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捨てられる予定の皇妃ですが、皇帝が前世の推しだと気づいたのでこの状況を楽しみます! 関連話  作者: 池中織奈


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「私が誰のことも好きにならなかったら、お母様はどう思うだろうか?」―幼い皇女と、両親の秘密話③―

 お喋りをして、お絵描きをして、そうしているうちに時間は過ぎていく。そんな時間がメロナールにとっては楽しくて仕方がない。


 遊び終わった頃には、三歳のメロナールはすっかり疲れてしまっている。

 また、彼女は護衛に抱きかかえられる。



「ありがとう」


 お礼を言うと、護衛はときめいているのか胸を押さえていた。護衛騎士達はいつも皇帝一家にときめいたり、ほのぼのしていたりしている。



(今世の私、凄く可愛いからか皆こういう態度をよくするのよね。……もっと大きくなったら、色恋沙汰とかおこったりするのかなぁ。私、そういうのは前世でこりごりだな。なんか恋愛とか出来ないかも?)



 メロナールは過去のことを思うと、そう感じて仕方がなかった。



 もちろん、前世と今世は違うことを知っている。今世で愛されて育っているからこそ、前世のような状況がおかしかったのだということを彼女は理解している。

 それでも――……胸の奥に根付いた恐怖心が消えてくれなかった。もしかしたらこの幸せな世界がすぐに崩れ去ってしまうかもしれない。たまにそんなことを考えてしまう。


 だからメロナールは、自分が今世で恋愛などというものを出来る気がしていなかった。




(私が誰のことも好きにならなかったら、お母様はどう思うだろうか? お母様って、凄く幸せな人。だからどうなんだろう、お母様は私が変わった子でも受け入れてくれたけれど、こんな風に愛されているのに不安がっているのを知ったらどう思うだろうか)



 時たま、メロナールはどうしてもそんなことを考えてしまった。


 メロナールは両親のことが大切で、好きだ。だからこそ余計に不安に思う。無償の愛を与えてくれている両親は、自分の前世を知っても受け入れてくれるのだろうかと。

 そんなもの話す必要もないとも、当然思っている。ただそれでも……メロナールが前世の記憶という枷を持っている限りは時折憂いた表情を浮かべてしまうのは確かであった。

 メロナールは全く以って、前世のことを吹っ切れているわけではなかった。




「お母様、ただいま」



 屋敷に戻って、メロナールは母親の元へと真っ先に向かった。

 そしてその体に思いっきり抱き着く。




「あら、どうしたの?」


 メロナールの態度に不思議そうな様子のマドロール。だけれども穏やかに笑っている。


「抱き着きたくなったの!」



 理由はと特に語らない。メロナールにとって、正直に言えば前世の記憶は邪魔なものではあった。この記憶がなければ……こんなに不安になることはないのにと思ってならないから。

 だけれども前世の記憶がなければ、今のメロナールが居ないというのは確かだった。だってメロナールは、前世の記憶に多大な影響を受けているのだから。



「そうなのね。なら、幾らでも抱き着いてね。抱っこしてもいい?」

「うん」



 メロナールが頷くと、マドロールは笑顔で抱きかかえる。



「前よりも重くなったわね。あなたが健やかに育ってくれて、私は嬉しいわ」

「お母様は私が元気だと嬉しい?」

「ええ。もちろん。逆にあなたが体調を崩しでもしたら……悲しくなってしまうわ。もし何か異変でもあったらすぐに言うのよ? そしたらヴィー様がお医者様を手配してくださるから」



 マドロールはそう口にして、穏やかな笑みを浮かべる。

 メロナールは、母親の笑顔を見るのが好きだ。柔らかくて、慈愛に満ちている。その赤い瞳は、いつだってメロナールのことを愛おし気に見ているのだ。


 母親と話していると、メロナールはどうしようもないほど安堵してしまう。




「うん。そうするね」


 答えながら、メロナールの中の不安が少しだけ減ったのが分かった。


(お母様と話すと、凄くほっとする。お母様は私のことを凄く大切にしてくれている。私が笑っているのが嬉しいって、元気なのが嬉しいって言ってくれる。お母様とお父様は私に何かを求めてくることってあんまりない。なんだろう、皇族の血を引くからこうするべきとか、こうあるべきとかそう言うの全然ないんだよね。会ったことのないお兄様とお姉様も、こんな風にのびのびと育てられたのかな?)



 マドロールの腕の中で、メロナールはそんなことを考えていた。


「お母様、疲れたら降ろしてね?」


 抱っこされることがメロナールは好きだけれども、母親の華奢な腕で自分を抱きかかえるのは辛いのではないかなどと考えてしまっていた。特に母親が皇妃であったと知ってから、メロナールは余計に母親が守られて生きてきたというのが分かる。



 そんな皇妃だったはずの存在なのに、子育てを人に任せることなどせずに面倒を見てくれている。

 そのことをメロナールは不思議に思いながらも、嬉しかった。




「ふふっ、大丈夫よ。メロナールは優しい子ね。子供は大きくなると流石にくっついたり、抱きかかえたり出来なくなるから今のうちに思う存分堪能をしたいの」


 マドロールはそう言って、メロナールのことを降ろす気は全くないようだった。



「そっかぁ」

「ええ。そうよ。あなたのお兄様やお姉様たちもね、小さい頃は抱きかかえさせてくれたのだけど……流石に大人になった今はそんなことは出来ないの。そもそも向こうの方が大きいから抱っこも出来ないわ。だから、メロナールを抱っこ出来る今の時間を大切にしたいのよ」



 マドロールはにっこりと微笑んでいる。


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