第七話
次の日の昼休み。今日は、気分的に屋上で食べようと思った。階段を上がっていき、次の階が無くなるまで上がる。そして、目の前には屋上の扉があった。
久しぶりに、屋上で昼飯食べるな。
そう思い、屋上の扉のドアノブに手をかけた。たが、瞬時に脳裏に浮かんだのは転校生との緊張の時間。私は、手にかけていたドアノブを離した。今一度、考える。
前回、転校生が居て厄介な事になった。人は、過ちを繰り返しながら学び、成長していく。
私は、扉についてるガラスを見て屋上に誰かいるか確かめた。
すると、転校生と女子たちが楽しく昼飯を食べていた。
あっぶな。また、気づかずに屋上に出るところだった。同じ過ちは、繰り返さない。
転校生も楽しく女子たちと昼飯を食べてるんだ。邪魔しちゃいけない。
仕方ないが、今日は教室で食べよう。
そう思い、私は、階段を降りていった。
それにしても、ある程度転校生も、学校には慣れてきたようだ。転校生を中心とする女子のグループも出来て、安定している。凄いよな、まだ1ヶ月ぐらいしか経ってないのに、自分を中心としたグループを作るだなんて。
そう思いながら、階段を降りた。そして、私のクラスの階で廊下に出た。
「あ、あの〜。」
廊下に出た途端、右側から声がかかった。とても、弱々しい声だった。
右を見てみると、私よりも少し身長が高い女子がいた。
髪の毛は、セミロングで肩まで伸びてる。ふんわりとしとた感じで髪の毛が曲がりくねっている感じだ。色は、赤茶色で特徴的だった。そして、とても、可愛らしく、しかしどこか大人びている印象だった。
と言っても、これで会うのが初めてではない。先輩だ。
「どうしましたか?。先輩。」
私は、先輩の方を向いた。
おどおどしてる先輩は、目線があちらこちらと目を合わせてくれなかった。
「優勝くん、、、。あ、あの、きょ、今日もワールドセット手伝ってくれる?、、、。」
先輩は、申し訳なさそうに聞いた。
ワールドセットというのは、最近私と先輩がやってるゲームの事だ。剣と魔法がありの世界を色々と巡り周り、ダンジョンをクリアしたり、ボスを倒したりするゲームだ。最近流行りのオープンワールドである。また、そのワールドの広さで高い評価を受けていたゲームだ。
「いいですよ。今回はどこ行くんですか?。」
先輩は、それを聞きいたら、元気になり目が輝いた。
「ほ、本当?。優気くんは、優しいね。あ、ありがとね!。それでえっとね、今回は絶望の輪廻ガンジャルガを倒したいんだ。」
先輩は、楽しそうに言い出した。
「はい。分かりました。ボス戦ですね。今夜、一緒にがんばりましょう。」
先輩は、より一層やる気を見せてくれた。いつの間にか、ずっと逸らしていた目が私をちゃんと見ていてくれていた。
「う、うん!。いつも、手伝ってくれてありがとね。」
「いえいえ、私も楽しいから誘ってくれて嬉しいですよ。」
「うん!。じゃあ、またワールドセットで会おうね。」
そう言って、ルンルンで先輩は去っていった。
先輩、可愛ええー。
そして、時間は過ぎていき、21時。パソコンで動画を見てたら、画面の右下から吹き出しが出てくる。一通のメールだ。
[ 優気くん、ワールドセットできるかな?。]
私は、その吹き出しをクリックしメールソフトを立ち上げる。
先輩からのメールである。
[ はい。できますよ。先輩。]
私は、颯爽とキーボードをうち、メールを送った。
[ 分かった。じゃあ、誘っておくね。]
先輩は、そう言ったあと、バッチグーのスタンプを送った。
さて、やりますか。まぁ、このゲームは好きではあるが、なんと言ってもこのゲーム、難易度が高いのだ。どのぐらいかと言うと、敵の攻撃を2、3回、まともにくらえば死ぬぐらいだ。結構、鬼畜である。しかし、ちゃんと対策したりマルチでやったりすると高難易度でも案外楽しめる。そんなゲームだ。
そんなワールドをパソコンでたちあげた。ワールドセットには、先輩からのお誘いが来ていた。そのお誘いを承認し、先輩のワールドの読み込みが開始された。
それにしても、今回やるのボス戦かー。私、苦手なんだよな。ボスと戦うの。ダンジョン系なら得意なんだが。
そう思っていると、先輩のワールドにいつの間にか入っていた。
先輩に召喚された私は、神殿のようなところにいた。
目の前には、先輩のアバターが立っていた。
先輩のアバターは、侍である。腰には、細長い刀があり、防具には侍の鎧を着ていた。一式、侍防具を揃えたのである。また、右目と左目の色が同じ色ではない。右目は、黒く、左目は、赤くなっていた。赤くなっている左目に魔眼をつけているのだ。前々回にダンジョンをクリアして手に入れたものである。あれは、大変だった、、、。そして、髪の毛は、ロングで、頭に装着している兜から長い髪の毛が出ている。まあ、アバターでは私と同じ身長だ。双方も最大まで身長を伸ばすようにアバター設定したせいで、どちらもまったく同じ身長である。
目つきは、とても鋭かった。先輩と真逆である。
[ 優気くん。来た!。]
プレイ画面の左下のメールの欄に先輩のメールが来る。
「はい。来ましたよ。」
私は、メールを返した。
ふと、先輩のアバターを見ていると、何回も屈伸を繰り返していた。喜んでいるだ。
すると、さっきまで繰り返してた屈伸が止まった。
その後、ほんの少し時間が過ぎ、メールが来る。
[ 優気くん。通話しない?。]
また、左下から先輩のメールが来た。
[ おけい。]
私は、気軽に返した。
パソコンで、通話ソフトをたちあげる。
数分後、先輩から電話が来た。直ぐに、受話ボタンをクリックした。
「あ、もしもし?。聞こえていますか?。優気くん?。」
先輩の柔らかい声がヘッドホンから聞こえてくる。
「はい。聞こえていますよ。先輩。」
「あ、優気くんの声が聞こえる。良かった、良かった。」
先輩は、嬉しそうに言う。
「じゃあ、先輩が先導してください。ついて行きますので。」
ボス戦までは、ここからじゃまだ少し遠い。そのため、先輩に先導してもらうのだ。
「うん。わかったよ。」
そう言って、プレイ画面の先輩のアバターは、口笛を吹き、馬を呼び出した。そして、その馬に綺麗に跨り、走っていく。私もついて行くように馬を出し、走っていく。
色々な道のりを経て、空と大地が燃えるような赤いステージに来た。雲は、真っ赤に染まっており、木々たちは、全て枯れ果てており、目立ったものは一切ない。全てが地獄のような所である。
「す、凄く怖いところに来たね、、、。」
先輩から、その景色に驚いているような声が聞こえてきた。
「そうですね。確かに、絶望の輪廻のようなところですね。」
私は、念の為、右手に杖を構えた。その杖の先端には、球体のようなものが着いている。恥ずかしながら、前線にたつとボコボコにされて大地に返されてしまうため魔術師だ。元から、前線に立って反射神経でどうこうやりくりするのは、苦手だ。
そして、唐突にBGMが変わった。太鼓のような音がドンドコと太く聞こえてくる。ボス戦のBGMである。私は、段々と体に緊張が走った。
「来ますね、、、。先輩。」
私は、先輩に覚悟を決めるように言った。
「そうだね、、、。」
先輩も少し緊張しているようだった。
そして、目の前に飛び込んでくるように空からボス戦が重く着地した。
ドゴンッ。
土煙が舞う。視界が開けていき、ボスが見えた。
「絶望は、繰り返される。━━━行くぞ、下界の民よ。」
図太い声がきこえてくる。私は、1つ息を飲む。
さて、ボス戦、開始だ。