「……だって、ヴィー様が素敵すぎるんですもの」―制服デート編⑦―
7/25 二話目
「ヴィー様、本当に世界で一番かっこいいです!!」
「そうか。マドロールも似合ってる」
「むふふっ、赤髪と銀の瞳のヴィー様とかもう、ヴィー様が私の物になったっていう背徳的な感情湧きますね!」
「俺はマドロールの物のようなものだろう」
「ぐっ、ヴィー様、そんな発言されるとこう、やばいです! ヴィー様を好きにしてしまいそうになります!」
「好きにすればいいだろう。俺もマドロールを好きにする」
「幾らでも好きにしてください! 私はヴィー様の物ですからね!」
そんな会話を交わしている皇帝夫妻は、お忍び制服デートのために髪と目の色を魔法具で変えていた。
ヴィツィオは、赤髪と銀の瞳に。
マドロールは、金髪と黒の瞳に。
互いの目の色を髪に、髪の色を目にしている。
制服を着たヴィツィオが自分の髪と目の色を纏っているので、マドロールは興奮するしかない。
「着こなし方もちょっと崩している感がこう、解釈一致ですよね! ヴィー様は優等生って感じじゃないですもの。あ、でも優等生スタイルもありですね。眼鏡とかもかけちゃったり……はっ」
「どうした」
「眼鏡をかけたヴィー様を想像したら声をあげかけました。眼鏡ヴィー様もありですわね。ね、ヴィー様、ちょっと眼鏡もかけてみません? あ、でも伊達眼鏡ってすぐに用意できないですかね?」
「すぐ用意させる。マドロールもかけろ」
「私もですか?」
「ああ。俺が見たい」
「ふふっ、じゃあお互い眼鏡もかけましょう!!」
宿の一室で楽しそうに会話を交わす皇帝夫妻。マドロールの要望により、伊達眼鏡は本当にすぐに用意された。
ヴィツィオは黒いフレームの眼鏡を、マドロールは赤いフレームの眼鏡をかける。
「やばいですよ、ヴィー様それ!! ヴィー様は眼鏡もきっと似合うと思ってましたけど、本当になんていうか、眼鏡をかけたヴィー様も最高です。新たなヴィー様の可能性を見いだしてしまったようなそんな気分です! まぁ、ヴィー様は視力がよくて眼鏡なんかかけなくても問題ないのが解釈一致な正規ルートなんですけど、でもこういう眼鏡をかけたヴィー様も本当最高ですね」
「マドロールも可愛い」
「ありがとうございます! ね、ヴィー様。時々眼鏡をかけて過ごしません? 私色んな眼鏡をかけたヴィー様を沢山見たいです」
「ああ。マドロールもかけるなら」
「私の眼鏡姿なんてヴィー様がご所望ならいくらでも見せますよー。約束ですよ、ヴィー様。時々眼鏡姿見せてくださいね?」
「ああ」
……すっかりヴィツィオの眼鏡姿にマドロールは新たな扉を開いてしまったらしい。傍に控えていた侍女は「これから大量の眼鏡が発注されるんだろうな」とそんな未来が容易に想像出来た。
そんな会話を交わした後、ヴィツィオとマドロールはいざ制服デートに向かうことになった。
指を絡ませ、仲睦まじく寄り添いながら皇帝夫妻は学園都市を歩き始めた。
マドロールはあたりをきょろきょろしたり、ヴィツィオを見たりと大忙しである。
「マドロール、落ち着け」
「……だって、ヴィー様が素敵すぎるんですもの。こんな最高のヴィー様のことをずっと見つめていたいけれど、周りの景色やお店も見たくて……」
「俺は幾らでもこの格好をしてやるから、落ち着け」
「ふふ、なら今は周りを見ることにしますね。でもヴィー様が素敵すぎるので、やっぱり時々見つめちゃいますけど! あとで素敵なヴィー様を隅々までじっくり鑑賞したいです!」
「ああ。構わない」
ヴィツィオの言葉にマドロールは楽しそうにきゃっきゃっとはしゃいだ様子を見せる。
心の底から楽しそうに笑うマドロールを見て、ヴィツィオも笑みを浮かべるのだった。
「ヴィー様、あのカフェ入ってみません? カップルが沢山います!」
「ああ」
マドロールが早速目をつけたのは、一軒のカフェである。
そのカフェは見るからに繁盛していた。様々な制服を着た学生の姿が多くみられる。それでいてカップルの姿も多い。
こういう学生向けのカフェが楽しそうだとマドロールは目を輝かせている。
ヴィツィオはマドロールの望みが第一なので、そのカフェに入ることになる。
ただし混雑しているので、少し並ぶ必要があった。
「ヴィー様、待つの大丈夫ですか?」
「マドロールが入りたいならいい」
「ならよかった」
皇帝夫妻はひっついたまま列に並び、仲良く会話を交わしている。
……あまりにも仲睦まじい様子に、一人で列に並んでいる男子生徒が羨ましそうに妬ましそうにヴィツィオを見ていた。
あとは「仲が良いカップルだなぁ」「見たことないカップルだけど、とても仲よさそう」と周りから視線を集めているが、二人とも特に気にしていない。マドロールに関しては学園都市での制服デートに興奮しすぎて、そういう視線を気にしてられないようだ。
それから少し待って、ようやく中へと入れた。




