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捨てられる予定の皇妃ですが、皇帝が前世の推しだと気づいたのでこの状況を楽しみます! 関連話  作者: 池中織奈


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「ヴィー様、あーん」―お忍びデート⑤―

「ヴィー様、あれ、見て。とってもきれい!!」

「ああ」




 マドロールが帝都を歩きながら、街頭や建物の装飾に目を輝かせながら指をさす。



 輿入れの時に帝都を通ったはずだが、その時のマドロールはあくまでお飾りの皇妃としてやってきた王女でしかなかった。外の光景など楽しむこともなかった。

 無邪気に笑うマドロールは、純粋にこのお忍びデートを楽しんでいた。ちなみに、その様子にスリをしようとしたものもいた。当然のことだがマドロールとヴィツィオに近づく前に捕まっていた。

 マドロールはそのことに当然気づいていない。ヴィツィオは気づいていたが、特に行動を起こしてはいない。護衛たちがどうにかしたので興味もないようだ。




「ヴィー様、とっても楽しいですねー」

「そうだな。こういうのも悪くない」



 そういう会話を交わしていれば、マドロールのおなかがぐぅとなった。



(はっ、気づけばもうこんな時間! そうよねぇ、お城だと決まった時間にご飯が出てくるけれどお忍びデート中だからそういうわけでもないもんね!)



 マドロールはおなかが鳴ったことに気づいて、そんな思考に陥る。そしてヴィツィオの耳元に口を近づける。



「ヴィー様、おなかすいたけど、ごはん外で食べるのはいいの?」

「魔法具あるから問題ない。あと毒見役もついてきている」

「そっか! じゃあ、食べよう」





 マドロールはヴィツィオの言葉を聞いてにこにこと笑っている。



 外でヴィツィオと一緒にご飯を食べられることがマドロールは嬉しいらしい。帝都には沢山の飲食店があるのでどのお店がいいだろうかとマドロールは楽しそうに見て回っている。



「ん-、どれもおいしそう。ヴィー様は何が食べたい?」

「俺はがっつりとしたものが食いたい」

「ああ、お肉とか? はぁ、ヴィー様って結構ごはん食べるものね。そういうヴィー様も素敵!」

 マドロールはそう言いながらきょろきょろして、一店の大衆食堂に目をつける。

「ヴィー様、あそこでいいです?」

「ああ」



 そしてマドロールとヴィツィオはそのお店へと足を踏み入れる。


 それなりににぎわっているそのお店は貴族は当然いない。なので、お忍び風のマドロールとヴィツィオは少し目立っている。ただそのお店内にも護衛たちはいる。それにヴィツィオが目を光らせているので、下手にからもうとしてくるものはいないようだ。



 というか、マドロールは見ていないがヴィツィオの眼光はとても鋭い。只者ではない雰囲気を醸し出している。

 マドロールとヴィツィオは相席になった。相席の相手は実はひっそりと護衛している者だったりするが、当然マドロールは気づいていない。



「ねぇねぇ、ヴィー様、何食べますー? 私はどうしようかなぁ」



 マドロールはにこにこと笑いながら、メニューを見ている。

 パーティーなどの公務の場でもないのでマドロールはすっかり表情豊かににこにこしている。



 ヴィツィオはすぐにメニューを決めていた。マドロールはしばらく「うーん」と悩んでいた。

 しばらくしてマドロールは「決めた」と言って、店員さんに声をかけた。

 こうやって頼むのも今世では初めてのことなので、少し緊張しながら頼んだ。




「ふふふーん。はっ、こういう場で鼻歌はだめよね」

「別に小さい声ならいいだろ。文句言うやつは黙らせるか?」

「ヴィー様? ダメですよ? 私はちゃんと静かにする!」



 マドロールは楽しくなって思わず鼻歌を歌ってしまい、はっとなって口を押える。



 ちなみにその会話は周りにも聞こえているので、「可愛いなぁ」と見られているがマドロールは特に気づいていない。

 料理が届いてからもマドロールは嬉しそうににこにこしている。



 マドロールがヴィツィオを見ている間に毒見がされていたが、マドロールは気づいていなかった。さて毒見や魔法具での検査を終えてから、二人は食事をする。



「ヴィー様、とってもおいしいですね」

「ああ」

「ヴィー様、これ食べます?」

「ああ」

「ヴィー様、あーん」




 マドロールはそう言いながら、お肉をヴィツィオに差し出す。ヴィツィオはそのままそれを食べる。

 マドロールはその様子を見ながら嬉しそうに笑っていた。




(ヴィー様にあーん出来るのって、すごい良いわ。ヴィー様を餌付けしている気分! ヴィー様のこういう姿を見ると可愛いよね)





 護衛は目の前で皇帝夫妻の「あーん」を目撃して少しだけ気まずい気持ちになっていたり、大衆食堂の客たちから注目を浴びていたりしたが、マドロールもヴィツィオも気にせずいちゃいちゃしているのだった。



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