「知らない国の学園はたのしいわ!」―第一王女の学園編①―
「わぁ、見たことのないものが沢山だわ」
帝国の第一皇女であり、家族に溺愛されているロルナールは属国の一つにやってきて目を輝かせている。
ロルナールは本を読むのが好きだ。そういう物語のような展開を見て見たいとも思っていた。
皇女としてロルナールは大変大切にされており、ロルナールの世界は限られた世界だった。帝国から出たこともなかったので、こうやって違う国に来ているというだけでもロルナールは興奮していた。
それにこの場所には帝国の第一皇女としてではなく、ただの他国からの留学生としていられることもロルナールにとっては面白いことが待っていそうとワクワクすることだった。
ロルナールは帝国の属国の一つの、学園に通うためにその街を訪れていた。
学生たちの多いこの街は、にぎわっている。ロルナールは割と箱入り娘なので、こうやって街を見て回るだけでなんだか楽しい気持ちになっている。
「お嬢様、一旦借りている家に向かいましょう」
「ええ? 見て回りたいわ」
「ふふ、幾らでも街に出れますから、行きましょう」
ロルナールは、今回帝国の貴族としてではなくマドロールの祖国であるティドラン王国の下級貴族の娘として学園生活を行うのである。もちろん、その名前を借りる貴族にはちゃんと話を通してある。
帝国の貴族であるというだけで面倒な態度を取られる恐れがあるので、こうして下級貴族の娘として通うことが面白そうだとロルナールは思っているのだ。
ロルナールは侍女と、ひっそりと周りに紛れている護衛たちと一緒に借りる予定の家へと向かった。下級貴族が住まうのに違和感がない程度の小さな家だが、その周りの家もすべて過保護な家族たちの手によって全て護衛たちで固められている。
ロルナールに危険があると、暴君皇帝が怒りをあらわにすることだろう。
「まぁ、小さくて可愛い家だわ。ここでしばらく過ごすのね。ふふ、どんな暮らしになるか楽しみだわ!!」
そんなことを口にして、家の中をロルナールは見て回る。ちなみに前日のうちに家具などはもう運び込まれている。
ロルナールは折角なのでと、遊び心満載で自分の髪と目の色も変え、母親に似ている愛らしい顔を隠して通うことにした。
学園の入学式でも注目されることがなく、ロルナールは大変新鮮な気持ちになった。
ロルナールは帝国の第一皇女として、注目を浴びている存在だった。見た目もとても愛らしく、皇帝一家に愛されている皇女なので、いつも注目ばかり集めているのだ。あと人がどんどん集まってくる。そういう立場に居た。
下級貴族の娘として、入学するとこれだけ注目を浴びないんだとロルナールは面白くなっていた。
ロルナールに声をかけてくるクラスメイトもいたが、ロルナールがティドラン王国の下級貴族の娘だと知ると興味を無くすものも多かった。現在ロルナールの通う学園のある国と、ティドラン王国はあまり地位は変わらない。ティドラン王国は皇妃であるマドロールの祖国なので優遇はされているが、下級貴族ならどういう態度でもいいと思っているのかもしれない。
それどころか、ロルナールが帝国の皇女だと分かっていないので用事を言いつける侯爵令嬢もいたぐらいだった。そのことに見守っている影は怒りを募らせていたようだが、ロルナールはそういう用事を言いつけられることも初めてだったのでいうことを聞いてみた。なんにせよ、簡単なことだったのでそれぐらい問題がなかったのだ。
「知らない国の学園はたのしいわ!」
ロルナールがそう言ってにこにこ笑っているので、周りの護衛も侍女たちも行動は起こさなかった。ただロルナールに無礼な態度をした人リストは作っているようだ。多分、本当に我慢できないぐらいやらかされたらすぐに彼らは行動を起こすことだろう。
ロルナール、学園に入学する。




