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蒼白の天狼  作者: ベルトに乗った肉
道化暴乱編
34/34

33 予兆と対抗策

 “不可侵入区域”の調査をしていた一行を襲ったのは、異形個体である“刃爪”。不意打ちとなったカムイを庇うようにアダムが攻撃を受けてしまう。

 そうして突如現れた“刃爪”を相手にしていたところに、まさかの“アイツ”が現れる!?

「アダム!!!!!」

「ッーーーー!!」

 異形個体魔族、コードネーム“刃爪(ブレード)”の急襲。

 不意を突かれたカムイを庇うように出たアダムは、その胸元を切り裂かれ、鮮血が舞った。

 激痛に表情が歪むアダム。

「ネオ、回復」

 言いながら、シリウスが前に出た。

『“虚弾(きょだん)砲撃銃(カノン)”』

 攻撃による力の“発散”を“収縮”へと反転させる一撃。

 が――

「――クソッ!」

 隙を突かれた急襲、アダムの負傷。それによる焦燥が、シリウスの魔力操作を鈍らせた。渾身の一撃は不発に終わってしまう。

 その後隙を突くように、大振りで爪の刃が迫る。

『【氷纏装身(ヒョウテンソウシン)】』

「うおっ!!」

 間一髪、攻撃を氷籠手で防ぐも、強靭な爪はシリウスの氷をもってしても爪痕を残し、あと数ミリで肌に到達するところであった。

 一時の油断も許されぬ攻防。攻撃を試みるも、その全てが決定打に欠ける。魔族故に思考も読みにくい。

(ここだ……!)

 そんな中で僅かな綻びを見出したシリウス。

 今度はその純粋なままの魔力を発散した。

『“破弾(はだん)砲撃銃(カノン)”』

 同時に“刃爪”が拳を受け止めようと手のひらを出す。そこに“防御貫通(ガードブレイク)”の魔法陣が展開。

 強力な一撃は、“刃爪”の腕を、肘から爆ぜるようにぶっ飛ばした。

「…………!」

 何かに気づいたシリウス。

 そこに、アダムの応急処置を済ませたネオがシリウスの横に並ぶ。

「見た目以上の密度と強度は無いね」

「硬いのは手だけ。ネオ、お前は、脆い肩から手首を狙って斬ってくれ」

「了」

 ネオはそれだけ言うと、全身に雷を纏い、突進する。同時に、髪は白く染まり、瞳は金と黒

へと変色していた。

 流石は腐っても元種族王。瞬きのうちに“刃爪”の両腕を肩から一刀両断した。

 ネオが攻撃している隙に、シリウスは【狼眼】を発動し、核を探す。

(――そこか……!)

 全身に冷気を纏い、狙うは眉間、頭の中心部。羽交い絞めのように、ヘッドロックを()めるシリウス。

 そこに、腕を再生させた“刃爪”の爪が迫る。

 それに気づいたネオ。

「――シリウス!! (速い! 片腕だけを重点的に治したのか!?)」

 ネオが叫ぶと同時に、横から迫る攻撃に気付いたシリウス。

「んぁッ!!」

 全力で、極めていた腕で頭部を捻り千切るシリウス。

 間一髪急所を避けるも、背中を切り裂かれる。

「があっ!!」

 幸いすぐに治せる程度には傷は浅い。しかし、それと痛覚は別だ。

 生まれて初めての肌が抉れるほどの大怪我。幾多の傷も場数も経験してきた歴戦の戦士ならまだしも、まだまだ敏感なシリウスの痛覚は悲鳴をあげた。

「不味い……!」

 頭を()がれた“刃爪”の身体は力なく倒れる。その隙に、ネオはシリウスを回復するために駆け寄った。

『“投影(トレース)”:“即時回復(ファストエイド)”』

「あ、あ、あぁ………!」

「頑張れ、シリウス!」

(良かった、傷が浅い。直ぐに治せる……!)

 精霊術によってシリウスの傷は完治。

 ようやく一息つけるかと思われた矢先、カムイが叫んだ。

「まだ動いてるぞ!!」

 “刃爪”の身体は、片腕で、這いずりながら頭を取り返そうとしていた。

「油断も隙もないな!」

 戦慄に声を震わせながら言うネオ。すかさず“刃爪”の手の甲に二俣鉾を突き刺した。

「今だ、シリウス!!」

 ネオが叫ぶ。

 ほぼ同時に動き出したシリウス。“刃爪”の頭部、その中にある核を潰すために拳を握った。

 今度は確実に、決める。

 ――行ける!

『“虚弾――”』


「…………え?」


 ――なぜ絶対に会うことはないと思っていたのか。なぜ迂回することが最適解だと思ったのか。冷静に対処していたはずが、短絡的な考えになってしまっていた。

 知っていたはずだ。魔族は音に敏感だと。

 それは階級が高くなればなるほど鋭い聴覚を持つようになる。これだけ騒げば来ないわけがないと思うこともできたはずだ。

 互いを信頼しているが故の、油断。

 彼らは、“迂回”ではなく“後退”するべきであったのだ。そして駆け足になることなく、『レベル1』をくまなく調査するべきだった。

 思わぬ誤算とはまさにこのこと。

 シリウスは目の前に突如現れたそれを見て凍りついた。

 細長い手足、華奢な体躯、ナイトキャップのような角、その先端にぶら下がる剥き出しの核。

 それは、しゃがみながら、シリウスを見つめていた。

「なっ――」


 “夢現(ナルコレプシー)”――!!!!!!


「くっ!」

 ネオはすかさず腕で目元を隠して顔を逸らす。

 一方のシリウスは、“夢現”を視認して1秒も経たなかったとき、

「っ…………」

 膝から崩れ落ちた。

 シリウスが倒れる瞬間を、目を閉じる直前に見たネオ。その口元は、不安と後悔で歯を強く食いしばっている。

(まさか、まさかだ!! このタイミングで出てくるなんて! シリウスは!? どうなった? 無事なのか!!?)

 “夢現”は倒れたシリウスをツンと突く。

 何も反応がないシリウス。

 それを見た“夢現”は、大きく口を開いた。シリウスを捕食する気だ。

 無慈悲のそれは、瞬きのうちにシリウスを丸呑みに――しなかった。

 そこには何も居なかった。

 辺りを見回す“夢現”。

 左手の方に、彼はいた。アダムだ。シリウスが丸呑みにされようという寸前でシリウスを抱き抱えるように割って入ったのだ

 そして、その目を開き、“夢現”を見る。

 瞳は金色に輝いていた。

 アダムの目を見た“夢現”。瞬間、けたたましく金切り音を響かせた。俗に警告音と呼ばれるそれは、核から鳴っているものだ。

 しかし、アダムは怯むことなく“夢現”の目を見つめる。

 金色の瞳がより輝く。瞳孔はきゅんと細くなる。

『失せよ』

 エデンの術を彷彿とさせるそれ。

 アダムが言葉を発した瞬間、辺りに強く風が吹き、“夢現”の警告音をものともせず、キーンという耳鳴りのような音を最後に静まり返った。

 “夢現”はガタガタと震えながら、わずかに後退したのち、瞬きのうちに消えてしまった。

「…………」

 辺りを見回すアダム。

 ネオの方を見る。“刃爪”の身体は黒い塵となって消えていた。頭部もどこかへと行っていた。どうやら、頭から何かしらの逃走能力を持つ器官を生やして逃げたのだろう。折角の討伐のチャンスを逃してしまった。

 改めて何もないことを確認すると、ネオらに声をかける。

「もう大丈夫。目を開けても良いですよ」

 その言葉に目を開けるネオとカムイ。シリウスは未だにアダムの腕の中で目を閉じている。

 アダムは静かにシリウスを横にして、口元に耳を傾ける。

「スー、スー……」

「――良かった。眠っているだけのようです」

「『良かった』って……まぁ命に別状はないだけマシだけどさぁ」

「先ほどの交戦で“夢現”については大体把握できました」

「今ので?」

「はい、先ずシリウスの容体を見たところ、“夢現”と目を合わせると、問答無用で眠ってしまうようです」

「……うん……………うん?」

 何か引っ掛かるのか、カムイが首を傾げる。

 アダムは続けた。

「それと、奴が動いている瞬間は誰も見ることができません。必ず誰も見ていない時、瞬きをした時でなければ動くことはありません」

 どうやら、こればかりはアダムでも視認出来なかったようだ。

「すまない、アダム」

 ネオは言う。

「完全に油断していた。“夢現”に遅れをとった上に、“刃爪”も逃してしまった」

「いいえ、私にも非があります。実際、人狼王殿が戦闘不能な現状、調査を続行することができません。我々は、彼女に頼りすぎていた――」

「………」

 ネオは何も言うことなくアダムの言葉を受け止め、横でシリウスを心配そうに見るカムイを見た。

 その視線に気がついたカムイはネオに言った。

「悪い。肝心な時に、何もできなかった」

「――気に病むことはない。不用意に特攻して眠られでもしたら、一体誰がみんなをおぶって帰るんだい? そう考えれば、君が動かなかったのはいい策だった」

「……悪い。…………ほんとうに、悪かった」

 カムイの言葉を最後に、しばらく沈黙が流れた。

 数十秒の沈黙。とても長いように感じられたそれを破ったのはアダムだ。

 アダムはシリウスを背負って立ち上がると、ネオらに告げる。

「さぁ、辛気臭いのは苦手なので……! まだ死んだわけではありません。今はとにかく、すぐに帰還し、人狼王殿が目覚めるのを待つとしましょう! ホラ、立ってください! 置いて行っちゃいますよ?」

「ははっ、それは勘弁願いたいね」

「…………そう、だな」

「急ぎましょう、再び奴らが、あるいは別の異形個体が現れる前に」

 そうして一行は、今もなお眠り続けているシリウスを背負って、帝国へと撤退するのであった。


◇◇◇


 無事王城へと帰還したアダムとネオとカムイ。

 アダムの背中で寝息を立てているシリウスを見て、真っ先に駆け寄ったのはイヴだった。

「無事なのですか!?」

 アダムに非常な剣幕で問いかけるイヴ。

 宥めるような優しい声音で、アダムは答えた。

「問題ありません。眠っているだけです。3日もあればお目覚めになりますよ」

「――3日? 3日も眠ることが正常と!?」

「相手は魔族です。しかも、異形の個体です。未知数なのです。もしかするとこのまま目覚めることなく昏睡状態の可能性も考えられます。故に、長い目で見ることは何らおかしなことではないのですよ……!」

 その夜、城内は騒然としていた。

 無理もないだろう。“不可侵入区域”の調査に行っていた者が、意識不明の状態で帰ってきたのだ。しかも、種族王の一角ともあろう者が。

 アダムは速やかにシリウスを客室の寝台に寝かせ、状況をエデンに報告することにした。


「3日…………」

 エデンはいつもの荘厳な姿はなく、どこかげんなりとした様子で、アダムの言葉を反芻(はんすう)するように呟く。

「――あい分かった。シリウスが目覚めるまで養護は怠るなよ」

「承知いたしました」

 謁見の間を後にしたアダムは、真っ先にシリウスの客室へ向かった。

 ドアの前に立ち、ノックを3回。返事はないだろうという思惑とは裏腹に、聞き覚えのある、男性の「はい」という返事がした。

「失礼いたします、人狼王殿の様子を、と」

 扉を開けると、そこにいたのはベッドで眠るシリウスと、それを看ていたネオが隣に椅子を並べ、座っていた。シリウスを挟んで反対側には、プロキオンとカリスト姉妹もいた。どうやらカムイは街に出かけているようだ。

「やぁ、アダム。皇帝への報告は済んだのかい?」

「えぇ、ちょうど先ほどに。ところで、人狼王殿は……?」

 シリウスの顔を覗き込むように見るアダム。

「見ての通り、ぐっすりと眠っているよ」

「そうですか……」

 落胆した様子のアダム。

 しかしそれは杞憂だとして、ネオは言った。

「僕の見立てでは、明日には目覚めると思う」

「――なんと! また随分と早いではありませんか?」

 驚いた。確かに精霊術を扱うネオなら、シリウスの睡眠の深さを知る手段はあるのだろうが、それにしても早すぎる。

「まぁ、シリウスのことだ、何でもない顔して起きるさ」

「……だと良いのですが」

「――どうしてシリウスの服が破けていたの?」

 突然プロキオンがネオとアダムに訊いた。その声色は僅かに怒りのような色が見て取れた。

 部屋の壁に掛けてある、シリウスが愛着している上着の背中部分。3本ほど、大きな爪痕のように破けていたのだ。

「実は――」

 ネオがアダムに目配せすると、あっと声を上げて、アダムは懐から書物を取り出した。

「我々が調査に出ている“不可侵入区域”で、過去に確認されている魔族の異形個体なのですが、この、“刃爪”と呼ばれる魔族の襲撃に遭ったのです」

「ぶ、無事だったの?!」

 捲し立てるようにプロキオンが言うと、ネオは心配ない、と答えた。

「何とかね。 ――それで、あの服は“刃爪”というヤツの仕業なんだけど、今シリウスがこうして眠ってしまったのは、別の異形個体である“夢現”と目を合わせてしまったからなんだ」

「め、目を合わせるだけで眠っちゃうの!?」

「あぁ、アダムが持っているこの本でも情報は極端に少ない。今回は僕たちみたいに生存者がいたおかげでいくつか分かったことがあるんだ。そのうちの一つが、今のシリウスだよ」

「……ボクたちに、何かできることはないかな?」

 俯きながら、プロキオンは呟くように言った。

 ネオとアダムは難しい表情をする。

「そうは言っても……今の君には術式が――」

 言いかけて、ネオは固まった。

 自分で言いながら、何かに引っかかったのだろう。ネオの脳内で、何度も自分の言葉が反芻される。

『――術式が使えない』

 ――それだ。

 目を見開き、何か閃いたかのようにアダムの方を見た。

「そうだ、アダム。彼らには術式がない……!」

「そ、そうですが、それが何か?」

「分からないのかい!? “夢現”だよ! プロキオンやカリストなら核に触れることができるかもしれない!」

「……!! なるほど!」

「な、なに? どういうこと!?」

 プロキオンが戸惑っていると、ネオはすかさず説明する。

「“夢現”は、核が剥き出しになっているんだ。だけど、それは術式で破壊することはできない。単体で突っ込んでも、目を合わせれば眠らされる。もしかしたら別の攻撃手段もあるかもしれない。そんな中で、術式を完全にオフにした状態で接近できると思うかい? 答えは否だ。だが、君やカリストはどうだ? 術式がない。使いたくても使えない。奴が感知しているのは魂に付随した術式だ。それがない君たちならば、気取られることなく接近できる……!」

「――なるほど……魂とそれに付随する術式の知覚……。それが第3の目たる剥き出しの核の力!」

「あくまで僕の見解だけどね。はっきりと確証は無いが、“夢現”が僕らの前に現れた時、あの場で最も強い魔力を放出していたのは、シリウスだった。つまり、“夢現”は聴覚ではなく、魔力を『知覚』で感じ取ることができると思う」

「確かに。それならば核が剥き出しになっていることも説明ができますね……!」

 ネオは立ち上がる。

「よし、そうと決まれば、プロキオン、カリスト、君たちも“不可侵入区域”の調査に備えて特訓だ!」

「――え、えぇ!?」

「うん、わかった!」

「カリスト、悪いけど、君には少し寂しい思いをさせるかもしれない」

 ネオは、小さな姉妹の片割れに向けてそう声をかけた。

「ううん、だいじょうぶ。カリストはつよいから」

「そう言ってもらえると、心が楽になるよ」

「え、ちょ、ちょっと待っ――」

「さぁ行こう! 1秒でも早く、鍛えなければ! いざ中庭へ!」

「ネオ殿、王城の中庭は修練用に設計されてはいないので、平原の方でお願いできませんか?」

「そうか! では平原に行こうか! 南の区域なら手頃な魔獣もいることだろう! さぁ、プロキオン、置いて行っちゃうぞ!?」

「――わ、分かったよぉ……」


………

……


『……………ろ』


『お………………ろ』


『聞こ………? …………きろ』


『おーい………棒? 目を……せ』


『起きろ、相棒』


『おい、起きろ!!!!』


「っ…………?!」

 見知った天井。見知った匂い。外から聞こえる見知った音。

 彼女は目を覚ました。


―翌日、同時刻―


「――うー…………」

「ッ!? シリウス?」

 ベッドに横たわっていた少女が、突如呻き声を上げ、重い目蓋を開こうとしていた。

 横で座って足を組み、読書をしていたネオは、その光景に驚いていた。

 目の前の少女――シリウス・ブラウは、目を擦りながらゆっくりと身を起こし、ついに覚醒したのだ。

「んー? ネオ?」

「あ、あぁ、僕だよ、ネオ・ファルシュだ。自分の名前が分かるかい?」

「うん、シリウスだ。 ――寝てたのか、オレ?」

「そ、そうだよ、丸1日ね」

「なげーな…………」

 ゆっくりと体を動かし、ベッドから降りる。

 思わずネオが歩み寄るが、シリウスはそれを拒否した。

「大丈夫かい!?」

「気にすんなよ、ただの寝起きだろ?」

「で、でも――」

「――だいぶ鈍ったな……。ちょっと動いてくる」

「あ、うん、気をつけて……」

 部屋を後にしたシリウスは、そのまま城の中庭へと向かった。日課である瞑想をするために訪れている場所だ。

 いつもは誰もおらずひとりぼっちなのだが、今回は先客がいたようだ。

 シリウスより少し背が高く、灰蒼色の頭髪は寝グセで人狼族の耳のように跳ねていた。

 もう1人は、純白の頭髪と瞳を持つ片角片翼の獣竜族の幼体(こども)

 プロキオンとカリスト(妹)が、実戦を想定した戦闘訓練をしていた。

 シリウスはまず、プロキオンの動きに目を奪われた。

 以前とは見違えた動きを見せていた。おそらく、純粋な身体能力勝負ならシリウスに並ぶだろう。

 もう一つ、気づいたことがあった。

 それはプロキオンの魔力の使い方だ。

 上手い。シリウスは素直にそんな感想を抱いた。無駄がなく、全身を滞りなく流れる魔力。下手すればシリウスよりも綺麗かもしれない。おそらく南陸国で別れて以降、何かしらの特訓を積んだのだろう。

「プロキオン、つよくなってる」

「えへへっ、ありがと!」

 そんな会話が聞こえてきた。

 カリスト(妹)は相変わらずだ。【道化】によって術式を奪われたものの、妹はもとより固有術式を使わずに生活してきた。姉の、影に潜伏する能力を用いたサポートがなく、若干不自由を感じながらも、以前と変わらぬ身体能力を見せた。

「どうやってとっくんしたの?」

 妹がそう問いかける。

「実は、“白――”」

 言いかけて、プロキオンは背後に気配を感じ、振り向いた。

 プロキオンが壁になって見えなかったのか、妹が横に乗り出すように同じ方を見る。

「あ――」

「よっ、おはよう」

 何でもない顔で、シリウスは朝の挨拶をする。それを見て、みるみるプロキオンの表情が明るくなった。

「シリウス!!」

 プロキオンが叫んだと同時に、彼の横をカリストが駆け抜けていった。

 シリウスに抱きつき、顔を下腹部に埋める。

「悪い、心配かけたな」

 シリウスは、カリストの頭を優しく撫でた。

 シリウス言葉に、カリストは見上げるように彼女の顔を見る。

「よかった。シリウス、おきた!」

「あぁ、元気ピンピンだよ」

 そんなシリウスのもとに、遅れてプロキオンが歩み寄ってくる。

「――早かったね。ネオの見立て通りだ」

「……そうなのか?」

 プロキオンの言ったことに驚きを隠せない様子。

「うん、本当なら3日は起きないかもって話だったんだよ?」

「み、3日ぁ!?」

 あまりにも長い想定日数に、シリウスはイヴと似たような反応を示した。

「それで――体は大丈夫?」

 プロキオンに訊かれ、シリウスは肩を回しながら答える。

「――うーん、丸1日寝てたみたいだからなぁ、ちょっと鈍ってるかも」

「い、1日で?」

「シリウス、すといっく」

「いいんだよ。オレがやりたいんだ」

 言うと、シリウスはいつものように仰向けに倒れた。日課である瞑想だ。決して二度寝ではない。

 その様子を見て、プロキオンはカリストに言う。

「場所を変えようか。多分、2時間くらいはあのままだから」

「うん」

 そうして、プロキオンとカリストは中庭にシリウスを1人置いて、城内へと戻っていった。

 そんな2人を他所に、シリウスの意識は深いところへと沈んでいく………。


………

……


「…………あっ」


『げっ!マジか!?』


「よ、よぉ。久しぶり」


『お前もかよ!?』


「――なにが?」


『……いや、何でもない。それで、どうやってここに来た?』


「どうやって、って……。いつも通り瞑想してたら、ここにいた。お前の仕業じゃないのか?」


『ンな訳ねーだろ。今のお前には用事もないのに』


「――そういや、さ」


『無視かよ!』


「オレを起こしてくれたのって、お前か?」


『っ……! 意識があったのか?』


「いいや、“記憶”はあったけど――」


『……本来、お前とこうやって話せるのは、オレからの一方的な呼び出しだけなんだが、何でか、お前の方からここに来たんだよ。こればっかりはオレにも分からねぇ。何か心当たりはあるか?』


「…………心当たり。うーん、言われてみれば、今日はいつもより随分速く“核心”を見れたからなぁ」


『いつもの瞑想ってやつか』


「そう! いつもなら1時間はかかってたんだけど、今日はなぜだか、20分くらいですぐ見れたんだ」


『……なんだよ、それ?』


「意識を完全に落とす感覚っていうの? 体が覚えてたんだよ」


『意識を………ね。――ははーん、そりゃお前、アレだな』


「――あぁ、そういえばあったな、心当たり」



 “夢現(ナルコレプシー)”………!!



「多分、普段の眠りじゃ浅くて掴めなかったけど、アイツのお陰で何となく掴めたよ」


『完全に意識が落ちた上で思考ができる状態。その瞬間なら、お前の方からオレにこうやって会いに来れるわけだ』


「――多分な」


『……? どうした?』


「…………いや、何だろうな、あまり長居はよくない気がしてきた」


『――あぁ…………そうだな、やめといた方がいい。消えかかってるぜ、お前』


「うわぁっ! ど、どうしよう!?」


『慌てるな。この前の、覚えてるか? オレと初めて会った時のアレだ』


「……覚えてるよ」


『よし! 良いか? 振り返るなよ』


「うん」


『しっかり前見ろ』


「分かってる」


『オレに、合わせろよ』


………

……


「…………っ!?」

 突如、シリウスは意識を取り戻した。

 また寝ていたのか……?

 否、違う。ちゃんと覚えている。

「また、会えたな――」

 まさに、夢のような時間だった。太陽を見ると、ちょうど2時間ほど経っていた。

 ゆっくりと身を起こして辺りを見渡す。

 そして、その景色にシリウスは絶句した。

「は!!!?」

 眼前に広がるのは、一面氷と化したエデン帝国の王城の中庭。

 中庭だけでも二階建て住居が10軒は建つであろう広大なそこは凍りつき、取り囲むようになっている王城の壁を僅かに侵食するように氷が広がっていた。

「なんだ、これ……!?」

「――それはこっちの台詞だよ、シリウス」

「へ!?」

 突然横で声がした。その方を見ると、立っていたのは元精霊王のネオだ。よく見ると、その後ろには、皇帝の使用人やら10数名がシリウスをまるで魔族を見るかのような目で見ていた。

「説明願えるかな、シリウス……!?」

 どうやらご立腹の様子。

「え、えと……これは! その、オレも初めてのことで、ありまして……!」

 初めて。それを聞いたネオは、周囲を見渡しながら納得していた。

(初めて、か。確かに、シリウスがこれほどの惨事を起こしたことは今までにない。そして、これが初めてであること、故意ではないものの自らが原因だとしっかり把握しているところを見ると……うん、白いな)

 ネオはシリウスに耳打ちするように言う。

「シリウス。僕は君を信じるよ。悪気があった訳じゃないんだろう? 瞑想ってやつだっけ。いつも終わり頃には、ここまでではないにしろ、君の“色”が溢れ出たことは何回かあった。だけど、よく考えて欲しい。君はつい昨日まで、“夢現”によって眠らされていたんだ。そして今日、予定よりも随分早く目覚めて、中庭に行ったと思えば、これだ――」

 後ろを見るネオ。その視線の先には王城の使用人らがいる。

「あの人たちが、シリウスをどんな目で見ているか、君にも想像は容易いだろう?」

「っ……!」

 シリウスの脳内に幾つかの言葉が出てきた。魔族、異形個体、意識を失ったこと。

 ――裏切り者。帝国を陥れようとする悪人。もはや禁忌と呼んで差し支えない。

 慌てて地面に手をつき、周囲の氷を消し去る。

 そして使用人らの方を向き、深々と頭を下げた。

「ごめんなさい! 悪意は全くなくて、気がついたらこんなことに……。でも信じてくれ、オレは魔族に乗っ取られたりなんかしていないんだ!」

 謝罪を述べている横で、ネオは黙りだ。彼の経歴を皆が知っているからこそ、下手な口出しや弁明は逆効果だ。

「私は信じますよ。貴女の強さを実際にこの目で見たのです。無作法に見えますが、その逆、よく制御できている。並の魔導士には到底できないことです」

 そう言ったのはアダムだ。使用人を掻き分け、前に出る。

 さすが、やはり彼は分かってくれた。シリウスは表情を明るませ、現れた救世主を見た。

 城内No.2の彼が言うのだ。きっとみんなも分かってくれる。シリウスはそう確信した。

 なんて心の広い人だろう。

「私は信じます。信じています、信じたいですが…………一応、会議室の方へ、ご同行願えますか?」

 優しく微笑みながら言うアダムだが、シリウスには分かっていた。

 目が笑ってない。

「――ご、ごめんなさぁい…………」


◇◇◇


 2度目となる広い会議室。

 エデンは特段怒っている様子はなく、むしろどこか嬉しそうでもあった。

「そう固くなるな。余と貴様の仲ではないか」

「いやぁ、一国の皇帝様からそう言われると余計に緊張するというか……」

「――先ずは、想定よりかなり早い目覚め、流石は“ブラウ”だ。賞賛に値する」

「ただ起きただけなんだけど……」

「神からの賛辞であるぞ? そこは素直に受け取るが良い」

「じ、じゃあ、ありがとう」

 そんな他愛もない会話から、中庭の件、そして今後の“不可侵入区域”調査についての会議が始まった。

 中庭の件はシリウスの思惑に反してあっさりと終わった。

 ざっくりとした内容としては、なぜあのようなことが起こったのか、というエデンの質問に対し、シリウスが正直に答えたところをすぐに納得してくれたのが一部始終だ。

 一方で説明いいわけをしていく中で、シリウスは夢の中で会った少年の話は、しない方がいいという考えに至り、1日ぶりの目覚めで魔力制御が上手くいかなかっただのと、それっぽい理屈を並べて押し切ったのもまた事実。

 シリウス個人の見解としては、夢の中の少年との接触がシリウスの魂、あるいはそれに付随する固有術式に何かしらの影響を与えていると考えている。しかし、それは悪いことではなく、むしろ良いことで、さらなる高みへ行くために必要な過程であるとも思っていた。

 もし次に会うようなことがあった時のために、瞑想は場所を選ばなければなるまい。そう考えるシリウスであった。

 そして会議は次の議題へと移る。

 シリウスが目覚め、再び“不可侵入区域”の調査が可能となった。さらに“夢現(ナルコレプシー)”の対抗策として、新たにプロキオンとカリスト(妹)をメンバーに入れようという話が持ち上がった。

 もちろん、シリウスは初耳であり、懸念の声を上げた。

「――それに関しては大丈夫。正直、君が今朝目覚めたのは、想定内とはいえ、予定外のことだからね。調査再開は、予定通り3日後に行うつもりだ。それまでに、必要最低限レベルまで、2人を鍛えておく必要がある」

 シリウスが心配しているのはプロキオンだ。

 カリストは、術式が使えないとはいえ、フリーの配下として幾多の戦闘経験を重ねてきた。そして、記憶にも新しい、ドラコでの防衛戦において魔族との戦闘経験もある。戦力としては申し分ない。

 一方のプロキオンは、ネオや、現種族王のジークも認めるほどの才能の持ち主だ。しかし、実践経験はカリストよりも遥かに劣る。それが“不可侵入区域”といういきなりの超高難易度任務を遂行できるか否か。不安になってしまうのは必然であった。

 しかし、一概にも不安だと言い切れない。

 それはシリウスが中庭で見た光景。

 そこでの彼は、今までの“プロキオン”という存在とはまるで別人かのような動きを見せていた。以前より格段に強くなっている。

 一体どこで誰に教わったかは知らないが、武術も会得しているとのこと。

 低く見積もっても、A級魔族なら難なく討伐できるくらいの実力はあると考えて良いだろう。

 そうシリウスが考えること十数秒。

「分かった。じゃあその特訓にはオレも付くことにする」

「あぁ、助かるよ」

「――して、異形個体なる魔族は今後どのように対処していくつもりだ?」

「はい、その点ですが、現在確認されているのは、“刃爪(ブレード)”と“夢現(ナルコレプシー)”の2体です。前者に関しては、それなりの実力があれば問題ないかと。そして“夢現”ですが、先ほども話した通り、プロキオン殿とカリスト殿を新たに戦力として加え、彼らを主軸として立ち回る戦法を計画しております」

「……ほう? 術式が無い者を中心にか?」

「はい。これはネオ殿の見解なのですが、“夢現”には、頭部の先端に、剥き出しとなっている核があります」

 アダムはエデンに、“夢現”の外見、能力について書かれた紙を見せた。異形個体図鑑をもとに描きあげたカムイお手製のものだ。

「この核には、魔力、特に固有術式を感知する能力があると思われ、固有術式を持つ我々では対抗する手段が無いという考えに至りました。そこで、現状、【道化(ジョーカー)】によって固有術式を奪われている状態にあるプロキオン殿とカリスト殿、この2方であれば、核に感知されることなく“夢現”に接近できると考えたのです」

「そうか。……しかし目を合わせればまたシリウスのように眠ってしまうだろう? もしや――」

 エデンの言葉に、アダムはニヤリと口角を上げた。

「はい、固有術式を持つ、人狼王殿、ネオ殿、カムイ殿、そして私の4人が囮となり、その隙にプロキオン殿とカリスト殿によって接近、核を破壊するという戦略です」

 見事なまでの悪知恵。エデンは目を見開いた。

 しかし、ネオが待ったをかける。

「その囮役、シリウスは外してくれないか?」

 思わぬ意見が飛び出し、ドヤ顔で決めていたアダムの表情が崩れた。

「え? そ、それは、何故……です?」

 ほとんど反射的に出た疑問。ネオはそれに答える。

「シリウスは一度、“夢現”によって眠らされている。奇跡的に起きたとはいえ、あの時の睡眠の深さは、ほぼ昏睡に近い状態だった。次に眠ってしまうと2度と起きれないかもしれない」

「え゛っ……!?」

「確かに……否定はできませんね」

「えぇっ!?」

「――というわけで、宜しいですか、人狼王殿?」

「…………ま、まぁ、そうだな、仕方ない、な……」

「――では改めて、今後の対“夢現”に向けた人員の配置ですが、囮役としてネオ殿、カムイ殿、そして私の3人。プロキオン殿とカリスト殿を主軸に立ち回り、人狼王殿は極力“夢現”には近づかず、無理のない範囲でサポートをお願いいたします」

「分かった!」

「了解」

「それではエデン様、何かございますか?」

 一通り会議を終え、アダムは最後にエデンに振った。

 振られたエデンは、「ウム」と言って、今一度会議室内を見渡した。

「シリウス、貴様の存在が、運命を大きく狂わせ、歴史を変えようとしている。“ブラウ”として、革命者としての自覚を持ち、日々を力強く生きろ」

「あ、はぁ……がんばり、ます」

「では、3日後、頼んだぞ」

 エデンの言葉に、アダムが立ち上がり、それを見たネオも立ち上がる。シリウスはワンテンポ遅れて立った。

「仰せのままに」

 アダムが深々と首を垂れる。それに続いてネオとシリウスも頭を下げた。

「シリウス……貴様は良いのだ。――では解散」

 エデンの少し砕けた様子の一言に頭を上げるシリウス。エデンはすでに会議室を後にしようという所だった。

 残された3人。先に口を開いたのはアダムだ。

「では、私は議事録をまとめますので、これにて」

「そうだね、僕は少し街を歩いてこようかな」

「あ、オレも。美味い店知ってるんだぜ」

「あぁ、もしやあそこではないですか? 東通りの」

「そうそう! 前に帝国に来た時に食べたんだ。オレが奢ってやるから、行こうぜネオ!」

「行くけど、奢ってもらう必要はないよ。もう君に借りを作りたくないんだ」

「貸すつもりなんかねーよ。ホラ、行くぞ!」

「はいはい……」


◇◇◇


―夜―


 今晩は月が一層明るい。悠久の歴史を誇る帝国の街並みは、月明かりに照らされて、それはとても美しかった。

 自室の窓からは、帝国の城壁の奥、平原を見ることができた。そこに見えるのは西の区域の遺跡群。かつての水精国(ウィンディーネ)があったとされる場所だ。

 “不可侵入区域”。あの忌々しい魔の巣窟。ついにそれに終止符が打たれる。それはエデンの、先代からの野望であった。

 そんなことを思いながら、エデンはふと自室の窓から視線を逸らした。

 その瞬間。

 大きな羽音が聞こえた。

 その音に釣られ、エデンは再び窓の外を見た。そこには、開け放たれた窓の枠に座り、こちらを見ている蒼銀髪の女性の姿があった。

 エデンは目を見開いた。

 まさか――いや、間違いない。見紛うはずもない。何故? 如何して彼女が此処に居る?

 珍しく、眼前の景色に理解が追いつかず、声も出せないでいると、蒼銀髪の女性の方からエデンに声をかけた。

「【道化(ジョーカー)】は?」

 エデンは唖然としていた。

 やがて我に帰ると、目の前の人物をちゃんと認識し、質問に答える。

「帝国魔導聖騎士団の地下牢にて収容している」

「そ。早く出して」

 またも理解が追いつかない。

「……何故(なにゆえ)?」

「殺す」

 躊躇ない返答に戸惑いを隠せない様子のエデン。

「早くしないと大変なことになる。だから行かせて」

「――ならん。貴様とて、奴を殺すにはそれなりの被害を出すだろう」

「そんなこと気にしてる場合じゃ無いでしょ? まぁ、あなたがそう言っても、場所は割れてるし、自分で行くけど」

 そう言って、彼女は窓から飛び降りようとする。

 何とか彼女を引き止める方法は無いか、苦肉の策で、心の奥底で抑えていた言葉を発した。

「ッ、今はブラウがいる! 下手に動けば蜂会うことになる。貴様はそれを嫌うはずだ!」

 エデンの思惑通り、彼女は思わず動きを止めた。

「“ブラウ”……。シリウスがいるの?」

「左様。今は寝ているだろうが、アレも【道化(ジョーカー)】には因縁があると話している。事を起こせば必ずやってくるだろう。その時に貴様は何と言うのだ?」

「ッ…………」

 流石の彼女とて人狼王のこととなると、反射的に口を紡いでしまった。

 そこに漬け込むように、エデンは言う。

「だからやめておけ。案ずるな、禁忌は逃さん」

「シリウスはいつ発つの?」

 幾分か穏やかになった彼女の声音に安堵しながら答えるエデン。

「分からん。今は東の平原について仕事を任せてあるからな、その件が終わるまでは余の国に残るだろう」

 彼女はその言葉に絶句した。

 東の区域――“不可侵入区域”。人間王は、それの開拓をし、東の区域を自由に行き来できるようにしようと言うのだ。

「ふざけないで! 今まで何度もやって成功しなかったのは、あなたが1番よく分かってるでしょう!?」

 長い。長すぎる。低く見積もっても半年。そんなに待ちきれない。彼女の思いが爆発した。

 しかし、それに誘発するように、エデンも食い下がる。

「分かっている! そんなことは貴様よりも十二分に分かっている! ――そして、兆しが見えていることもな。よもや不可能ということはない。貴様の出る幕などない」

「ッーーーー!!」

「すべて上手くいく。“ブラウ”ならな。貴様が1番よく分かっているだろう。不可能などないことを」

「………………そう、ね。――でも、私は預言者じゃないけれど、言っておくわ。ここで【道化】を殺しておかないと、この国は終わるよ」

 終わる。その言葉は少なからずエデンの心にしこりを残す。

 最後に彼女はエデンに告げた。

「シリウスの使い方、あなたはまるで分かってないよ」

 それだけ言うと、彼女は瞬きのうちに消えてしまった。部屋の中に強く風が吹き、部屋中に白い羽根が舞っていた。

「シリウスの使い方、だと……?」

 残されたエデンは彼女の言葉を反芻するように呟く。

 人狼王(シリウス)の使い方とは? 同族であるシリウスをまるで物のように見ている彼女の感性をエデンは理解できなかった。

「…………策を練る必要がある、のか」

 そう呟くと、エデンは再び寝ることはなく、部屋を後にした。

 彼が向かった先は、帝国内にあるもう一つの大きな建物。帝国魔導聖騎士団の施設であった。

ステータス

〈アダム〉

・Unknown


〈【白銀の狩人】〉

・Unknown

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