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捨てられる予定の皇妃ですが、皇帝が前世の推しだと気づいたのでこの状況を楽しみます! 関連話  作者: 池中織奈


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「ヒロインのマリアナがもうすぐ現れるの!」

ヴィダディを産んですぐぐらい。漫画のヒロインの話。

「まぁ!」





 その日、ある知らせを受けたマドロールは目を輝かせていた。



 嬉しそうにその赤い瞳をキラキラとさせているマドロールは大変可愛らしく、周りに控えている侍女たちも笑っている。ただしマドロールの思考回路は独特なので、侍女たちはどうしてマドロールがこんなににこにこしているのかが分からない。

 マドロールが受けた知らせは、『暴君皇帝と、聖なる乙女』のヒロインであるマリアナが社交界デビューするということだった。



(あのヒロインのマリアナが! 私の前に現れるのね。ヴィー様は私のことを好きでいてくれているから、漫画の通りにはならないけれど、マリアナの色んな表情が見れるなら見たいわ! でもヴィー様のこと、取られちゃったら悲しい……。いえ、ヴィー様に愛されたって思い出があるだけで私は生きていけるから捨てられてもその時はその時だけど)



 マドロールは、ヴィツィオの気持ちを散々分からされたので自分が捨てられることはないと思っている。が、もしそういうことになったとしてもヴィツィオに愛されて、ヴィツィオの子を産んだというだけでも生きていけると思っているようだ。

 多分、ヴィツィオにその思考を読まれたらまた分からされてしまうことであろう。




「マドロール様、何か嬉しいことがあったのですか?」

「ふふ、そうね。嬉しいことがあったの!」

「それは良かったですね」



 そんな会話をマドロールは侍女たちとした後に、生まれたばかりの第一子であるヴィダディに会いに行くことにした。



 マドロールはつい先日、男の子を産んだばかりである。



 ヴィダディと名付けられた可愛らしい赤ん坊にマドロールはメロメロである。大好きな推しと自分の子供。ヴィツィオに似ていて、見ているだけで幸せな気持ちになるのだ。



 マドロールは皇妃なので、自分の手で赤ん坊の世話を全部見るわけではない。皇妃としての仕事もあり、乳母が基本的に面倒を見てくれている。とはいえ、マドロールも前世の記憶があるので、時間があるときにはすぐに息子のもとへと向かうようにしている。

 ヴィツィオは案外、生まれた子供のことを可愛がっている。




 マドロールがヴィダディのもとへと向かうと、乳母がマドロールを迎えてくれた。

 ゆりかごの中で眠りヴィダディを見て、マドロールは思わず微笑む。



(はぁ、本当に可愛い。こんなに可愛い子が私から生まれたなんて不思議よね。ヴィー様の小さい頃の様子は見れないけれど、ヴィダディ見ていたら昔のヴィー様、こうだったのかなとか思えるし。どんなふうに育つのだろうかって楽しみ)



 マドロールはそんなことを思いながら、ヴィダディのことを見ている。乳母もにこにこしながらマドロールを見ていた。

 そしてそうしていると、ヴィツィオもその場に現れる。

 乳母は何度接してもヴィツィオのことを恐ろしいと思っているようで身体をびくりとさせている。




「ヴィー様もヴィダディを見に来たんですね」

「ああ」

「ヴィダディ、凄く可愛いですよね。これからどんな風に育っていくのかって考えるだけでワクワクします」

「そうだな」



 ヴィツィオがマドロールに向かって、優しい笑みを浮かべていてマドロールはきゅんとした。



(はぁ、素敵。本当にかっこいい。ヴィー様は本当に素敵。こんな風に笑ってくれるなんて。かっこよすぎる)



 マドロールはヴィツィオの表情に相変わらず毎回ときめていた。



(マリアナにヴィー様が見せていた表情と、私に見せている表情ってどのくらい違うのかしら? でも漫画の中のヴィー様はもっと冷たい印象だった気がするから、漫画以上に素敵なヴィー様をきっと見れているのよね!!)



 マドロールはじっとヴィツィオを見る。



「マドロール、どうした?」

「ふふ、ヴィー様がとってもかっこいいなぁって」



 マドロールがそう口にすると、ヴィツィオはマドロールの口をふさいだ。ヴィツィオは割と突然、マドロールに口づけをしたりする。乳母はまた始まったという様子で、置物のふりのようなものをして黙っている。

 その後二人は連れあって部屋へと戻った。




「ねぇ、ヴィー様、ヒロインのマリアナがもうすぐ現れるの!」

「……前にマドロールが言ってたやつか」

「そうなの」



 そう言いながらマドロールはヴィツィオをじっと見る。



「どうした?」

「んー、マリアナが現れるのが楽しみなようで、どうなるかなって気持ちになっているの」

「そいつが何をしようと、マドロールは心配はいらない。邪魔なら排除する」

「えぇえ? ダメですよ。ヴィー様。私はマリアナを見たいし、マリアナと話したいですもん」



 ヴィツィオが物騒なことを言えば、マドロールが慌てて止める。

 ヴィツィオはマドロールが会ったこともない女――マリアナのことを沢山喋っていることに少し面白くなさそうであった。



「マドロール、その女の話はとりあえずやめろ」

「えー? なんで?」

「……俺と二人の場で、他の奴の話をそんなにするな」

「きゃーっ! ヴィー様、それは私にヴィー様だけを見てほしいって話ですかね? ヴィー様、可愛い。私の一番はいつでもヴィー様ですからね。ふふ、じゃあ今からヴィー様の話を沢山しますね」



 マドロールはそう口にすると、意気揚々とヴィツィオ本人にヴィツィオのことを沢山語っていた。





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