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蒼白の天狼  作者: ベルトに乗った肉
道化暴乱編
24/34

23 決意

魔刀鍛治師センゴに会うために霊峰を訪れたシリウスとカリスト。まさかの出会って5秒でバトルの予感……!

「魔刀鍛治師センゴ、ひとつ手合わせ願いたい」

「――受けて立とう、人狼王」

 霊峰にて邂逅した人狼王シリウス・ブラウと、魔刀鍛治師センゴは互いに戦いの構えをとった。

 センゴは正面に構えたカタナを引き、その峰を撫でる。まるで西洋の剣のように後ろに構えた。

 バチバチと迅雷が迸る。刀身の根元に刻印された不思議な文字が輝き出した。

(属性が付与された魔鉄鋼を刀身に、別でもう一つ刻印術式も……)

 高揚に目を見張るシリウス。

 深く息を吸い、叫ぶ。

「――いざ!」

 地面を蹴り出した瞬間、頬にピリリと何かを感じ、目を瞬かせた。

 斬撃。剣魔人(プロキオン)を彷彿とさせるが、そんなことはどうでもいい。

 シリウスは一時たりともセンゴから目を離さなかった。

 ――いつカタナを振るった!?

 間一髪で避ける。

 再びセンゴのカタナは光り輝き、迅雷を纏う。

 またしても斬撃が飛んでくる。カタナを振った素振りは見せなかった。否、見えなかった……のか?

「プロキオンとは違う……? なにかトリックが…………」

 立ち止まり、シリウス目掛けて飛んできた斬撃を避ける――が、

 避けた瞬間、再びカタナは迅雷を纏った。

 その様子をまじまじと観察するシリウスは、早くも気がついた。

「――なるほど、ね」

 一度術式を発現すれば、相手の動きに反応して完全自動(フルオート)で繰り出されるもの。

 一度発現されたが最後、術式を解除しない限り、避けても、何らかの方法で受け止めても、“動く”という事実は変わらない。

「こりゃあ詰みだな」

 言いながら、再び動き出したシリウス。

 依然として構えを止めないセンゴ。

 センゴはシリウスを見据えていた。

 ――気がついたか。相手が動いた時に、反射的に発現する術式。

 しかし、残念ながらこれは、このカタナの術式でもなければ、センゴの固有術式でもない。

 “領域”と“抜刀”。

 “領域”とは魔導領域と違う、サンに伝わる術式の一種。

 厳密には武器の射程距離を正確に把握する、技術、勘。鍛え抜かれた動体視力を指す。

 サンの剣士で“領域”を使えるものは、年齢に問わず優れた実力を持っていることになる。

 センゴもその一人であるのだ。

 “抜刀”もまた、サンに古くから伝わる、文字通り抜刀術である。

 一定範囲内に敵が入り込んだ時に抜刀することで、術式が発現するというもの。

 抜刀、すなわち鞘から剣を抜くということ、また、その行為、状態。


 センゴのカタナは、常に、“抜刀”状態にある。


「…………!」

 センゴは僅かに目を見張った。

 断続的に放たれる斬撃。センゴには近づけないはずなのに、目の前の少女は確実に距離を詰めてきている。

 ――タイミングか……。

 一見拙いように見える身のこなし。しかしその実、センゴのカタナから放たれる斬撃のタイミング、それに合わせて動いている。

 一度斬撃が放たれてから次の斬撃が放たれるまで、その僅かなインターバルでシリウスはセンゴとの距離を詰め、斬撃が飛んでくると左右に動く。そうして確実に、着実に距離を詰める。

 実に手慣れている動き。まるで以前も対峙したことがあるかのように、センゴの手の内が研究し尽くされているかのように。

「限界か……」

(――来た…………!)

 攻略された。そう思ってセンゴは構えを解く、その出始めの動きを、シリウスは見逃さなかった。

 一気に速度を上げてきた。

(この時を待っていたか……!!)

 センゴもまた、シリウスが速度を上げる、出始めの動きに気付き、目を見開いた。

 ――速い。

 シリウスはそう感じた。

 構えを解いた、それに反応して速度を上げ、次手に移る隙を与えぬようにしたつもりだったが、既にセンゴはカタナの持ち方を僅かに変えていた。

『【氷纏装身(ヒョウテンソウシン)】』

 腕に氷籠手を纏い、魔力を右掌に集中させ、出力のギリギリで溜める。

 センゴは魔力をカタナに通す。激しい紫電が迸る。

『唸れ、豪雷』

 シリウスの拳とセンゴのカタナ。双方ともに空を切った。

((避けられた……!?))

 しかし、次の瞬間――

「ッ……」

「………!」

 カタナの(きっさき)はシリウスの眼前に、シリウスの拳はセンゴの顎に。互いに当たるか否か、(すんで)のところで止まった。

 互いに収める。

 シリウスの氷籠手は溶け、センゴはカタナを地面に突き刺した。

「一体どこまで…………」

 センゴが独り言のように喋りだした。

「……?」

「殺意は皆無。それでいて実力のほぼ全てを見せるとは、何を、其方(そなた)をそこまでするのは、何なのだ……?」

 訊かれるシリウスは、暫く素っ頓狂な表情を見せた。

「――強いて言うなら…………ただの好奇心、かな」

「違うな」

「え?」

「其方のそれは、命知らずというものだ」

 センゴの言葉に心当たりがあるのか、ぽりぽりと頭を掻く。

「あー……そうかも、知れないな」

「何処ぞで死の瀬戸際でも歩いたのか? もう何も怖くない、とでも言うような目だ」

「そうだな、実際、死にかけた」

「…………獣人とは恐ろしい……」

 センゴは地面に突き刺さっていたカタナを手に持つと、担いで何処かへ歩いていった。

 途中で立ち止まり振り返る。

「付いてこないのか?」

「へ?」

「まさか、拙者と手合わせするためだけに霊峰を登ったのか?」

 センゴに言われ、思い出したように声を上げるシリウス。

「――カリスト」

「うん」

 カリストが影から取り出したのは、街の武器屋で購入した、カタナ……のような西洋の短剣。

「これ、センゴが打ったと聞いたけど」

 センゴはその短剣をまじまじと見つめた。

「――確かに、拙者が打ったもので相違ない」

「……よかったぁ! てっきり偽物を摑まされたかと思ったよ」

「…………偽物? 其方、見る目が無いな」

「ウッ…………! か、カタナのことはまだよく分からないんだよ……」

「それで、これが何なのだ?」

 訊かれ、シリウスはニヤリと笑った。

「カタナのことは分からないけど、武器としての性能は、オレの目は欺けないぜ……!」

 目を閉じるセンゴ。次に開いた時、その目は職人のそれになっていた。

「少し其方のことを見直した。気がついていたか、拙者の“ゆーもあ”とらやに」

 センゴは手を差し伸べた。

 シリウスはカリストに目配せすると、カリストが手に持っていた短剣をセンゴに手渡した。

「からくり、と呼ぶほどでも無いが――」

 しゅるしゅると柄の布を解く。

「カタナの刀身は、鞘に収まる“上身(カミ)”、そして、柄に収まる“(ナカゴ)”に大別される」

 生身の柄が顕になる。

 柄に刻印されているのは、不思議な文字。

「サンに古くから伝わる、“カンジ”という。この向きで、読みは右から、『センゴ』だ」

 サンではカタナに作者の名前を刻むという、暗黙のルールが存在する。

「本来なら――」

 センゴは柄に刺さっていた目釘を抜いた。

 そして、柄から刀身を抜き、茎と呼ばれる部分を顕にしたのである。

「この辺りに名を掘るのだがね」

 本来、作者の名前が刻まれる場所には、『センゴ』では無い別の文字が刻まれていた。

 それはシリウスでも知った文字だった。

 魔導文字。多く、術式構築の際に魔法陣などに用いる文字だ。魔導語学と呼ばれる、魔導文字を学習する学問もあるくらい、術式における重要なコンテンツであり、ツールなのだ。

 柄に隠れる部分に刻印術式。

 刻印とは見せるのみにあらず。

 いかに敵から悟られない場所に刻印をするか。その点で、カタナは非常に理に適っていると言える。

「無論、この小刀だ。刻印の種類も限られる上、刻む場所も場所だ。得られる効果としては雀の涙だが、役に立たないわけでは無いだろう」

 センゴは、分解したそれを綺麗に元に戻し、カリストに返した。

「それで、これの刻印はどんな術式なんだ?」

 シリウスが問いかける。

 再び歩き出そうとしたセンゴは立ち止まり、顔だけをこちらに向けた。

「『“絶対防御(アブソリュート・ガード)”』」

「――は?」


◇◇◇


 思わぬ仕掛けがあった、カリストの新たなダガー。攻守一体となったそれは、カリスト戦闘スタイルをより大きく飛躍させるものとなった。

「センゴはいつまで山籠りを?」

 一同は地面に座り、座談会を開いていた。

 武者修行だと言って霊峰に籠っている魔刀鍛治師センゴ。

「まだその時ではない。いつかは分からないが、いつか、その日は来ると思っている」

 完全に気まぐれのようだ。

「ただ一つ、決めていることがある」

「……?」

「ここで暮らす間、カタナは打たないと決めている」

「え……?」

「初心に帰るとでも言うべきか。拙者は、今よりも、魔刀鍛治師として武器を作り始めた頃の方が、もっと良いものを打てていたと思うのだよ」

 あえてのブランク。武器鍛治師としては致命的だが、センゴには関係ない。

「商売のために打っているわけではない。拙者の至高の一振が打てるまで、この道は辞めないつもりだ」

「……じゃあ、その『至高の一振』とやらができたら、センゴは、やめちゃうのか?」

 センゴは思案した。数刻経って、彼は首を振った。

「分からない。未だ終わりは見えない。きっと、カタナを打てば打つほど、目標は出てくるのだろう。その『目標』が無くなった時、初めて終わりが見えてくるのやもしれぬ。――少なくとも、今の拙者には、死んでも終わりは見える気がせぬ」

 模索。センゴは人々に崇め称えられてもなお、上を見続けていた。現状、センゴより優れた刀鍛冶は居ないというのに、センゴはこれからも、この先も、虚構を見続ける。

「――さて、そいつは拙者の可能性を一つ増やしたと言っても過言ではない代物だ」

 カタナの概念に囚われないカタナを造る。それがセンゴの新たな手法である。

「本来カタナは、鍔迫り合いに向かない」

「そ、そうなのか!?」

「圧倒的な切れ味を誇るカタナ。しかし刃こぼれ一つでもあれば、カタナ本来の性能が失われ、ただの鉄棒と化す」

 センゴは、腰に携えた小刀を鞘から抜いた。

「な…………」

 それは、小刀とは紛い物の、ズタボロに錆びれ、折れたカタナだった。

「これは魔刀だ。魔刀は他のカタナと違い、どれだけ刃こぼれしようとも、刻印、刀身が残っている限り力は失われない。無論、道具として、ここまでボロボロになっていては、元来よりもかなり性能は落ちるがね」

 魔刀。それはセンゴが刀鍛冶として、カタナの新たな可能性を見出した物だ。

「西洋の剣は、斬ることよりも叩き斬ることを目的としている。つまり、武器としての強度は、カタナの方が劣る。――だが、その短剣は、カタナと同じ製法で作ったが、強度は西洋の剣と同じか、それ以上。それでいて切れ味はカタナに匹敵する。正直なところ、『“絶対防御”』の刻印は、強度維持のための苦し紛れに過ぎないが……」

 自身のダガーをまじまじと見るカリスト。

「実は、エデン帝国の魔剣鍛治師、ヒノト殿と、とある“一大ぷろじぇくと”とやらをしているのだ」

「一大、プロジェクトぉ?」


 お互いの技術提供。それを名目とした、センゴとヒノトの合作。その一つが、カリストが持っている短剣だ。

 一口に魔剣といっても製法はさまざま。

 魔力の込め方、術式の刻み方、剣の打ち方、生み出された武器の形。魔剣の姿は作者の人となりを表すと言っても過言ではない。

「でも、そんな時になんで、カタナを打たないんだ?」

 シリウスは核心に迫る問いを投げかけた。

 センゴは沈黙とは違う、口を紡いだ。

「――あれは、拙者の魔刀鍛治師人生における大罪……」

「…………大罪?」

「“斬刀(ざんとう)(くれない)”。それが、拙者が作った、最初で最後の、至高の駄作だ」

 透き通るような真紅の刀身。禁断の製法でもって作り出されたそれは、奇しくもセンゴが打ってきたカタナで最も優れた性能を誇った。

「“血呑み刀”と呼ぶ。斬れば斬るほど、その刀身に生血(なまち)が付くほど、切れ味、硬度、魔力、カタナとしてのあらゆる性能が跳ね上がる」

「血呑み…………刀」

「そしてそれは、最も渡ってはいけない者に渡ってしまった」

 シリウスは静かに言葉の続きを待った。

「最凶の妖族(あやかし)。“【人喰い】の陌鬼(ナキリ)”。本来妖族は皆心優しく、人間には不干渉であったが、昔、人を襲った妖族が現れたのだ。それが陌鬼だ」

 ――陌鬼に(あや)められた命は数知れず。多くの陰陽師によって、やっとのことで“隠世”に封印したが……。

「再び、今度は人の子を使って現れた。陌鬼自体、以前ほどの殺意は無いと聞くが、いかんせん今度は憑代(よりしろ)のほうが強い憎悪を抱いている」

「――より、しろ……?」

「妖族に取り憑かれた者のことだ。今は行方不明になっているが、陌鬼の憑代は今もどこかで生きている。そして、多くの命を、斬刀によって斬り捨てている」

 禁忌指定は未だされていないらしい。本来ならとっくになっていてもおかしく無いが、おそらく、当人ではない何者かがそれを拒んでいる。

「あんな物を作ってしまった、この腕を、もう一度ゼロに戻そうと思っている次第。刀鍛冶として腐るまで、拙者は此処に留まり続ける」

 センゴは、強い視線をシリウスに向けた。

「願わくば、人狼王、かの凶悪を討ち、“斬刀・紅”を取り戻してはくれまいか?」

 シリウスは暫し考えた。

 断る理由は無い。だが、話を聞くに、シリウス一人で背負えるものではない、と思った。

 ――やはり仲間が必要だ。

「分かった。 ――けど、少し待ってくれないか? 少なくとも、次の新月までは」

「新月……か」

「陌鬼とやらの討伐は請け負うよ。でも、それには相応の準備が必要だから……」

「承知した。“冒険者ぎるど”の方には既に報告してある。陌鬼とその憑代が禁忌指定され次第、【禁忌狩り】も動くだろう」

「【禁忌狩り】か…………」

「……? 何か思い当たることでも?」

「――いや、何でもない」

「そうか…………」


 センゴに別れを告げたシリウスらは、霊峰を下山していた。

 噂に聞いていた、妖族の姿は無かった。

 霊峰の麓には、妖族の住処、“隠世”があると聞いていたが、そんなものは見当たらなかった。気配も感じなかった。

 しかし、それは閑散とした静寂ではなく、何かに怯える、息を殺しているような静寂だ。

「…………これも陌鬼のせいなのかな」

 神――すなわち妖族。であるとするなら、『神が宿る地』といわれたこの霊峰には……。

「“神”は去った……」


◇◇◇


 森の中で揺らめく炎。煌々と周囲を照らす焚火を、プロキオンと【白銀(しろがね)狩人(かりうど)】は囲んでいた。

「“【人喰い】の陌鬼”?」

 プロキオンは“白銀”に問いかけた。

「そ。私が今追ってる奴とは別件でさ、それが結構手こずっててねぇ」

 極東連合国に所属する【禁忌狩り】が調査に駆り出されているという。

 “白銀”が違和感を抱いているのは、これまで討伐をメインとしてやってきた【禁忌狩り】がことごとく調査に駆り出されるという事実だ。“白銀”本人も然り。

「結構ヤバいの?」

 プロキオンには悪意も何も無いが、本来【禁忌狩り】に介入することも、また、【禁忌狩り】も、特に禁忌指定前の情報をひけらかすことも禁止されている。

 だが、“白銀”は別だ。

 支配を好まず、【禁忌狩り】関連組織の上層部を嫌っている。故に、どの国にも属すことをしていない。

「まぁ、なんてったって、“極東”だからね。あそこで出る禁忌は、南陸国(ズューデン)の次にヤバい」

 禁忌は、言ってみれば大罪人である。

 その殆どが、固有術式の暴走によって引き起こされる無差別殺人だが、中には自らの意思で動く者もいる。

 禁忌として危険度が高いのは、後者だ。

「もともと、“【人喰い】の陌鬼”は禁忌指定されるべきだった。でも、妖族という理由でずっと保留にされてた。ほんっと、上の奴らってバカだよね」

「じゃあ、なんで今は調査されてるの?」

「厳密に言うと、今回の調査対象は陌鬼じゃない。あくまでも、陌鬼の憑代となった少年の調査。陌鬼単体だけなら、妖族関連の仕事を請け負う“陰陽師(おんみょうじ)”でどうにかなったけど、人の子に憑いちゃぁねぇ」

 派遣された“陰陽師”は壊滅。

 【禁忌狩り】組織は、「“【人喰い】の陌鬼”を利用した大量虐殺」という内容で調査依頼を発行した。

 陌鬼の力――すなわち、術式の暴走ではなく、“利用”。

「被禁忌の術式が暴走状態か、そうじゃ無いかで、危険度のレートは断然違う。後者の方が、少なくとも、暴走状態より三段階は跳ね上がる」

 禁忌のレートは、魔族に付けられる階級と同じ、E〜Sの五段階が基本。その中でも飛び抜けてヤバいヤツは特級認定とされ、『Z』が付けられる。

 『Z』の水準は、『S級を大きく上回る危険度』という漠然としたもの。その推定危険度は、S級の10数倍とも言われている。

「……えっと、つまり…………?」

「つまり、禁忌なんてのは可愛いE級そこらなんて滅多に無くて、基本S級だから、その三段階上ってことは、問答無用で――」


 ――『Z』だ。


 プロキオンは戦慄に目を見開いた。

「陌鬼の件だけなら良いんだけど、今私が追ってる“欠けた道化の仮面の男”も、術式の暴走は無いと見てる」

 まだ虐殺と呼べるほどのものは確認できていなく、組織から見た総合的な評価は低いが、“白銀”自身は確信していた。

「アレは間違いなく『S』は固い。もし術式が暴走していないのなら、確実に『Z』まで行くよ」

 ――ボクはそんなモノを相手にしていたのか……。

 プロキオンは自分の手のひらを見つめた。

「場数が、違ったよ。“白銀”さんも、あの人も。ボク一人じゃ、到底太刀打ち出来ない。…………ボク一人じゃ…………出来ないことが、多すぎる」

 唇を噛み、拳を握る。

「“白銀”さん、ボク、強くなれる?」

 悲哀と焦燥の色混じる視線を“白銀”に向ける。

 “白銀”は優しく微笑んだ。

「もう、強くなってるじゃん」

「――え?」

「学びは、強さ。キミは今、一人ではなんでもは出来ない、生き物の弱さを学んだ。その学んだことを活かせば、キミは今よりさらに強くなれる」

「…………そっか」

 プロキオンの表情は、少しだけ明るくなった。

「ボク、“白銀”さんみたいに強くなりたい!」

 プロキオンは熱い視線を“白銀”に向けた。

 ニヤリ、と“白銀”は笑う。

「…………私の修行は、甘く無いよ」

「――望むところだァ!!」

 立ち上がり、拳を高くあげる。

 それに続くように“白銀”も立ち上がる。

「その意気やよし! まずは戦闘での立ち回りからだ!」

「うおぉぉぉぉぉぉ!!」

 その夜、プロキオンの雄叫びが森中に響いた。

ステータス


〈センゴ〉

・No data

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