「父上、なかなか許可出してくれないんだよなぁ」
「なぁ、グトファーガ、これでいい?」
「上手く出来た気がする!」
目を輝かせながら、褒めて欲しいとばかりの笑顔を皇帝に仕える魔法使いグトファーガに見せるのは、皇帝夫妻の息子であるロッツィオとルッツィオだ。彼らは今年、十歳になる。
彼らは魔法使いとしての才能があった。そのことが発覚してから、ヴィツィオに仕える魔法使いたちに魔法を習っていた。
「その年でこれだけ魔法を発現出来るとは、素晴らしいです」
「だろ? やった!」
「もっと上手くなりたいな」
グトファーガから褒められて、二人は嬉しそうな表情を浮かべている。
得意げな表情で笑う二人は大変愛らしいものだ。二人ともヴィツィオの血を継いでいるのもあり、美少年である。
双子皇子は、自分たちに魔法の才能があることを大変喜んでいた。自分がそんな力を使えるかと思うと嬉しくて仕方がないらしく、初めて才能が発覚した時には興奮したものである。
「グトファーガ、俺達、いつ魔物討伐連れてってもらえる?」
「実践行きたいー!!」
まだ十歳にも関わらず、彼らは魔物討伐に行ってみたいらしい。
「いや、まだ駄目です。子供なんですから、魔物討伐に行きたがらないでください」
「えー、いいじゃんか」
「俺達の魔法、どれだけ実践で使えるか試したいのに」
グトファーガから言われた言葉に、不満そうな表情になる双子皇子。
皇帝夫妻の次男と三男という立場の彼らは、皇位を継ぐ予定は全くない。時たま皇太子のヴィダディを蹴落とそうと企む連中が近づこうとしてくるものの、二人にとっては長兄は尊敬できる存在である。
自分たちのことも可愛がってくれており、大好きな兄だ。
皇族だと権力争いなどでぎすぎすした雰囲気に陥ったりすることもよく聞く話であるが、帝国においては全くそういったことが起こる気配はない。
そもそもロッツィオもルッツィオも、ブラコンでシスコンである。兄や姉達のことをとても大切にしている。
末っ子という立場を思う存分楽しんでいる二人であった。
「……ちゃんと陛下から許可をもらわないと駄目ですよ。勝手に連れて行くなんてことをすれば私は首が飛ぶ可能性があるので」
皇帝がどれだけ子供達を愛しているか、グトファーガは知っている。それにかなりの親バカである。
家族愛に満ち溢れている『暴君皇帝』は妻や子供達に何かあるとそれはもう取り乱すことが目に見えている。
「父上、なかなか許可出してくれないんだよなぁ」
「俺達のことを可愛がっているのは分かるけれどさー。俺達、ちゃんと魔法使えるのに」
そういう双子皇子は、大変不満そうな顔である。
皇帝は妻や子供達に対してとても過保護なのだ。大切だからこそ、何か危険な目に遭わないようにと心がけているのだ。
正直ロッツィオとルッツィオは父親のことを尊敬しているものの、過保護すぎる部分に関してはうんざりしていた。
父親の怖さを知っているので、反抗することはない。ただ呆れはあるのである。
「父上、母上にも過保護すぎるよなぁ。というか、母上って父上と一緒じゃないと城を出たことないらしいし」
「それで受け入れてるのが母上だけど、俺だったらちょっと窮屈に感じそう」
自分の母親のことを思い浮かべて、双子皇子はそんなことを言う。
「そうですね。私もそれは思います。皇妃様はずっとあの重すぎる愛を受け入れているので、凄いです。……ロッツィオ殿下とルッツィオ殿下は、陛下みたいに誰かを束縛しすぎないように気をつけましょうね。皇妃様だから問題ないですけれど、普通の人はああいう束縛は耐えられませんから」
グトファーガがそう言うのは、双子皇子にも皇帝と同じような資質はたまに見られるからである。……大切なものはとことん大切にするようなタイプなのだ。
だから警告するようにそう告げる。
「分かっているよ! でも大事なものはちゃんと守れるようにはしたいかな」
「うん。両想いになった相手が居たら、その人が他の人を見ないようにはしておかないと」
二人はそう口にする。
少しだけ危なげな雰囲気があり、グトファーガはこの二人がお相手を見つけた時にどうなるのだろうか……と心配そうな様子を思い浮かべている。
「そうですか。まぁ、ほどほどにしてくださいね。あと魔物討伐に関しては、根気強く陛下を説得してください」
話を戻して、グトファーガがそう言うと、双子皇子は頷くのだった。
それから魔法の特訓の後に、二人の皇子はすぐさま皇帝の元へと向かった。ただし皇帝は皇妃と仲良くしており、すぐさま会話を交わすことが出来なかった。
というわけでそれからしばらくしてから、双子皇子は皇帝に「魔物討伐をしたい」と直訴した。
しかし、「駄目だ」と言われてしまい、それから何度もそれから説得することになるのである。そして魔物討伐の許可が下りたのはそれから二年後だった。




