妻として、前皇帝夫妻と手紙のやりとりをしている。もちろん、マドロールからの手紙の方が文字数は断然多い。ヴィツィオからの手紙は簡潔なものであるが、子供への愛情がうかがえるものだった。

 ランジネットからすると、義理の父親であるヴィツィオは子供思いな立派な父親である。ヴィダディからも散々、両親の話はされている。



「でも夫婦になってからも、恋人同士がやるようなことをどんどんやってもいいわよね。ちょっと考えてみようと思うわ」

「ぜひそうしてちょうだい。私はお兄様とランジネットの惚気話などは幾らでも聞きたいもの。お父様とお母様もいつもイチャイチャしていたわ。一緒にお出かけもよくしていて、お父様ってばお母様がどこかに行きたいとかいうと全部連れていっていたのよ」

「まぁ、そうなのね。噂通りお義母様達は仲良しなのね。ヴィダディも……私が行きたい場所を口にしたら何処にでも連れて行ってくれそうだわ」

「そうね。お兄様も好きな人には甘いもの。妹である私のお願いだって余程の無茶ぶりじゃなければ全部叶えてくださるし……」



 ヴィダディは妻であるランジネットだけではなく、弟妹達にも大変甘い。身内には優しく、敵には容赦なくを地で行く存在であった。


「ヴィダディはミドロール達のことをとても可愛がっているものね」

「ランジネットが私達のことを疎まないでいてくれているのもとても嬉しいわ。人によっては夫が弟妹達を可愛がり過ぎているのも嫌がるでしょう? 尤も、お兄様が私達を疎むような人を妻に迎えるとは思ってもいなかったけれど」




 ミドロールはほっとした様子でそう告げる。




 ミドロールは兄思いなので、もし兄嫁が嫌がるなら兄との距離を置くことも当然検討していた。

 ミドロール達兄妹はとても仲良いのだが、皇族がそんなに仲が良いなんて信じられないと要らぬ心配をする者も世の中には居なくもないのである。




「私はそんなことは言わないわ。寧ろヴィダディがあなたたちを可愛がっている様子を見るのも好きだもの」


 やはり妻に見せる姿と、弟妹達に見せる姿は異なる。ランジネットはそんな弟妹達にだけ見せるヴィダディの表情を見るのも好きだった。



「そういってもらえると嬉しいわ。それより、先ほどの話だけどお兄様にやって欲しいこととかあったらどんどん言って大丈夫だからね。きっと何でも叶えてくれるから」

「問題ない範囲の要望は口にするわ。ただ、あまりにも頼みすぎて……ヴィダディが無茶をするのは嫌だから、そんなに何でもは口にはしないようにするわ」



 好きな人が、夫が、こうして自分の言葉を聞いてなんでも叶えてくれようとすることは喜ばしいことだ。

 ただし何気なく口にしてしまったことを叶えようとしてヴィダディが困るのだけは嫌だった。




「そんなことは気にしなくていいのに」


 ミドロールにはそう言われたが、ランジネットからしてはやっぱり気になってしまうのであった。


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