中津夢翔の初デート!?
明日、どんな格好で行けばいいんだ!?
中津は頭を抱えて悩んでいた。
明日、急遽叶愛と出掛けることになったが、女性と出掛けるとき、どんな服装で行けばいいのかまったくわからなかったのである。
普段の中津は、どこに行くときもTシャツにチノパンスタイルである。別府と遊ぶときは大抵このスタイルだ。中津は元々あまりファッションに興味がなく、一人で過ごすことが多かったので、持っている服の数も種類も少ない。それはまるでミニマリストのようである。学生である中津は、ほとんどの時間を制服で過ごすので、何も問題ない…はずだった。
夢乃森さんと出掛けるのに制服でいいのか? 制服ならきっちりしているし、カッコイイから問題ないだろう。……いや、多分ダメだ。さすがにプライベートで制服を着ていたら引かれるかもしれない。じゃあ、どんな服ならいいんだ? 俺が持っているのは、Tシャツにチノパン。それでいいのか? ……多分ダメだ。夢乃森さんみたいな人の隣にそんなみずぼらしい格好で立つなんて失礼だ。訴えられると有罪になるかもしれない。じゃあどうすれば……。
ということで、スマホで検索してみるとたくさんヒットした。テーラードジャケットとスラックスのセットアップスタイル、パーカーにカーゴパンツを合わせたカジュアルスタイル、白シャツにジーンズを合わせたスタイルなど、いろんなコーディネートが見つかった。
セットアップってほとんど制服と同じじゃないか! これでいいのか!? パーカーにカーゴパンツも似合わない気がするし、白シャツジーンズも……。
そんな風に一人で悩んでいたが、このままでは埒が明かないので、こんなときは頼りになる友人に相談するのが一番だと考え、別府に相談することにした。
別府とは今まで何度か一緒に遊んだことがあるが、毎回違う服を着ていた。あるときはジャケットにスラックスのセットアップ、あるときは、パーカーにカーゴパンツスタイル、またあるときは、白シャツにジーンズスタイル、他にもいろんな服を着ていた。別府はイケメンなので基本どんな服を着ても似合ってしまうようだが、オシャレであることは間違いなかった。なので、相談するにはうってつけである。
別府とは三時間目の社会心理学で一緒になった。
「なあ、別府」
「んー?」
「別府っていつもオシャレだよな」
「んー、そうか?」
「いつもいろんな服着こなしてるだろ」
「着こなしているかわからないけど、まあ、嫌いじゃないな」
「そうだろ」
「なに、中津もファッションに目覚めたのか?」
「いや、目覚めたというか、ちょっとは気にした方がいいのかと思って」
「ふーん。まっ、いいんじゃね。で、それがどうかしたのか?」
「ああ。明日ちょっと出掛けるんだけど、せっかくならオシャレな服装で行こうかと思って。それでどんな服を着ればいいのかわからないから、別府に聞こうと」
「そっか。でも、どうして急にそう思ったんだ?」
「それは……なんとなく……」
「……まあ、中津がそう言うなら協力するか」
別府は何かを察した様子だったが、それ以上は追及してこなかった。そして、いくつかファッションの基本を教えてくれ、中津に似合うだろう服装を数パターン教えてくれた。中津も自分で調べた浅い知識を述べると、それに合わせて別府はこう言った。
「中津のイメージだと派手さよりは無難できれいめが似合うと思うんだよな。だから、ストリートやアメカジよりは、ジャケットにスラックスの方が似合うと思う。ただ、そこにシャツを合わせるとスーツっぽくなって固い印象になるから、合わせるならTシャツかな」
別府は見本となる服装をスマホで検索して見せてくれた。それは黒のジャケットとスラックスのセットアップに白Tシャツ、靴下は黒いハイソックス、靴は黒に白い線の入ったスニーカーだった。別府曰く、「これがきれい過ぎず、カジュアル過ぎないファッション」ということだった。そして最後に「まっ、あくまで俺個人の意見だからな。まだ気になるなら他の人にも聞いてみたらどうだ?」と言った。
中津はこの服装を気に入ったが、せっかくなので他の人にも聞いてみることにした。ただ、中津が聞ける人はそんなにいない。別府の他に連絡先を知っているのは、叶愛、安心院、姫島、津久見の四人である。一緒に出掛ける叶愛に聞くのは何か違うと思ったので除外すると三人になる。津久見に聞くと「そんなことあたしに聞かないで」という姿が簡単に想像できたので除外。姫島は今大注目されていて、迂闊に近づけないので除外。
ということで、安心院に相談することにした。講義が終わったタイミングで早速安心院に「ちょっと相談したいことがあるのですが、都合の良い時間はありますか?」というメッセージを送ると、すぐに「昼休みなら大丈夫」という返信が返ってきた。なので、昼休みに中津が生徒会室を訪れる約束をした。
生徒会室がある場所は、図書館横に建っている教員棟の最上階である。教員棟の最上階、一番奥には理事長室、その隣には校長室があり、その隣に生徒会室がある。つまり、教員棟最上階は、夢乃森学園のトップが揃っている場所ということだ。ちなみに保健室は教員棟の一階にある。
昼休みになったので、中津は生徒会室に向かった。
中津が教員棟の中に入ると、一階で安心院が待っていた。
「生徒会長! ひょっとして迎えに来てくれたのですか?」
「まっ、まあ、ちょっと体を動かそうと思ってね。午前中ずっと座っていたから、ちょうどよかったわ」
「そうだったんですか。ありがとうございます」
「じゃあ、行きましょうか」
安心院の案内で二人はエレベーターに乗り、安心院が最上階のボタンを押した。最上階に到着し、エレベーターのドアが開くと、安心院が開くボタンを押していたので、中津が先に降りて、続いて安心院が降りた。そこから生徒会室まで歩いていると、正面から男性二人と女性一人が並んで歩いて来た。男性の一人は三〇代くらいの四角い顔で髭面、もう一人は三〇代くらいの丸い顔に黒縁眼鏡を掛けていた。女性は三〇代くらいの見た目でウェーブかかった茶髪が特徴的だった。
中津たちが彼らとすれ違いそうになったとき、髭面の男が突然安心院に声を掛けた。
「あっ、お嬢さんもしかして、安心院さん、ですか?」
「え、あ、はい。そうです」
「やっぱりそうですか。いやぁ、お父様にはいつもお世話になっています」
「安心院さんって…あの安心院さんですか?」と茶髪女性が言った。
「そうだ。官僚である安心院さんの娘さんだ」と髭面が言った。
「そうでしたか。お会いできて光栄です」と黒縁眼鏡が言った。
「父とお知り合いの方でしたか。申し遅れました。私、夢乃森学園で生徒会長をしています、安心院希望と申します。いつも父がお世話になっています」
「いやいや、お世話になっているのは私の方ですよ」
それから三人はそれぞれ自己紹介をした。髭面の男の名前は小倉、鉄道会社に勤めているらしい。黒縁眼鏡の名前は若松、天文学者らしい。茶髪女性の名前は、星野、病院で看護師をしているらしい。三人は夢乃森学園のOB、OGで当時からの友達らしい。今日は久しぶりに休みが重なったので、お世話になった理事長に挨拶に来たらしい。今は挨拶を終えて帰っているところだった。
三人は安心院と軽い挨拶を交わしたあと帰っていった。
「ごめんなさい。待たせちゃったわね」
「いえ。大丈夫です」
中津と安心院は生徒会室に着いた。
生徒会室は入って正面奥に生徒会長の座る大きな机があり、手前に来客用の長方形のテーブルとソファーがある。部屋の端には大事な資料を挟んでいるファイルや学園の歴史を記した本などが収納されている本棚があり、反対側には食器棚や電気ケトル、お茶菓子などがある。
安心院の促しで中津は来客用のソファーに座った。安心院は電気ケトルに水を入れて湯を沸かし始め、食器棚からカップを二つ取り出し、お茶の準備をしていた。
「あっ、すみません、生徒会長。俺が…」
「中津くんは座ってて。お客さんなんだから」
「でも…」
「いつもしていることだから気にしないで。あ、中津くんは何が飲みたいかしら?」
安心院はコーヒー、紅茶、緑茶、ほうじ茶など様々な種類を提示した。中津はその中からコーヒーを選ぶと安心院も同じものを選んだ。
そして、安心院はコーヒーを二人分注ぎ、一つを中津の前、もう一つを自分の目の前に置いた。さらにクッキーの詰め合わせを持って来て机に置いた。
中津と安心院は一口飲んでからようやく本題に入った。
「ところで、中津くんが相談したいことって何かしら?」
「あっ、はい。そうでした」と言い中津は持っていたカップをそっとテーブルに置いた。「実は、服装について相談なんですが…」
「服装…?」
「はい。生徒会長が男性に着てほしい服ってどんな服ですか?」
「えっ、男性に着てほしい服!?」
「はい」
「どうしたの? 急に」
「参考にしたくて」
「さ、参考!?」
「はい」
安心院は顔を赤くして恥ずかしがっているようだったが、中津は真剣な目で真面目に聞いていた。
「……私は、その人に似合っているのなら、どんな服でもいいと思う…かしら」
「その人に、似合う服?」
「ええ」
「じゃあ、俺に似合う服ってどんな服ですか?」
「な、中津くんに似合う服!?」
「はい」
「……な、中津くんは、派手な服より、きれいな服の方が似合う…と思う」
「こんな感じですか?」
中津は別府に教えてもらった見本の服装をスマホに写し、安心院に見せた。
「あ、うん。こんな感じ」
「そうですか。ありがとうございます。参考になりました」
「そ、そう。役に立てたのならよかったわ」
「では、早速買いに行こうと思いますので失礼します」
「え…?」
安心院は呆気に取られた顔をしているようだったが、中津は一礼して生徒会室を出て行った。
教員棟から出ると、空は八割程雲で覆われていた。もうすぐ雨が降り出すかもしれないので、中津は急いで近くの大型ショッピングモールに向かい始めた。そこならいろんなアパレルブランドが集まっているので、似たような服が簡単に見つかるだろうと考えたからだ。
向かっている途中、少し先に国東が歩いている姿が見えた。
「国東さん!」
「んー、あー、キミかぁ」
中津が小走りで追いついてから声を掛けると、国東はゆっくり振り返った。手にはソフトクリームを持っており、食べながら歩いていた。
「今日はもう講義終わったんですか?」
「んー、うん」
「そういえば、国東さんって何を専攻しているんですか?」
「あたし? あたしは人文科学」
「人文科学ですか。面白そうですね」
「そうかな? そうでもないけど」
「そうですか。俺は少し興味あるんだけどなぁ。人類の文化を知るのは」
「そっ。ていうか、キミって心理学だったよね?」
「えっ、俺の専攻科目知ってるんですか!」
「ま、まぁね」
「一体どこから情報が…」
「そんなことより、キミはどこに行っているの? 寮とは反対方向だけど」
「俺は今から服を買いに行こうかと」
「そうなんだ。どこで買うの?」
「近くのショッピングモールで買うつもりです」
「ふーん。……ねぇ、あたしもついて行っていい?」
「えっ、なんで!?」
「うーん、なんとなく暇だから……」
「暇……」
「ダメ?」
「い、いえ、ダメじゃないです。大歓迎です」
「そっ。じゃあ、よろしく」
ということで、中津は国東と一緒にショッピングモールに行くことになった。
ショッピングモールに着いた二人は、すべてのアパレルショップを見て回り、見本に最も近い服を探した。黒のセットアップなので、いくつかの店に似たような服があり、三つの中で迷っていると、国東が意見を述べた。
国東によると、色、形はほとんど同じなので、あとは素材や着心地で選ぶといい、ということだったので、実際に三着試着してみて一番肌触りが良く着心地が良いと感じたものを買った。
次は靴屋に行った。そこにも黒に白いラインが入った靴がブランドごとにたくさんあり迷っていると、国東が「これはどうかな?」と言ってボンズのスニーカーを薦めてくれたので、それを買った。
その後もその他諸々を買い、値段はすべて合わせて三万円。中津にとっては痛い出費だったが、叶愛に恥をかかせるわけにはいかないので、致し方ない。それに一式揃えておけば、今後もしものことがあったときに同じ心配をしないで済むので、メリットの方が大きいと考えるようにした。
無事に買い物が終わった中津だったが、もし国東がいなかったらもっと時間が掛かっていただろう。国東がいろんな意見をくれたから、早く買い物を済ませることができたのだった。国東は特に何も言わず中津について来るだけで、自分の行きたいところは一切言わなかった。途中、中津が気遣って寄りたい場所がないか尋ねたが、「別に」の一言だけだったので、中津はそのまま自分の買い物を続けた。
しかし、自分の買い物が終わった中津は、国東に助けられたところもあるので、何かお返しがしたいという気持ちになっていた。
「国東さん。付き合ってくれたお礼をしたいんですけど、何か欲しいものとかないですか?」
「別に。そもそもあたしが勝手について来ただけだから、お礼なんていらないんだけど」
「そうかもしれないですけど、助かったのは事実なんで、何かお礼がしたいです」
「……じゃあ、お腹空いたから、あそこ行こ」
国東が指さした先はフードコートだった。
二人はフードコートに向かい、並んでいる店を見て回った。ここのフードコートには、たこ焼き屋、ネギ焼き屋、ラーメン屋、うどん屋、ハンバーガー屋、唐揚げ屋、オムライス屋、アイス屋、クレープ屋などがあった。
夕方の時間帯だし、国東さんはおそらくアイスかクレープを選ぶだろう。
中津はそう予想していたが、国東が選んだものは、まさかの唐揚げ屋だった。昼ご飯を食べていなかったからお腹が空いていたらしく、ガッツリ食べたい気分だったらしい。せっかくなので、中津も食べることにした。
唐揚げ屋のメニューは、しょうゆ唐揚げ、塩唐揚げ、味噌唐揚げ、柚子風味のしょうゆ唐揚げなどがあった。国東はしょうゆ唐揚げと塩唐揚げと味噌唐揚げを頼んでいたので、中津は柚子風味のしょうゆ唐揚げを注文した。
中津が二人分の会計を済ませ、店員から呼び出しベルを受け取った。二人は近くの空いている四人掛けの席に座り、少し待っているとブザーが鳴ったので取りに行った。
二人は向かい合って熱々の唐揚げを食べ始めた。食べている途中で国東が柚子風味も食べてみたいと言うので一個あげると、お返しにどれか一つ分けてくれるということになった。中津は塩唐揚げを貰った。食べ物を分け合ったり、感想を言い合ったりしている二人は、まるで付き合いたてのカップルのようだった。周りからはそう思われているかもしれない。
しかし、中津も国東もまったく気にしていなかった。中津はそもそも周りをあまり気にするタイプではないし、友達ならこれくらいするだろう、と考えていた。国東も中津と似たようなタイプかもしれない。
唐揚げを食べ終え、ゴミを捨てたあと、二人は寮に帰り始めた。空は相変わらず曇り空で地面が濡れていたので、中津たちが買い物中に雨が降ったようだった。今は止んでいるので二人にとってラッキーだった。
帰っている途中、国東が突然こんな質問をしてきた。
「ねぇ。キミは、人が好き?」
「人…ですか? うーん、そうですね。人によりますね」
「そうなんだ。キミのことだからてっきり好きって答えると思ったんだけど」
「そんなことないですよ。俺は聖人じゃないんで、好き嫌いはあります」
「どんな人が好きなの?」
「そうですね。やさしい人とか、誠実な人とか、謙虚な人とか、一般的に好かれる特徴が好きです」
「じゃあ、嫌いな人は?」
「嫌いな人は、人の悪口ばかり言う人とか、攻撃的・高圧的な人とか、ですね」
「そうなんだ。……じゃあ、失敗する人は嫌い?」
「失敗する人?」
「よくいるでしょ。失敗ばかりして迷惑かける人」
「失敗する人は嫌いじゃないです」
「…どうして?」
「人が失敗する生き物だからです。失敗しない人なんてこの世界のどこにもいません。もし失敗する人が嫌いだったら、みんな嫌いになってしまいます」
「失敗する生き物…」
「それに、人の成長に失敗は欠かせないので、たくさん失敗している人はむしろ好きです」
「失敗が…成長に…?」
「あっ、でも、何度も同じ失敗をしている人は例外です。ちゃんと失敗から学んで成長している人が好きです」
「失敗から学ぶ…」
「国東さんはどうなんですか? 人の好き嫌いはあるんですか?」
「あたし? あたしはないよ」
「へぇー、そうなんですか。みんな好きなんですね」
「ううん、違う。その逆」
「え?」
「あたしは、みんな嫌い」
「みんな…嫌い…?」
「そっ。あたしは人が嫌いなの」
「失敗するからですか?」
「それもあるけど、それだけじゃない」
「それだけじゃない?」
「……人は欲深くて愚かな生き物。それは歴史を見ればわかるでしょ。今まで多くの過ちを犯してきたという事実があるし、その過ちはこれからも続く。……だから」
国東はそこで言いかけた言葉を飲み込んだ。国東の言い方や表情から、冗談で言っていないことはすぐにわかった。誰が好きで誰が嫌いというレベルの話ではなく、すべての人に対して嫌悪感を抱いているようだった。国東がそこまで人に嫌悪感を抱いているのには何か理由があるのだろうが、それを聞いていいのかどうか、中津はわからなかった。
中津がなんて返事をすればいいのか迷っていると、国東が先に口を開いた。
「急にごめんね。変なこと言って。今言ったことは忘れて」
「えっ、あ、はい…」
そして国東は空を見上げてこう言った。
「ねぇ。明日は綺麗な星が見えるかな?」
そのときの国東は微笑んでいたが、その表情からは、どこか悲しくて切ない感情が滲み出ているような気がした。
「明日ですか? ちょっと待ってください」と中津は言ってスマホを取り出し、明日の天気を検索した。その結果、明日は晴れの予報だった。「明日は晴れみたいです」
「……フフ。アハハハハハ」
「えっ、どうしたんですか? 急に」
「いや、そういうつもりで言ったんじゃなかったから、ちょっとおかしくて」
国東は目に涙を浮かべる程笑っていた。今度の笑顔は本物のようだった。
夢乃森学園に着いたとき、国東は行くところがあるということだったので、二人はここで別れた。
中津は帰り着いてから早速買った服一式を袋から取り出し、ハンガーにかけて壁に飾った。中津はそれを見ながらニヤリとした。思って以上に気に入っていたのである。この服なら叶愛の隣に立ってもおかしくないだろうと思った。
それからシャワーを浴びて、歯磨きをした。晩ご飯は夕方に唐揚げを食べたので、お腹が空いていなかったから食べないことにした。そして寝るまでの時間は読書をして過ごしていた。
しばらく読書を続けていたが、一度区切りがいいところでふと時計を見ると、午後一一時三〇分になっていた。中津が明日に備えて寝ようとしたとき、机に置いていたスマホの通知音が鳴った。スマホを手に取り確認すると、夢人からメールが来ていた。
「明日は星に注意。夢人」
意味がわからなかったので、返信してみた。
「星に注意ってなんですか? 占いか何かですか?」
どうせ返信は来ないだろうと思っていた中津だったが、予想を裏切りすぐに返信が来たのだった。
「明日になればわかる。夢人」
初めて会話が成立したので、中津はチャンスと思って続けてメールを送った。
「あなたは何者ですか? 一体どこから僕を見ているんですか?」
その後、中津は一時間待ったが、夢人から返信は来なかったので寝ることにした。もしかしたら、寝落ちしているのかもしれないし、朝になれば返事が来ているかもしれない、という淡い期待を抱いていた。
しかし翌朝、夢人からの返信は来ていなかった。
読んでいただき、ありがとうございます。
次回もお楽しみに。
感想、お待ちしております。