始動
「サトルさんの友人がいるのはここなの?」
ポア、眞理、りえは目の前の建物を見上げた。
『中國武術八極大瀧連』
「兄さんの親友がここに養子として引き取られているのです」
ポアの視線が看板から建物隣の駐車場に移る。
左から順に、艶光りを放つ白い高級外車のベントレーセダン、三菱のエンブレムがついたラリー系のゴテゴテした白いスポーツカー、ボディが錆びた擦り傷だらけの深緑色したボルボ車、そしてあちこちがボッコボコに凹んだ銀色の古いメルセデス・ベンツが並んでいた。
ポアの視線を辿った眞理が苦笑いを浮かべる。
「何だか、この国の格差問題を濃縮したような駐車場だね。それにしても大瀧かぁ。大瀧……ん?」
何かを思い出したように呟いた後、彼女は入り口のインターホンに指を伸ばす。
暫くすると、前髪の寂しい初老の男性が中から戸を開けた。
男は眞理の顔をマジマジと見つめた後、黄ばんだ歯でにやりと微笑んだ。
「ようこそようこそ! カンフーに興味おありかな? 女性の方も興味持たれる事多くてですね……」
彼が片手をあげると、奥から道着姿の子供が一人駆け寄って来た。
「見学者用のお茶とお菓子を……」
その時、眞理の横からポアも入り口を覗き込んだ。
「俺の分も出してくれるの?」
ポアと目が合った男の顔から笑顔が消える。
「なんだ、男連れか……」
男は門下生の子どもを呼び止めた。
「あー、水道水でも出しといて」
「クソかよ!」
突っ込むポアを眞理がジェスチャーで嗜める。
「あの、大瀧タツさんって今こちらにいますか?」
その名前を眞理が口にすると男の表情が変わった。
「げげ、もしやあのアホがまた他所様に迷惑をかけたのか? 申し訳ない!」
「どんな奴だよ……」
条件反射のように謝る男を見てポアの顔が引き攣る。
その後、事情を説明した三人は道場内へ案内された。
丁度、畳を敷いた広い空間でツインテールの女の子が、長髪を一本に結んだ背の高い男に何度も蹴り込みを入れており、もう一人のやや小柄な男がその様子を険しい顔で見守っていた。
「明蘭、後30秒! 頑張れ!」
女の子は汗だくになりながらも、声を張り上げながら細い足を何度も高く振り回す。それを受け止める男は、蹴りが入るたびにシーシーと激しく呼吸をしていた。
やがて、スポーツ用タイマーのブザーが響く。
畳上の二人は互いに礼をした。
「……客か」
髪を結んだ男は、汗を拭いながら狼のような鋭い目をポア達三人に向けた。
長く、そしてがっしりとした足腰、浅黒い肌、服の隙間から覗く獣の刺青、日本人離れした彫りの深い顔立ち。その外見を見たポアが思わず口を開く。
「嘘……、ダリアさん? 何でここに」
「お知り合いですか?」
りえが尋ねる。
「まぁ、顔は知ってるくらい。よく行くクラブのセキュリティみたいな人だよ」
二人のヒソヒソ話を気に留めずに、ダリアは女の子に近寄った。
「かなり仕上がったな。明蘭」
向かいの女の子、明蘭は小さな顔をタオルで拭きながら微笑んだ。
「謝謝!」
もう一人の男も二人に近寄る。
「メイ、良かったな」
「タツ君の教えが良いからだよ」
無邪気な明蘭にダリアの顔が少し緩む。彼がサポーターを外して蹴りを受け続けた手足の裾を捲ると、鬱血で真っ青になった皮膚が露わになった。
「タツ、明蘭は体幹とバランス感覚が桁外れに良い。だから足技の力が正確に伝わってくる」
「幼い頃からバレエと体操を習っていたからか? 正直それだけじゃ無いだろ」
「ああ、よく分からないが……何か勘の良さと言うか、血筋的な物を感じる」
二人のやり取りを聞いた明蘭は、小鳥のように首を傾げた。
「とりあえずだ。仕方ない事だが、明蘭はフィジカル的には不利。だからタツの様に相手の間合いに飛び込んで畳みかけるやり方よりは、程々の距離から隙を突く戦法が今の所安全かも知れないな。以上」
ダリアが締めると、三人はポア達の方を向いた。
「ちーす、どうも」
いつもの調子でポアが会釈する。その横で、眞理はタツの顔をマジマジと見つめた。
「やっぱり」
「眞理ちゃん、知ってるの?」
「ポア君、少し前に港の倉庫内で起きた自動車の単独死亡事故とその一連のニュースを覚えてる?」
ポアは頭の中でのニュース映像と新聞記事を思い返した。
高額請求被害の挙がった繁華街の飲食店、アパレルブランド主催のイベントで起きた暴力事件、港での自動車単独事故による女性の死亡。
これらの事件が奇妙な所で繋がった事が話題となり、雑誌やワイドショーなどで散々取り上げられていた事は、彼の記憶にも新しい。
「眞理ちゃんの友達も巻き込まれたって言うあの妙な騒動だよね」
「そうだよ。大瀧タツ……、彼は沼谷刑事が取り調べていた渦中の男」
そんな話をしていると、タツは目を軽く釣り上がらせながら眞理に近づいてきた。
「その事件……エリカ騒動なら、あくまで俺らも被害者だって話なんだけどねぇ。まだ何か聞きたりねぇのか? フランスから帰った所をいきなり缶詰めにしやがって」
巻き舌混じりで捲し立てる口調からは刺々しい雰囲気が伝わる。
「タツさん、待ってください」
りえが二人の間に割って入る。その顔を見たタツは目を点にして固まった。
「えーと、アンタは?」
「りえです。法橋サトルの妹です」
「りえ……りえ? あー法橋の妹か!」
一気に和らいだタツの顔を見て、ポアと眞理は胸を撫で下ろした。
「タツ君、その人誰?」
明蘭も近寄って来る。
「ダチの妹さ。久しぶりだぜ、大きくなったなー!」
「ふーん……」
適当な相槌を打った後、明蘭はポアの方へ近寄った。
「ちーっす。俺、丸井ポア」
「ポア……? 可愛い名前ー! ポア君って呼ぶね!」
彼女はそう言い、ポアの手をぎゅっと握る。その後ろからダリアが寄ってきた。
「……探偵気取りが何のようだ」
「何だ? ダリア、そっちも知り合いか?」
横からタツが入る。
「ああ、大学通いの奇抜な探偵ポア。……丸井探偵事務所には一度だけ世話になった事がある」
その話にその場の全員が驚く。
「お前が? 何を依頼したんだよ」
タツが尋ねると、彼は顔色変えずに答えた。
「……ある女の子の住所を調べてもらった」
「ダリアさん、どうして?」
不思議そうに明蘭が聞く。
「フッ。その女の子の誕生日祝いに、サプライズで家に花束を届けようと思ってな」
「げ、おまっ……えぇー」
悪びれも無く話すダリアを、三人の女性陣は引き攣った顔で見ていた。その表情は皆青ざめ切っている。
「ダリア。お前さぁ、そういうのは女の子にやったら一番ダメな奴だぞバーカ」
「そうなのか?」
ダリアの顔色は変わらない。
側のポアも困惑した顔で話に入る。
「どう考えてもそれは女の子からしたら怖すぎるよ」
「ポア君、どうしてそんな依頼受けちゃったの?」
眉を吊り下がらせながら眞理が聞いた。
「その依頼受けたの俺じゃ無いよー。多分、大学の講義に出てる間に阿笠さんが受けたんだと思う」
そう答えた後、ポアと眞理は深いため息をついた。まるで魂が抜けるかのように。
「お前ってさ、本当そう言う事悪気なくやるよな」
「ダメだったのか……。どうりで連絡が取れなくなった訳だ」
「それは良いとして。りえちゃん、急にどうしたんだ?」
タツに聞かれ、りえは兄の件を話した。
「サトルが行方不明?」
タツが首を傾げる。
「……サトルって言うのは誰だ?」
「幼い頃からのダチだ。俺がいた施設の近所さんで、そこからたまーに会ったりはしていたけどよ」
携帯を取り出したタツは、連絡用のアプリを起動して履歴を辿り始めた。
道場の師範や、門下生達、明蘭の父親、他の友達にサプリメントやプロテインの広告。
「あった」
やっと彼の指が止まり、皆一斉に彼の携帯を覗き込んだ。
『86がやっと車検から帰ってきたよ〜』
『お、マジか。じゃあ今度久しぶりにエヴォⅣとツーリングでもしよう!』
『おっけ! じゃあ休みの予定わかったら連絡するね』
このやり取りがニヶ月半ほど前に行われたきりである。
「連絡はこれが最後だ。俺はこれ以外SNSとかはやってねぇし、最後に直接会ったとなったらさらに半年程前だ」
それを聞いた眞理はポアに目をやった。だが、彼の表情もパッとしない。
「それじゃあ、何か異変みたいなのもわからないですよね……」
りえの惜しそうな声を聞いた後、タツは額に指を置いて唸り出した。
「そう言えばアイツ、元々休みが週に二日もあったのに、気づいたら休みも時間も無さそうにしていたな」
それを聞くと、皆はより一層沈黙してしまった。
「……個人的にだが」
ダリアが口を開く。
「基本的に失踪の類には関わりたくない」
「えー、どーしてさ」
ポアがムスッと聞くと、ダリアは立ち上がって彼に近づき、そのまま壁まで追い込んでしまった。
「経験的にな」
ポアを見下ろしながら、拳を彼の頭の上ら辺の壁に置いてダリアは続ける。
「失踪事件って言うのは、何か表に出るとまずい情報が動いている時に起きる。そこに首を突っ込む事がどう言う事かわかるか?」
物言いたげな表情でダリアを見上げたまま、ポアは口を塞いでしまった。
「その辺にしときな」
背後から、タツの傷だらけの手がダリアの肩に置かれた。
「俺、割とお前の性格はわかるぜ。だから今のも不器用なお前なりの優しさなのもわかる」
男三人の表情は変わらない。そのままタツは続けた。
「死線の経験はお前だけじゃ無い。だから俺だって正直感じるさ、この何とも言えない気持ち悪さ。けどな、りえの気持ちはどうなる? 会えない家族に会いたいってのはそんな優しい物じゃねぇ」
タツの瞳が曇る。
「もう、三人ともイリイリしないでよ!」
明蘭がそう言いながらタツの袖を摘んだ。
「せっかく一緒にいるんだから、皆仲良くしようよ……。ダリアさんもイジワル言うの不行!」
「ま、まぁコイツも意地悪言ってる訳じゃないんだぜ。メイ……」
相変わらずの無表情で明蘭を見つめたダリアが壁の手を離す。そしてその手で、ポアの頭を軽く撫でた。明蘭の表情がまた明るくなる。
「ポアくん、改めて紹介するね。私、李=明蘭。メイって呼んで」
それから彼女はタツの袖を引っ張った。
「この人はタツくん。便利な人だから頼ってね」
「メイ? ちょっと酷くねぇか」
次にダリアが口を開いた。
「……古川ダリア」
初めて聞くダリアの名字にポアが目を開く。
「ふ、古川さん? フルダリ?」
「略すな」
「えへへ。俺は丸井ポアであちらは芝崎眞理ちゃ……」
皆が目をやると、そこには恍惚と頬を赤らめて立ち尽くす眞理の姿が。
まるで美という概念に対する人類の模範的反応なうっとり具合に男性陣が後ずさる。
「ガテン攻めに壁ドン……嗚呼、神様ありがとう、ありがとう」
隣でりえが心配そうに漏らす。
「本当に大丈夫かな」
そんな不安げな声をかき消すように明蘭は皆に声掛けた。
「さ、仲良しするよ! りえさんのお兄さん探しの続きを……」
ーーぐうぅぎゅるぎゅる
お昼時を告げる腹時計が鳴り響き、明蘭は沸騰したように赤くなった顔を手で覆いしゃがみ込んだ。
「とりあえず皆で飯でも食おうぜ? な、メイ」
そう言いながら背中に手をかけるタツに向けて、明蘭は肘を打ちつけた。
「ぐえっ、なんで?」
ダリアが座った目でそれを見つめながら、ポアの肩に手を置く。
「……何か食べたいものあるか? 丸ポ」
「肉ー! てか略すな!」
それを聞いたダリアは黙って調理場へ向かった。
しばらくして、彼は戻ってきた。
その両手には大きな皿があり、その上には荒々しく焼かれた肉塊が豪快に串に刺さっている。
「おもてなしは豪勢に、だろ?」
道場内に香ばしい香りが充満する。
本能的食欲を掻き立てる肉油の臭いに、スパイスとハーブの絶妙なランデブー。
その香りにそそられたポアが思わずはしゃぐ。
「すっげー! マジのシュラスコだ!」
そう言いながら彼は携帯電話のカメラを、折り畳みテーブルに並べられた肉料理へと向けた。
「凄いですね、こんな大きなお肉は久しぶりです!」
「ふふふ、メイのパパが贔屓にしているお肉屋さんの一等級だよ」
ポアと眞理の反応に明蘭も満足そう。
「ほら、りえも食えよ。サトルを探すのに力付けとかねぇと」
「ありがとうございます」
「ところでタツ君」
「何だ? メイ」
「どうして私のナイフとフォークが無いの?」
急いでタツが立ち上がる。彼の慌てようは少し大きな物音が代弁していた。
「ったくよぉもー、気を抜いたらすーぐコレなんだから」
彼はぶつくさこぼしながら台所へ向かって行った。
眞理がその様子を小さな包丁でお肉を切り分けながら眺めている。
やがてポアが訪ねた。
「メイちゃんとタツ兄の関係って何?」
「え? ……うーん、彼は私が雇ってる執事だよ」
ポアと眞理、それからりえが首を傾げる。
「執事? それにしては随分と治安の悪い執事さんだね」
呟くポアの後ろから、相変わらずの仏頂面でダリアが入ってきた。
「この前唇を重ねていたのは……」
その瞬間、明蘭の平手が彼の顔を打つ。
「请你别吵! 保持安静!」
彼女は手をバタバタさせながら叫んだ。
勿論その言葉はこの場の誰にも通じない。りえがキョトンと眞理と目を合わせた。
「今のは何て言ったのですか?」
「うーんと、わからないけれど多分『変なこと言わないで!』みたいなニュアンスじゃ無いかな……」
しばらくして、タツが食器をまとめて戻ってきた。
「とりあえず、サトルが行きそうな心当たりだけど、りえ的に何かあるか?」
フォークやナイフ、それから箸をテーブルに並べながら彼はりえに目を送る。
「それが、お互いに成人してからは兄のプライベートに関しては触れていなくって……」
それを聞きながら隣でポアが眞理の鞄から資料を並べた。
「6年間勤めていた自動車ディーラーは二ヶ月前に退職、住んでいるマンションの家賃も二ヶ月前から滞納……」
要点を呟きながらポアが頬杖をつく。
「二ヶ月前に何があったのかな? りえさん、金銭トラブルの痕跡は無かったんだよね?」
「兄の部屋に通帳がありましたが、特に目立つような支出の跡はありませんでした」
サトルの通帳がりえの手から眞理に渡る。
彼女は渡された通帳を一枚一枚捲りながら目を通した。
「たまに十万単位の出費はありますが、それでも建設的に貯蓄されていますね……」
それを聞いたタツが頷く。
「ミニマリストなアイツが、趣味の車以外に金を注ぎ込むのは考えられねぇな」
「車趣味かぁ……」
ポアの表情が変わる。
「車と言ったら、駐車場のラリーカーすっげーカッコいいね!」
「あ? 俺のエヴォⅣか」
そう言いながらタツはポケットからレザーのキーケースをジャラジャラと取り出し、ポアの手に渡した。
「乗ってみるか?」
「いやー俺、免許とか持ってないからさ」
彼ははにかんだ表情で頬をかき、鍵を返した。受け取ったタツが鍵をしまう。
やがて、すっきりした表情の明蘭が二人の間にちょこんと座った。
「何の話?」
彼女がポアの方へ振り向く。
揺れた淡い栗色のツインテールから、白百合の花園を思わせるような水々しく甘い香りが漂う。
クリっとしつつもしっかりと端の切れた目の、透明感ある大きな瞳の中に頬を染めたポアが映る。
「え、えーっと、タツ兄の車の話だよ」
その様子を見て眞理が目を丸くした。
「ポア君が女の子相手にどもるなんて……」
「普段の彼はどうなのですか?」
尋ねるりえに眞理が固まる。
「あー……、りえさんは知らないほうが良いです」
「そ、そうですか……」
そんな二人を差し置き、明蘭は明るい声で続けた。
「タツ君の車すっごいんだよ! ブーンって鳴ってキキーって鳴って後ろがバンバンって!」
「ははっ、それは車もすごいけど運転が……あっ」
ポアは手で口をふさいだ。眞理が白い目をタツに向けていることに気づき。
とは言ったものの彼女の仕事柄仕方のないことだ。
そんな彼女にポアは手を振り話した。
「てかさ、それで思ったんだけど、俺の大学の自動車サークルにいる奴らとかが夜な夜な集まってる山があるんだけどさ」
「あー、判沢大学白間キャンパスの辺りか。確かにあの辺ワラワラしてるよな」
反応したタツにポアがウインクを送る。それを見たタツも表情をにやりとさせた。
「なるほどな。確かにサトルの事を何か聞き出せるかもしれねぇ」
「さっすがポア君だね! 男の子にもこんな賢い人いたんだね」
明蘭の一言を聞いたタツはよろけた。
「早速今夜行ってみよう」
意気込むポア。すると、彼の頭の上に浅黒い手がポンと置かれた。
「なら、俺が車を出そう」
ポアが振り返り、見上げるとダリアが立っていた。
彼の手から食器洗剤の香りがする。机を見ると、空いた皿や食器がいつの間にか片付けられていた。
だが、そんな彼をタツは半笑いで指さす。
「だーれがお前のヤニ臭ぇ糞ボルボに乗るかよ! ここは話の流れ的に俺のエヴォだろ!」
「しゅん」
「可愛くねぇんだよ、真顔で効果音言うな!」
「まぁまぁ」
騒ぐタツの肩を眞理が叩いた。
「今ここにいるのは六人。タツさんのお車には乗りきらないでしょう?」
「うっ、そうだな」
苦い顔をするタツの横でりえが手を挙げた。
「私、ダリアさんの車に乗りますよ。兄さんも喫煙者だったから慣れていますし」
「りえちゃんやっさしー!」
ポアが親指を立てた。隣の明蘭が口を開く。
「じゃあ夜に出発だね! 私もお着換えしなくっちゃ。お山の夜景、また見たいなぁ」
彼女は元気よく立ち上がり、ポアの目を見つめた。
「改めてよろしくね、ポア君!」
手を差し出す明蘭。
「オッケー!」
その手を握るポア。
「皆さん、ありがとうございます」
頭を下げるりえ。
「任せときな」
意気込むタツ。
「……探偵ごっこのお手並み拝見、だな」
髪を結び直しながら呟くダリア。
「誰を受けにしようかな」
……眞理だけ別世界にいた。