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蒼白の天狼  作者: ベルトに乗った肉
禁忌衝突編
17/34

16 衝突

第一章最終戦、開幕。

 どこまでも青い忌々しい空。

 ネオにとっては、森羅万象が、今はただ忌々しい。興味もない。ただ1人、フリー・アンノウンを除いては。

 あらゆる理を破壊する能力。アレさえあればこの世界など思いのままだ。

 ――あと少しだ。

 ネオは明後日の方向に手を差し出す。するとその方向から愛用の二俣鉾が飛んで、手元に戻ってきた。

 先までの攻撃は小手調べ。どうやらあの獣竜王に小細工は通用しないらしい。

「上等さ」

 言いながら立ち上がり、ゆっくりとこちらへ向かってくる影を見据えた。

 “色”を変え、二俣鉾の『“延纏(えんてん)”』の刻印に魔力と術式を同時に流し込んだ。

 雷電が迸り、ネオの髪は僅かに逆立つ。

「引き出し(ストック)の多さが売りのようだが、無駄だと思うがな」

「“味変”だよ。同じ(パターン)じゃ飽きるだろう?」

「ほう……精々楽しませろよ」

 フリーの言葉に、ニヤリと嗤うネオ。

 低く構えると、ボソリと呟いた。

「……狡猾(こうかつ)に、真っ直ぐに」

 バチバチと全身に電気が走り、地面を蹴った瞬間、一瞬にして姿が消えた。

 フリーは僅かに右に一歩ずれて回避すると、ネオの顔面を鷲掴みにし、地面に叩きつけた。

 と思われたが、実体が消えたネオはいつのまにかフリーの背後に立ち、二俣鉾を無防備な背中に突き刺した。

 ――その時だった。

『“解放(リリース)”』

 フリーが固有術式を発現させ、その衝撃でネオは軽く吹っ飛ぶ。

 僅かに生まれた隙に、フリーは手頃な石を拾うと、ネオ目掛け投げ放つ。

 【壊】を纏ったそれは、あらゆる防御を破壊する。

 しかしネオもタダではやられない。

『“投影(トレース)”:【(バク)】』

「それは禁忌だぞ………?」

「知るかよ!」

 あらゆるものを喰らい消し去る禁忌の術式、『【喰】』。【闇】の極致とも言われているが、詳細は不明。触れたものを原子レベルで分解し消し去るものだ。

 フリーが投げ放った石は、【喰】によって消え去った。

(“延纏(えんてん)”程度では破壊しきれない、か。相手の方がより洗練された術式のようだな)

 術式同士、特に相反する効果が衝突するとき、より洗練された術式――完成度の高い術式が制する。フリーの放った石は間接的な術式でしかなく、体積も小さい。対して直接術者本人から発現されたネオの【喰】は質量、洗練度ともに前者を上回ったため、万理を破壊する術式をも打ち破れたのだ。

 いかなる状況においても、相手より洗練された術式を発現できる。その圧倒的な自信と、それに恥じることのない確たる魔導技術。それがネオを強者たらしめている所以である。

 体制を整えたネオは、手を前に差し出すと、親指を下に突きつけた。

『“投影”:“冥墜(マイティー・フォール)”』

「……ッ!?」

 咄嗟の判断で横に回避したが、正解だったようだ。このネオという小僧、【禁忌】の術式を行使できる。

「……どこで手に入れた?」

「忘れた」

 ニイッと嗤うネオ。しかし、フリーの表情は変わらない。答えが聞きたくて質問したわけではないからだ。

 おそらく、このような術式の引き出し(ストック)はまだあるだろう。

 それにしても、どうやってその術式を取得したのか?

 考えうるのは1つしかない。

 彼の固有術式『窮極魔法【霊】』。

 ネオは精霊術においても卓越した技術を持っている。何より、彼が持つ媒体となる精霊の数は小さなものから、伝説級の大精霊まで、数千を超える。

 だからといってネオが【禁忌】の術式を行使できるということの証明にはならない。

 肝心なのは固有術式の詳細。

 ――そもそも、なぜネオが【禁忌】を使わずして自らフリーの前に立ちはだかったのか……?

 フリーを生かしておくことで、ネオにメリットがあるとするならば、それはなんなのか……?それと精霊術の関係性は……?

 フリーは戦いの最中で思案した。

「『“投影”』か………」

 ネオが禁忌を発現する際に発した言葉(ワード)

 ――それだ。

 精霊術は、媒体となる精霊の術式なり属性なりを自らに落とし込んで発現させる術式。

 ネオの『“投影”』と非常に酷似している。否、その逆、『“投影”』が精霊術のシステムと似ている。

 ふっと笑うフリー。

「なるほどな」

 その瞬間、フリーの動きに変化が現れた。それに気づくことなく、ネオは再び親指を下に突きつける。

『“投影”:』

 ネオよりも術式構築の開始が遅いにもかかわらず、彼の術式が完成し、発現するまでよりも早く、フリーは術式を発現させる。

『“冥墜”』

『術式展開――窮極魔法【壊】:“破術(ディストラクション)”』

 空を殴りつける。フリーの拳、その打点を中心に、同心円状に透明な波紋が広がり、空気にヒビが入ると、たちまち割れてしまった。

 なんとその瞬間、ネオの術式は消え、不発に終わったのだ。

「は?」

「どうした!? その程度か!」

「クックック…………」

 呆気に取られたネオの表情は一変、狂喜に変わる。

「あまり期待させないでくれよ!思わず殺しちゃうだ……ッ!?」

 言葉を最後まで待たずして、フリーは容赦なくネオの顔面をぶん殴る。

「台詞と実力が伴っていないぞ……?」

『“迅雷突(ランポ・スピンタ)”』

 突如投げ放たれた、迅雷を纏いし二俣鉾。しかし、それをもフリーは素手で掴む。

 さらに、そこに自身の固有術式『窮極魔法【壊】』を『“延纏”』に流し込んだ。

 投げ放つのに遅れて、爆発のような轟音が鳴り、環状の衝撃波が生まれる。

 音を置き去りにするほどの速度。

(こんな至近距離でか!?)

 なす術なしと思われたが、ネオはそこまで浅はかではない。

 手を銃のような型にして、迫り来る二俣鉾に向ける。

『“投影”:“無刻(ニヒツ・テンポ)”』

 時間の概念を消し去る【禁忌】の術式。それを受けたモノは、停止する。

 指先から放たれた小さな光は、二俣鉾に当たるも、速度が僅かに下がっただけだった。

「チィ! 押し切れないか!」

 先も述べたように、相反する効果の術式同士が衝突するとき、より洗練された方がその場を制する。

 あらゆるものを停止――無力化させる『“無刻”』と、あらゆるものを破壊する『窮極魔法【壊】』。矛盾する術式同士、さらにネオの魔導技術を以ってしても押し切れない。

 それもそのはず、ネオの愛用する二俣鉾には、いくつかの刻印術式が隙間なく刻印されており、緻密な魔力操作技術がなければ、誤って目的の刻印とは別の刻印にも魔力が通ってしまう。

 しかしフリーは一発で、針の穴に糸を通すように目的の刻印に術式を流し込んだ。これが洗練された術式でない筈がない。

 かろうじて二俣鉾を取り返したネオは、『“延纏”』を上書きし、体勢を整える。

 僅かに苛立っているのはフリーだ。

 何せ、渾身の投擲(とうてき)(ことごと)く外れ、無効化される。

「まぁ、それくらいでないと戦い甲斐がない」

 獣竜王、どうやらただの脳筋種族王ではないようだ。

 卓越した魔導技術。あの能力からは想像もできないほど緻密な魔力操作もできるのか。

「ますます興味が湧いてきたよ」

 『“延纏”』に通した術式――

 二俣鉾の周りの空間が僅かに歪む。

『“重潰突(グラヴィタ・スピンタ)”』

 (きっさき)を地面に突くと、周りの地面がクレーターのように陥没する。

 不敵に笑うネオ。二俣鉾がいかに危険な状態であるかを見せ示しているつもりか。

(【禁忌】の術式――重力を操作する術式を纏わせたのか。少なくとも、触れればタダでは済まないな)

 そう思案するフリーを他所に、ネオは真正面からフリーに迫る。

 二俣鉾を巧みに回し、懐に柄を叩き込んだ。

「ッーーーーーー!!」

 打点の面積からは考えられないような広範囲に及ぶ衝撃。それも平面的ではなく立体的だから厄介である。まるで巨大な球体に衝突したかのようだ。

 さらに重力は絶え間なく変化している。衝撃でフリーの身体を吹っ飛ばすでもなく、逆に引き寄せるような向きに重力を操作することで逃がさない。その重さは体の芯に突き刺さる。

 咄嗟にフリーは二俣鉾を掴むも、その瞬間、圧倒的な力でフリーの身体が振り回された。

(不規則な重力の方向……! 太刀取りも許さないのか……!?)

 宙に放られ、無防備となったフリーに、ネオは追撃する。

 華麗に二俣鉾を回し、今度は刃を、フリーの首元目掛け振り下ろした。

 ――だが、

「…………チッ!」

 フリーは自身のマントで攻撃を受け止めた。

 ダメージを大幅に軽減されたおかげで、フリーはほぼ無傷だ。

 軽々と着地し、体勢を立て直す。

 ネオは片眉を顰めてぼやく。

「忌々しいマントだな」

 そんなネオの言葉に、フリーは僅かに思案する。そんな素振りを見せた。

 数刻空いて、口を開く。

「――そうだな。少し、インチキをしてしまった」

 そう言うと、首元の留め具に触れてマントを外し、投げ捨てた。

 『翼化のマント』。相手の攻撃を軽減するだけでなく、フリーにとっては命綱にも等しい翼の役割を持っているというのに、彼はそれを捨てたのだ。

 呆気に取られたネオは、空いた口が塞がらない様子。

 はっと我に帰ると、額を抑え、感嘆の言葉を漏らした。

「……おい…………フリー! アンタ、大した(おとこ)だよ!!」

 その言葉に眉ひとつ動かさず、しかしどこか満更でもない様子で、フリーはネオに告げる。

「貴様に褒められる覚えはない」

 しかしネオはひとつも聞いていない。

「さすがは史上最強。これからが“本番”、というわけか――」

「勘違いするな。これから“準備運動”に入るところだ」

「ッ……………」

 ネオ顔から笑みが消えていく。苛立ちにも似た表情でフリーを睨んだ。

「――あまり調子に乗ったことを言うなよ…………!!」

 拳を握り、構えるフリー。

「来い……!」

 ネオの言葉に、フリーは不敵に、強く微笑んだ。


◇◇◇


 魔族襲来から数十分が経った。アンノウン・ファミリアの幹部らの働きにより、街への被害はほとんど無い。皆無だと言っても過言ではない。

 しかし、一向に魔族の勢いが減る気配はない。海こそ真っ黒に染まったのが、僅かに青を取り戻したが、さすがの幹部らも違和感を覚え始める。

「なかなか……数が減りませんね」

 思わず呟いたのは、前髪で目元が隠れている薄桃色の頭髪の少女――イオ。

 右手には彼女の身長ほどはありそうな大剣を軽々と持ち、全身、返り血のような液体で濡れていた。

 頬に付いたそれを拭い、一息吐く。

 そんな無防備な背中を襲う魔族。

 そこに割って入るようにして現れたのは、髪を雑に撫で上げた、筋肉質の肉体で武人然とした少年――ガニメデ。

 振動や音を操り、イオを襲った魔族を回し蹴りで肩から上を吹き飛ばす。

 爆散する際に、イオに、(もろ)に体液が飛び散った。

「…………………」

 水も滴る良い女と言うが、これは、それとは全く違う。

「油断するなよ!まだ終わっちゃいねェんだから」

「――ガニメデ、おかしいと思いませんか?何故だか、これ以上魔族の数が減る気配がしないのですが……」

 再び頬を拭いながら、ガニメデに問いかける。

 言われたガニメデは、つま先でトントンと地面を叩きながら何かを探るような素振りを見せる。

「確かに、アレから大して減っちゃあいないな」

 当初、ガニメデの推定では5000万はいたとされる魔族。幹部4人ならば、数分もあれば片付くと思っていたが、何が原因か、それは大きな誤算となった。

「んで、どうする?」

「幸い、この戦いのおかげか、魔族は私たちを狙ってくるようになりました。ここは下手に散らばらず、固まった方が得策では……?」

 イオの提案に、異を唱えることなく、ガニメデは実行に移る。

「よし、2人を呼ぶ」

「お願いします」


「ッ…………?」

 ガニメデの呼びかけに気づいた美丈夫――エウロパ。

 同じく、影からは第四幹部のカリストが現れる。

「エウロパ」

「あぁ、戻ろうか」

 再びカリストは影に潜むと、退路を塞ぐ魔族を重点的に始末するように動き出す。

 一方で、エウロパは、カリストがこじ開けた退路を走りながら、彼を追尾する魔族らを魔眼で以って処理をする。

 ガニメデからは「戻ってこい」の一言だけ。絶対的信頼があるからこそ成せる連携だ。

 イオたちが持っていた違和感に、エウロパも気付いた。

「――なるほど、これは下手に別れるのはジリ貧のようだ」

 数の暴力とはまさにこのこと。たとえ多対1で、1人が強かったとしても、長期戦となると話が変わってくる。

 高台に登り、戦地全体を見渡す。

(…………この辺りだけでも片す――いや、今は合流に専念すべきか)

 極力、無駄な消耗は避けたい。退路はカリストが作ってくれるし、エウロパが集中すべきは移動である、と、エウロパはひとつの結論を立てる。

「やれやれ、流石に全ては無視できないか」

 一瞬の隙を突いたつもりか、背後から迫る魔族に気づいていたエウロパは、それらを視界に捉えた。

『術式展開――窮極魔法【(ガン)】:“(イン)・【(ダン)】”』

 エウロパの周囲に無数の魔弾が生成される。指を鳴らすと、それらは魔族の核を貫いた。

「さて、急いで戻ろ――」

 言いかけたとき、何かが家屋にぶつかった。

「いけない!」

 ドラコの街、特に建物への被害は極力避けたいと思っていたが、ついに被害が出てしまった。

(油断?いいや、私に限ってそんな………。まさか……!!)

 悪寒がしたのか、僅かに冷や汗を掻きながら叫んだ。

「カリスト! 無事ですか!?」


 生ぬるい風が吹き付ける。

 全身に刺さるような痛みを感じる。

 小さく呻きながら身体を起こす。と同時に、エウロパらしき声が聞こえた。

「だい、じょうぶ……」

「か、カリスト、様……?」

「ッ!?」

 突如背後から声が聞こえ、その方を振り向くと、そこにいたのはうら若き獣竜族だった。

「外で一体何が?」

 カリストの表情は青ざめていく。

 まさか………民間に被害が!?

 目の前を見ると、家の壁に大穴が空いていた。故意ではないとはいえ、あってはならない。

 痛みなどとうに忘れているカリストは、背後の少女を守るように立ち上がる。まだ、動ける。

 部屋の外――屋外に立っていたのは、長髪長身の女性だった。

「ネオ様は『結界に閉じ込めた』と仰っていたが、まぁ、良いか――」

 知性を持つ魔族……? 否、あり得ない。

 では何だと言うのだ?


「蜂の巣にしてやるよ」


 術式の気配。女の瞳が怪しく光り、逆光で姿がシルエットになっているのと相まって、不気味さに拍車をかけていた。

 突如カリストに向けられた、銀色の光。それをカリストが察したと同時に、術式が発現された。

『“抜銃(ドロー):【(ラン)】”』

「ッーーーーーー!!!」

 女の周囲に数多の小さな魔法陣が展開され、術式の発現とともに、無数の弾を放った。

(銃の術式…………!!!)

 目にも留まらぬ速さで、放たれるすべての銃弾を短剣で(はじ)く。何発かカリストの身体に掠ったが、それでも背後の少女には一発たりとも当たることはなかった。

「チッ、なかなかやるじゃん」

 悔しそうに呟く女。

 やがて太陽が雲に隠れたのだろう。陽光が弱くなり、女の姿が明らかになった。

 尖った耳。濃く透き通った青と金色の虹彩異色(オッドアイ)。長髪は後ろで結われていた。

耳長人種(エルフ)………!?」

 厳密には、堕落した妖精の異名を持つ、『闇妖精(ダークエルフ)』の一族だ。彼らはその特徴として、虹彩異色が多いのである。

 飛び道具を使う敵。街に被害は出したくないというのに、そんなに虐めたいのだろうか。

「次は、外さない……ッ!」

 再び銃を構える。

 銃口から魔法陣が幾つも重なり、連なる。

『術式展開――究極魔法【(ジュウ)】:“狙撃(イェーガー)”』

 僅か1秒にも満たない、刹那の出来事。

「カリスト!!」

 術式が発現する直前に影の中にいるもう1つの自分に合図を出した。

 発砲と同時に影が蠢き、後ろの少女を呑み込む。

 もう一方のカリストは間一髪で銃弾を回避し、そのまま一直線に短剣を構えて(はし)る。

 しかし、相手はまだ笑みを湛えていた。

「逃げられないよ!」

 部屋の壁に当たる直前に魔法陣が展開され、銃弾が跳ね返る。

 天井、床、左右の壁と跳ね返り、カリストの背後――後ろの壁に今一度当たると、その銃弾はカリストの心臓の辺り目がけて飛んでくる。

「……ハハッ! 勝っ………たッ!?」

 彼女の目に映ったのは、自身の右肩に深く突き刺さる銃弾と、宙を舞う鮮血。

 次いで、こめかみに何かが刺さったという感覚を最後に、意識は暗転した。

 ――危機一髪だった。

 銃弾が壁や床などに反射して再び戻ってくるのは予想がついていた。

 相手の敗因は、自分と、カリストが一直線上になる位置で、背後から跳弾での狙撃を狙ったことだ。

 カリストは銃弾が命中するギリギリで、逆光となって伸びた相手の影を踏み、相方(カリスト)の術式で潜り、回避した。

 そこからはほとんど賭けだったが、相手が僅かでもたじろいでくれたおかげで隙ができた。カリストはそこに、短剣で止めを刺すことができたのだ。

 影に合図を出す。と、カリストの影が伸びて、中で隠れていた獣竜族の少女を吐き出した。

「あ、あ………」

 少しの恐怖と、何が起こったのか分からないという困惑で、しどろもどろになっている様子。

「あ、ありが………ッ!?」

 カリストは、彼女の頭に、その小さな手を置いた。短剣を持っていない方の、綺麗な手だ。

「だいじょうぶ。こわくない」

 それだけ告げると、立ち上がり、部屋の外を見た。

「ごうりゅう、する」

 そして颯爽と部屋を後にしたのだった。


「クッ、ハハッ……」

 何ということだ。あの幼女、エウロパですら切り抜けるのが一苦労だという状況を最も容易く切り抜けてみせた。思わず安堵にも似た笑い声が漏れた。

 そんなカリストの姿が消えたかと思うと、エウロパの影から再び現れた。

「やれやれ、焦りましたよ」

 カリストからはよく見えなかったようだが、エウロパにははっきりと見えていた。

「アレは、精霊王の配下の者のようだね」

「…………やっぱり」

 尤も、ネオの配下が全員敵であるという可能性は、100パーセントではない。ただ、少なくとも直属の配下――幹部、特に両翼的立ち位置にある人物は、ネオの裏の顔を知っている者たちだろう。

 つまり、今回の戦いにおいて、衝突する可能性が十二分にあり得る存在であるということだ。

 その1人が、先の女だったようだ。ダークエルフだったから間違いない。

 ただ一つ、カリストには違和感があった。

「たぶん、“にせもの”」

「――というと?」

「“ほんもの”は、まだどこかにいる」

 あまりにも呆気なさすぎた。仮に精霊王(ネオ)の幹部だとしたら、張り合いがなく、弱すぎる。まるで、姿と術式だけコピーされた人形のようだ。

 そんなカリストの陳述で、エウロパはあることを思い出した。

 少し前に、種族王の統治領域付近で目撃された、“偽【禁忌】”の一件。同時多発的に現れたそれらは、曰く、本物よりも弱いとのこと。

 此度の【禁忌】に関する騒ぎの黒幕がネオであるなら、部下にも同じ術を施している可能性は低くない。

「それでは、十分に警戒しなければならないね」

 カリストもそれに頷くと、再び影に戻り、イオたちの元へ急いだ。


………

……


「はぁ、汚らしい魔族(ゴミ)の山ねぇ……」

 軽くウェーブのかかった薄緑色のロングヘアーで頭には花冠のような装飾。フリルのついたドレス――いわゆるロリータファッションに身を包み、淑やかに、どこからともなく現れた巨樹の枝に座っていた。

 その瞳は、鮮やかな緑と薄金の虹彩異色だ。

「――まぁ、良いでしょう。ネオ様からの命令で来ました。(わたくし)、ファルシュ・ファミリア第二幹部、フランツェと申します。姓は捨てました。ただのフランツェです」

 彼女が語りかけているのは、首をコキコキと鳴らしながらしゃがむ、獣竜族の少年。

 彼がいるのは巨大な樹木の枝の先だ。ドラコの街の遥か上空である。

「アンタか、ずっと植物の“音”鳴らしてんのは」

「まぁ! 噂には聞いていましたが、本当に耳が良いのですね!」

 あくまでもお淑やかに、しかしどこかオーバー気味のリアクションで、笑顔を取り繕って――要するに、薄っぺらい。

「差し詰め植物を操る能力といったところか。アンタの心臓、自然の“音”が混ざってる」

「……へぇ、他人(ひと)の術式が分かるのね」

 この女、かなり性根が黒いかもしれない。

 先ほどとは打って変わって、目を細め、少年――ガニメデを見る。

「それに、アンタ1人じゃ無いな。もう1人はどこだ?」

「……ティラユールのことかしら? 私、あの()苦手なのよねぇ。だってぇ、野蛮じゃない? って、貴方に言っても分からないわよね」

 ――銃声。少し離れた位置でもガニメデにははっきりと聞こえていた。

 アンノウン・ファミリアの仲間に銃を使う者はいない。それに、魔族にもそんなものを扱えるほどの知能を持ったものもいない。よって、目の前の者の仲間であるという結論を出した。

 そして、彼女の発言から、カリストが倒したと思われるそれは、まだ生きている。

「どうする? ここで退くのなら、アンタのことは見逃してやるよ。俺はな」

「まぁ、優しいのね」

「フンッ、惚れたか? 生憎、俺は女に興味はない」

「――は? ンなわけないでしょう、変態」

「へんッ……!?」

 彼女が言った瞬間、ガニメデの背後から斬りかかる何かが現れた。

 紛れもない、フランツェだ。木の枝が巻き付いたような剣を持っていた。

 だが、奇襲はガニメデには効かない。

「聞こえてんだよ。こちとら、耳が良いんでね」

「まぁまぁっ! なんでも聞いちゃうの!? ……ど変態さんなのね」

「ッ……語弊があるだろうが!」

 ガニメデの言葉など聞く耳を持たず、再び斬りかかる。

 その全てを、ガニメデは反撃もせず避けるばかりだ。

「…………つまらない。本当に攻撃しないの?」

「様子見だよ、様子見」

「はぁ、舐められたものね」

 フランツェから新たな術式の気配が。

 咄嗟に身を引いて、構えるガニメデ。

 一方のフランツェは、術式を構築し、発現せんと口を開いた。

 その時だった。

 ――バキッ、ミシミシミシッ!!

「は?」

「ん?」

 樹木が突如朽ちていき、たちまち足場が崩れていった。

「な、なんなのよ、これは!?」

「…………えげつねェことしやがるぜ、まったく」


「――たとえ術式でも、植物は生命。ならば私の術式対象です」

 下にいたのは、薄桃色の、前髪で目元が隠れた少女。イオだ。

 その彼女の姿に、フランツェは驚いていた。

「はぁ? あの量の魔族(ゴミ)を1人で片したの? 解せないわ」

 フランツェが現れる直前、ガニメデと共に魔族と戦っていたイオだったが、フランツェが生み出した樹木によってガニメデは遥か上空に。イオは、そのまま地面に取り残されてしまったのだ。

 あわよくば魔族に喰われてしまえと思っていたが、獣竜王の幹部の名は伊達ではないらしい。

「貫かれ、尽きなさい!」

 フランツェの周囲に魔法陣が展開。

 術式を発現した瞬間、そこから尖った枝が飛び出した。それは装甲をも貫く。

『“痐癁(ヒール)”』

 真正面から受けるイオ。

 樹の枝は、イオを貫くよりも早く、朽ちて崩れる。

「――貴女の仕業だったのね」

「……邪魔だったので」

 ふわりと着地するフランツェ。

 イオから溢れる、赤黒い魔力(オーラ)。それを見てフランツェはすぐにわかった。

「貴女の、それ、術式を反転しているのね」

「戦闘には不向きなので」

「はぁ、勿体ない。目の前にこんなに良いものがあるのに、目先のことに夢中になって。ネオ様ったら、可愛いわぁ……」

 ――解せない。彼女のどこに、反転術式を常用できるほどの魔力がいるというの?

 地脈干渉やマナへの干渉によって魔力を得ることも可能だが、反転術式を常用するために干渉するのは、むしろ効率が悪い。

「……いずれにせよ、回復役(ヒーラー)の貴女は邪魔だから、消えてもらうわね」

「そうですか」

 フランツェが指を鳴らすと、イオを取り囲むように魔法陣が展開され、そこから先程の尖った枝が飛び出した。

(速い……)

 空間干渉の速さに驚きながらも、イオは眉一つ動かさなかった。

 イオは気づいていた。自分は今、動く必要はない、と。

 イオの視界に彼がいたからだ。逆に、フランツェには見えていない。

 彼はフランツェの背後にいる。

『術式展開――窮極魔法【眼】:“印・【(キョク)】”』

 想定より早い到着。流石だ。

 枝はイオを貫く直前で角度を急に変え、真上に向いた。

「なッ!?」

 これも目の前の女の術式か!?

 ――否。

「ッ…………!!」

 フランツェは必死の形相で背後を見た。

 エウロパが、そこには立っていた。

「私の邪魔をォッ!!」

 手のひらを前に向け、そこに魔法陣を展開。

「――するなァァッ!!」

 イオに放ったものよりも太く、速く、エウロパ目掛けて発現する。

 しかし、

『“絶対反射(アブソリュート・リフレクション)”』

 右眼が紅く輝き、フランツェの放った枝を跳ね返した。

「なにっ………?」

 愕然とするフランツェだが、簡単に諦めるような人物ではない。あらゆる可能性を、最適解を、導き出す。

「ティラユール!!」

 その名を叫んだ瞬間、跳ね返された枝の先端が吹き飛んだ。

「――良い選択だ、フランツェ」

「ッ………。その男は貴女に譲るわ」

「了解」

 その言葉を合図に、ティラユールとフランツェはそれぞれの方に走りだした。

 ティラユールにはエウロパが、フランツェにはイオが迎え撃つ。

「ガニメデ、魔族の処理を」

「任された!」

 ガニメデに指示を出し、フランツェと完全に1対1の場面を作り出すイオ。

「あら? 良いのかしら、1人でも」

「問題ありませんよ」

 言うと、急激に距離を詰めた。

「――触れば勝つので」

「ッーーーー!!」

 ギリギリで回避したフランツェは、少し距離をとり、未だかつてない速度で数多の魔法陣を展開した。

「薄々感じていましたが――」

 それらを遇らいながら、呟くイオ。

「――“窮極”なのですね」

 その質問の意味を、フランツェはすぐに理解した。

「鋭いのね。そうよ、私の固有術式は『窮極魔法【(ジュ)】』」

 任意の座標に樹木を生み出すことはもちろん、能力に植物の特性が表れている。

 例えば、光合成の容量で魔力を体内で生み出すことができる上、地中深くに根を張れば、地脈から魔力を汲み上げることだってできる。彼女に魔力の枯渇ということはあり得ない。

 生み出す樹木も、形状、質量、体積、密度を自由に変えることができ、さらに一部の樹液には傷を癒す効果もある。

「…………なんでもアリですね」

「ッ……!?」

 ――能力の詳細までは話してないのに!?

 まるで全てを察したようなイオの言葉に、フランツェは驚愕した。

 休む暇を与えず、イオは攻める。

 その勢いに押されるように、フランツェは反撃をしながらも、少しずつ後退りしていく。

「チッ……!」

 気づいた時には、フランツェは日陰にいた。

(この女、やはり私の“光合成”を知って……?)

 思案。その僅かな隙が命取りとなる。

 死神の手が眼前に迫る。

「油断も隙もないのね!」

 その言葉を最後に、フランツェはイオに顔面を掴まれた。

『“痐癁”』

 触れた部分から、フランツェの肌にヒビが入る。

 全身をビクビクと痙攣させ、白目を剥く。

 やがて身体が腐ると、腕、肩、足、と()げていった。

 見るに無残な姿となったフランツェ。見下ろし、ぽつりと呟いた。

「油断も隙も、ありませんね」

 大剣を構え、振り回す。背後から突如現れた木の枝を両断した。

「――まぁ、残念」

 イオの背後に立っていたのは、フランツェだ。

「随分と残忍な事をされるのね」

 腕を組みながら、立つ彼女の身体には、傷ひとつなかった。

何時(いつ)からですか?」

 イオが問いかけると、フランツェは口角を釣り上げ、答えた。

「“初めまして”、ね」

「そう、ですか」

 ティラユールと同様、フランツェも分身を使っていたのか。

 ――否。

「木のお人形でしょうか。随分と完成度が高いのですね」

「あら、ありがとう。もちろん、“窮極”だもの。これくらい出来なくては、第二幹部の名が廃るというものよ」

 窮極魔法。イオとフランツェには、雲泥の差ともいえる壁が存在した。

 イオの固有術式の段階は“究極”。側から見ればレベルは高いが、フランツェからすれば、赤子も同然。それほどまでに、“究極”と“窮極”の間には大きな壁が存在する。

 未だかつてない魔力の気配。

 フランツェが“窮極”であると知り、最も恐れていること――

「――そう、本当に残念ね」

 フランツェは嗤っていた。

「貴女があの男と別れていなければ、まだ勝機はあったでしょうに」

「…………」

 空を仰ぐフランツェ。

「ねぇ、あの蒼の先には何があるかしら? “天界(ヒンメル)”? でもそれじゃ単純でつまらないわよね。逆に“冥界(ヘレ)”なんて面白そうじゃない」

「っ…………」

「私の能力の真髄は、“無窮”であること。どこまでも、尽きることのない生命の輪廻(サイクル)。私は……“1対1の状況(このとき)”を、待ってた」

「させない!」

 焦燥の色混じる声で叫ぶイオ。地面を蹴りだし、大剣をフランツェの首元目掛け振りかざす。

 フランツェは両手を合わせて前に向けた。


『術式展開――魔導領域【天達樹(アズ・エーギグ・エーレ・ファ)】』


 1本の巨大な樹木が天へと伸びていく。伸びた根は、巨樹を中心として結果を作り出し、イオに逃げ道を与えない。

 枝が四方から伸びて、イオの四肢を掴む。

「しまった!!」

 大剣は取り上げられ、その鋒は、イオの胸元に向いていた。

「とても面白い大剣。まるで“植物の根”のようね」

 樹で造られた玉座に座り、大剣を弄ぶフランツェ。

「――ようこそ、私の魔導領域へ。大層な名前をしているけれど、領域としてはとても平凡なのよ。ここでは私の固有術式の能力を最大限に引き伸ばしてくれるの」

「最悪、ですね」

「……良いわ、その表情! もう少しはっきりと見せてほしいけれど、貴女はそれくらい感情豊かでないと、貴女からは生気を感じないもの」

 反撃しようと試みるが、領域の効果か、術式がかき消される。それどころか、まともな術式構築もままならない。生い茂る草木に絡まったように、自由が効かない。

「無駄よ。所詮貴女は“究極”。況して魔導領域の中、貴女に勝ち目はないわ」

 大剣に木の枝が巻きつき、まるで本当に手に持っているかのように振り回す。

「ッ……!」

 絶妙な剣捌きでイオに切り傷を付けていく。

「まぁ! 痛いのね? ほら、治してみなさいよ」

「クッ…………!」

 身体じゅうに傷を付けていき、じわりじわりと追い詰める。

 イオの頬から一筋の汗が伝う。

 軽く視界がゆらめき、呼吸も浅くなってきた。

(これ以上は、不味い……)

 彼女の抵抗が徐々に無くなっていくのを感じたフランツェは、その顔から笑みを消した。

「――つまらない。獣竜族も所詮生き物。最強の生物が、聞いて呆れるわね」

 大剣をイオの胸元の前に持ってくる。

「安心して、この剣は私が大切に使い倒したあと、粉々に廃棄しておくわ」

 ゆっくりと手を前に差し出し、止めを刺す準備をする。

(こんな最期…………つまらないですね)

「さようなら、永久(とこしえ)に」

 手を振るうと、その動きに連動するように、大剣を持つ枝が動き出す。

 無慈悲のそれは、無抵抗なイオの心臓を貫いた――


『術式展開――魔導領域【万華郷(マンゲキョウ)】』


 ――はずだった。

 フランツェの目の前に、突如巨大な眼が現れた。

「眼……!?」

 それは不気味に光りだし、異常に充血したかと思われた時、フランツェの魔導領域にヒビが入り、跡形もなく崩れ去っていく。

 そして代わりに出来上がったのは、絶え間なく模様が変化していく、鏡のような空間。

 そしてフランツェの目の前には、左眼が青緑、右眼が紅紫の虹彩異色の男が立っていた。

(私の魔導領域が…………押し返されたとでもいうの!?)

 唖然とするフランツェ。

 それよりも問題なのは、なぜ目の前の男が、こんなところにいるのかということだ。

「貴方、どうしてここに!? それと、ティラユールはどうしたのよ? まさか、他の仲間に押しつけたのかしら?」

「いや、強力な助っ人が来てくれたのでね。やれやれ、まさか御存命でいらっしゃったとは」

 ふっと笑みをこぼし、男――エウロパは呟いた。

「助っ人、ですって?」

「ええ。ご存知ないですか? 元精霊王ネレイス・ヴァールハイト」

「ッ!?」


………

……


―少し遡る―

 銃を自在に操る、精霊王ネオ・ファルシュの配下であり、ファルシュ・ファミリア第三幹部、ティラユール。

 彼女の弾丸は、どこまで行っても追ってくる、追跡(ホーミング)型だ。

 厳密には、反射板のような役割を持つ魔法陣にぶつかり、不規則な動きで狙撃してくるものである。

「空間干渉と通常の術式の発現を同時に行うとは、大したものだ!」

「他人の感想述べてる場合かよ、クソ野郎!」

 家屋の壁や地面は愚か、何もない空気でも銃弾は跳ね返り、気がつけばエウロパの真正面に迫っていた。

 しかし、ニヤリと笑うエウロパは、焦ることなく走り続ける。

「ど(たま)ブチ抜かれて死にやがれ!!」

 そんなティラユールの思い虚しく、銃弾はエウロパの顔面にあたったかと思われたところで跳ね返る。

 それはティラユールの制御を失い、流れ弾として地面に転がった。

「はぁ? あり得ない!」

「生憎、こちらは自動(オート)反射なのでね」

「チッ、フランツェの奴、分かっててアタシに回したな!」

 フランツェへの愚痴をこぼしながら、銃を生成し、エウロパへ向け発射。ティラユールの能力は銃弾も生成可能なので、弾数は無限だ。

 ――反射は正面からだ。跳ね返す時、必ず銃弾のある方を向くから間違いない。ならば……

「乱れ撃つッ!!」

『“抜銃(ドロー):【(ラン)】”』

 カリストにも放った術式を発現させた。

 ティラユールの周囲のみならず、エウロパの周囲にも魔法陣が展開され、一斉射撃が行われた。

「面白い……!」

「なッ!?」

 エウロパは仰向けになっていた。

 ――窮極魔法【(ガン)】の射程範囲は、視界のすべてである。

(銃弾は速い。座標を定めるのは骨を折る。ならば……!)

『術式展開――窮極魔法【眼】:“印・【(ドン)】”』

 エウロパは背後の攻撃に弱い。しかし、ある程度補えるだけの、走力を持ち合わせている。それは彼が、獣竜族でも『地上の覇者』と呼ばれる無翼種であるからだ。エウロパはフリーと違う理由で翼を持たないのである。

 エウロパの術式で、銃弾の速度が遅くなり、蜂の巣を逃れた…………はずだった。

「……やれやれ」

 ――咄嗟にその方向を見たおかげで助かった。まだ、銃弾は残っている。

 体勢を立て直したエウロパは、周囲を見渡す。

「…………隠れられたか」

 エウロパが、自身に迫る銃弾を対処しようと仰向けになった時。一瞬でもティラユールから視線を逸らした瞬間、ティラユールは何処かに隠れてしまったようだ。

 一方で……。

 キラリと光るのは、砲身の長い、狙撃銃(スナイパーライフル)

 ティラユールは、静かにその時を待ち続けていた。彼が、後ろを向く瞬間を。

「――そうだ、そのまま見回せ」

 エウロパは背後を取らせぬようにと辺りを見回す素振りを見せる。しかし、それが仇となった。

 ティラユールは最初からエウロパの正面の位置にいた。すべては彼が周囲を見回すことを見越してのことだ。

「今度こそ、ブッ飛ばす……!」

 安全装置を解除し、引き金に指をかける。

 今一度スコープを覗き込み、エウロパが完全に背後を向いた瞬間を捉えた。

『術式展開――窮極魔法【銃】:“狙撃”』

 消音器(サイレンサー)の付いたそれは、エウロパに悟られることなく銃弾を解き放った。

「――死ね!! アタシの、勝ちだァァァ!!」

 寸分の狂いもなく、その銃弾はエウロパの後頭部目掛け飛んでいき、ついにその頭を貫いた――

 と思われた。

「……余所見、しているわよ?」

「は?」

 銃弾は彼女の眼前で静止。そのまま推進力を失ったそれは、カツンと落ちてしまった。

 その様子を目の当たりにしたティラユールは、えも言われぬ喪失感と、苛立ちを覚えた。

「な、んで…………アタシばっかりィィィィ!!!!」

 機関銃(マシンガン)を取り出し、怒りのままに撃ち放つ。

 しかし――

「あらあら、ムキになっちゃって。――離れないで」

「うゅ!?」

 彼女は、エウロパを抱き寄せ、迫り来る銃弾を見据えた。

 またしても、全ての銃弾は、彼女の目の前で止まり、やがて地面に転がったのである。

「あ、あなたは…………!!」

 エウロパは目を丸くした。

 無理もない。世界中の誰もが、彼女は死んでしまったと思っていたからだ。

「あ、死霊(アンデッド)じゃあ、ない、ですよね?」

 その衝撃たるや、知性が僅かに低下してしまうほど。

「あら? エウロパくんに限って、死霊と生きたヒトの区別もできないの? 本物よぉ」

「――ッ、死ね! 死に損ない!」

 ティラユールの怒りは収まることなく、アサルトライフルを取り出し、撃つ。

 しかし、どれだけ撃とうと、彼女には決して当たることはない。

「出てきなさい。ティラユールちゃん」

 ぐっと拳を握る。

 その瞬間、ティラユールの呼吸が妨げられた。

「ゴッ、が、あぁ、あ……」

 まるで物陰に殺虫剤を撒かれた虫のように、家屋から、這いずりながら悶えるティラユールが姿を現した。

「な、何を?」

「空気を薄くしたの」

「サラッとえげつないことしている!?」

「…………ッ、ハァッ! ゲホッ、ゲホッ!」

 姿を表したため、ネレイスは術式を解除。ティラユールは空気に有り付くことができた。

「エウロパくん、フランツェちゃんもいるのでしょう? そっちへ行ったら?」

「し、しかし……!」

「大丈夫。ティラユールちゃんは私に任せて。――それより急いで。フランツェちゃんは、“窮極”使いよ」

「……! …………分かりました。では、ご武運を!」

「頑張ってねぇー」

 エウロパはネレイスに一時の別れを告げると、フランツェと戦っているであろうイオのもとへ急いだ。


………

……


 ――そして現在に至る。

「植物を操る能力。形状や質量なども弄ることができる。短中長距離全てに対応しうる、万能型の固有術式……」

「…………な、なんなのよ。あの女といい、他人(ひと)の固有を、どうして(わか)るの!?」

「――ほぅ? 私だけでなく、イオも貴女の固有を見抜いたのですか?」

(疑問。嘘じゃないわ。本当に知らなかったという顔……。何なの、あの女……!)

「まぁ、それより、私の魔導領域【万華郷】は、簡単に言うと、とにかく跳ね返るのですよ」

 左眼の術式を発現し、魔弾を撃つ。

 それはフランツェの顔の横を素通りしたかと思うと、彼女の背後で反射し、上下左右関係なく跳ね返りまくる。しかし、それは一度たりとも、エウロパには掠りもしなかった。

「魔弾は反射で威力を増すという特徴があります。あまりにも跳ね返りすぎると質量や密度に体積が耐えかねて霧散してしまいますが、そこは私の演算能力に掛かっているといったところでしょうか」

「ッーーーー!!」

 その魔弾は、フランツェの右肩に当たっただけでなく、有り余る威力で貫いた。

(何が、起こったというの!? 右腕に、力が入らない……!)

「はぁっ!!」

 フランツェは術式を発現させ、エウロパを攻撃するが、彼の背後目掛けて飛び出したそれは、背中で跳ね返り、また別のところで跳ね返り、最終的にフランツェの腹を貫いた。

「ぅぐぅっ……!」

 吐血。彼女が着ている服が、紅に染まっていく。

『“絶対反射”』

「やれやれ、無駄なことを」

(は、反射した? 術式発現のためには、正面を向かないといけないはずでは?)

「――ならば!」

 しかし簡単には諦めない。

 フランツェは必死に考えた。そして導き出した打開策。

 力を振り絞り立ち上がると、空に展開した魔法陣に手を突っ込み、木の剣を取り出す。

(短距離で、背後を取る!)

 見た目にそぐわぬ速度でエウロパの背後に回ると、剣をエウロパの心臓の位置目掛けて突きを放った。

『術式展開――窮極魔法【眼】:“印・【(ワイ)】”』

 ところが、剣がぐにゃぐにゃに曲がり、フランツェの攻撃が失敗する。

「何故!? こちらを見ていないのに!」

「領域内では、私はすべての方向を視認できるのです。そして、私の術式射程範囲は視界に映るすべて。つまり、領域内での術式効果範囲は、この領域全体なのですよ……!」

 フランツェは目の前が真っ暗になった。

「残念ですが、ここまでです」

 エウロパはどこかあらぬ方を見て、呟いた。

 そんな彼の言葉など聞く耳を持たず、フランツェは術式を構築する。

『術式展…………』

 しかし、フランツェは倒れた。瞬きのうちに眉間を貫かれていた。即死だ。

「――忘れていませんか? 魔弾はまだ、生きている」

 フランツェの眉間を貫いてもなお領域内で跳ね返り続ける元気な魔弾は、エウロパに一度も当たることなく、反射増幅の限界を迎え、霧散してしまった。

 領域を解除し、元の空間に戻る。そこには、既に傷が完治していたイオがいた。

 エウロパはフランツェの亡骸を抱えてイオの前に置いた。

「死にたてホヤホヤですが、無理でしょうか?」

 イオの固有術式『究極魔法【癒】』は、生きている者にだけ治癒ができる。その力は凄まじく、例えば、心臓を貫かれても完全に死ぬ前に即座に治療してやることで、実質的な蘇生が可能となるのだが……。

 イオはフランツェの体に触れた。

「脳から死んでいるので、屍動物(ゾンビ)になりますが、どうしますか?」

「…………そうか」

 落胆するエウロパ。

「どうして、彼女を?」

 イオが尋ねる。

「彼女は、ネレイスさんの元部下なんだ。多分ね。実はネレイスさんはドラコに来ているのだが、彼女との再会が、こんな形になるのかと思うと、ね」

「……ごめんなさい。私が不甲斐ないばかりに」

「いや、気にしないでくれ。それよりもさっさと、魔族たちを処理しなければ」

「そう、ですね」

 エウロパはフランツェを安全な場所に置くと、イオとともに戦線に立ったのであった。


 一方、エウロパを助ける形で参戦した、元精霊王ネレイス・ヴァールハイトと現精霊王ネオ・ファルシュの配下で、第三幹部ティラユールとの戦いは、ネレイスの一方的に有利な展開で進んでいた。

 ティラユールは目の前にいる、本来存在するはずのない人物に、問いかける。

「何でテメェが生きてんだよ!」

 その質問に、ネレイスは困惑している様子。

「え、えぇ……? 何でって言われてもぉ……」

 そんなネレイスの隙を突いて、ティラユールは銃で2、3発ほど放った。

 しかし、やはりネレイスには届かない。

「何で当たらねェんだ、クソッ!」

「もう、ダメよ、人が話している最中に――」

「ンなことはどーでも良い! 何でお前に弾が当たらねェんだって聞いてんだよ!」

「あぁ、それはね……」

 ネレイスの顔から柔和な笑みが消え、目は細まり、不敵に口角が吊り上がる。

「『“隔たり”』。ティラユールちゃんと、私の間には、目に見えてるよりもずーっと長い距離の空間が圧縮されているの。言っている意味、分かる?」

 指で“隙間”を表現するような手真似をし、自身の術式を解説していく。

「だから――」

 ティラユールと距離を縮めていくネレイス。彼女の手を持つと、その銃を自身の眉間に向けた。

「私は常に、ティラユールちゃんの射程距離外にいるのよ」

「なッ!!」

 ティラユールに引き金を引かせ、銃弾が放たれる。しかし、それはネレイスの眉間に当たる直前で進まなくなり、やがて地面に転がった。ティラユールが何度も見た光景だ。

 ネレイスの固有術式『窮極魔法【(クウ)】』は、空間、空気を操作する能力を持つ。

 『“隔たり”』。ネレイスの説明通り、実際の距離の何倍もの距離分の空間を圧縮されたもの。あらゆる攻撃はネレイスに届くことはない。ちなみに、これはほとんど常時発動だ。

 『“隔離”』。対象を同一空間とは別の空間の中に入れることで、対象以外のいる空間での事象に干渉されない。この場合、術式や攻撃は対象をすり抜けるように飛んでいく。

 『“圧縮”』。『“隔たり”』はこの原理を利用している。空間や空気を圧縮する。この能力で解放された高圧力の空気弾は破壊力抜群。

 『“把握”』。空間、空気を掴む。これを応用して、空中で留まることができる。

 それらを聞いたティラユールは絶望の表情だ。

 だが、それは杞憂と言わんばかりに、次の瞬間不敵な笑みに変わった。

「問題ねェ」

「っ…………あらあら」

 気がつくと、額と後頭部に銃口が突きつけられていた。

 死んだはずの分身が、ネレイスの背後に立っていた。

「“分身”はアタシの精霊術だよ」

「ッ……!」

 ――完全な接射……!銃口を塞ぐのはあまりやりたくないが、術式なら問題ない。

 ネレイスは何か企んでいるようだが、それよりも早くティラユールは術式を発現する。

『“絶対射撃(アブソリュート・シューティング)”』

 ついに、ティラユールは相性最悪かと思われたネレイスを打ち破った。

 ――と思われた。

 ティラユールの銃が暴発したのだ。

「クッ、ソがぁぁぁ!!」

 負傷は免れたが、逆に大きな隙が生まれた。

「もう、ずるいじゃない。ティラユールちゃんだけ精霊術を使うなんて」

「ハッ……?」

 ティラユールの目の前にいたのは、青く透き通る液体のような髪で、上半身は裸。空中で胡座を描く美少年。

 膝に肩肘を突き、地面に尻を打ったティラユールを見下ろしていた。

 ネレイスの周囲には大小さまざまな水泡が浮いており、足下は同心円状に波紋が広がり、まるで水面に立っているようだ。

『“召喚(サモンズ)水大精霊(ウンディーネ)”』

 先まで思念体だったウンディーネの、完全顕現。

「ウンディーネちゃんの能力は、“水の状態変化”なのよ」

 水の3態。“液体”、“固体”、“気体”を意のままに生成、操作するものだ。

 しかし、この時ネレイスは、少し嘘をついていた。

 ウンディーネの本当の能力は、水を操ること。あくまでも水の3態操作は、その一環に過ぎない。

(氷で銃口を塞ぎやがった……!!)

「術式で生み出された銃でも、術式でなら対抗できるわ」

 術式による、暴発の誘発。

『チェックメイトだ』

 ネレイスの動きに連動するように、ウンディーネは指を鳴らす。

「ゴボッ…………!」

 液体を生成し、ネレイスの術式で空間に留める。

 ティラユールの口元が水で覆われ、呼吸が出来なくなる。

 水に触れようとするが、まるでスライムのようにプニプニとしており、退かすことができない。

 ティラユールの意識が溺れるのに、そこまで時間はかからなかった。

「ボゴゴ………ゴプ――」

 倒れた瞬間、ネレイスは術式を解除。

 安全な場所で寝かせ、立ち上がる。

「ごめんね」

 それだけ言い残すと、ネレイスはその場から去っていった。


◇◇◇


「――ハァ、ハァ、ハァ…………なかなか、やるじゃないか」

 ネオは肩で息をしながら、フリーを称えた。

 当のフリーは、手を握ったり開いたりして、感覚が生きているかを確認していた。実は、少しばかり攻撃が掠ってしまい、それが状態異常系の攻撃であったのだ。

 問題ないことを確認したフリーは、頬の傷を拭い、ネオを見据えた。

 ネオは自身の前に、二俣鉾を地面に突き刺し、突然語り始めた。

「もう気づいていると思うけど、僕の固有術式『窮極魔法【(レイ)】』は、“精霊術の対象を、精霊だけに絞らない”というものなんだ」

 ――好都合。なんとなく予想がついていたが、どういう風の吹き回しか、相手からタネを明かしてくれるとは。

 ネオが言った、『窮極魔法【霊】』の能力。もう少し詳しく説明すると、そもそも精霊術とは、『魔力と同等、あるいはそれ以上の力を持つ、“意思ある存在”の術式を利用して行使される術式』という、いわゆる“霊術”の一種であり、精霊術はその中でも、文字通り精霊の力を利用して発現される術式のことを指す。

 そんな精霊術、もとい(もと)となる精霊にはさまざまな能力があり、固有の術式を持っている者、属性そのものを持っている者と、大きく2つに分類できる。

 精霊術を行使できるのは、体内に精霊族の血を持つ者だけ。精霊はその血に導かれ、術師もまた精霊と惹かれ合う。

 術師は精霊に依代として身体――魂を与え、精霊術式を受け取る。霊術の総則『平等関係』によって繋がれるのだ。

 そこで、『窮極魔法【霊】』の能力を改めて述べると、“精霊術の対象を、精霊だけに絞らない”である。つまり、精霊術行使の際に必要な『精霊』を、『別の生物』に置き換えることができるのだ。

 彼の固有術式は、精霊術の上位互換とも呼べるもので、一方で裏を返せば、ネオは固有術式とは別に精霊術そのものは使用できない。あくまでも、ネオの場合、固有術式を介した精霊術だけである。

 ネオが対象の術式を、精霊術として獲得するためには、“契約の儀”が必要となる。

 彼の術式は、すでに始まっている。

「フリー、君の固有……万物を破壊する能力。それと僕の固有術式があれば、世界を獲れる……!」

 ネオの企みを知ってか知らずか、フリーは興味深そうに言った。

「ほう? 具体的には……?」

「【禁忌(タブー)】を使う。アレは僕が解放したんだけど、この術式で契約を結んだんだ。互いに不可侵であることを条件にね」

「それで【禁忌】の能力を得たわけか」

「あぁ、そうさ! ――それで、彼には暴れてもらう。彼の頼み事として、どうやら殺してもらいたいらしいんだよね」

 【禁忌】はその強さから世界に退屈し残る必要はないと思っていた。しかし一方で、戦いの愉悦の中で死にたいという破滅願望を持つが故、厄介な存在とされているのだ。

「結論から言うと、僕らがヒーローになるのさ。世界を恐怖と絶望から救い出す、英雄(ヒーロー)にね」

「奴の完全覚醒を促したのか」

「その通り」

 全ては八百長試合のため。そこでネオが目をつけたのは、フリーだ。フリーの固有術式ならば、完全覚醒状態の【禁忌】だろうと容易く撃破できる。そうすればネオは一躍世界の英雄として扱われ、【禁忌】は望み通り、戦いの中で死ぬことができる。

「フリー、君の力が必要なんだ! どうだい、僕と手を組まないか?」

『――2人で世界の英雄になろうぜ!』

 声高々に、ネオはフリーに言った。ネオの声が周囲に響き渡る。

 フリーは口角を緩めると、呟いた。

「俺は史上最強と謳われた。獣竜族という枠で生まれたたものの、翼も、角も無く、他の何も術式は会得できず、ただこの肉体と、全てを壊すこの能力(ちから)だけしか持たない俺が、最強らしい」

 ネオは尚も勝利の笑みを湛えてフリーの話を聞き流していた。

「丁度退屈していたところだ。世界の英雄とやらになってみるのも、悪くないだろうな」

「――それじゃあ……」

「ただ、貴様は必要ない」

「…………は?」

「貴様の考えていることは実に面白そうだ。だがな、俺は、他人の野望のためになんでもしてやるほど、安い男ではない。世界を獲るならば、俺1人で十二分だ」

 言葉を失った。

 浅はかなのはネオの方だった。彼はフリーを甘く見ていた。自惚れていた。

 しかしネオはその程度で折れる男ではない。

 心を冷静にし、地面に突き刺した二俣鉾に両手を置いた。

 ――その瞬間。

「ッ!?」

 フリーは目を見張った。突如としてネオから膨大な魔力が溢れ出したのだ。

 いよいよ底が見えてきたかと思われた矢先にこれだ。流石のフリーも身構える。

 ネオは怒りとも取れない、真顔で言った。

「“契約は破綻した”」

『――条件満了。契約破棄ノ手続キニ入ル』

 ネオは不敵な笑みを浮かべて、フリーに言う。

「この鉾。なぜこんなにもたくさんの刻印があるか、君は分かったかい?」

 ありったけの魔力をそれに流し込む。

 どの刻印だろうと関係なく、二俣鉾に刻まれた全ての紋様が、魔力によって光り輝きだす。

「全ての刻印は一つになる。そして、それによって生み出される、術式の極致……!」

 フリーは額を抑えた。深く長いため息を吐き、ギロリとネオを睨む。

「僕の術式を、身を以て体感するといい!!」

 ――自惚れ? 上等! ならば自惚れなりに確たる自信を以て、決着をつける……!! 


『術式展開――魔導領域【闇妖精域(スヴァルトアールヴヘイム)】』


 ネオの鉾を中心に、領域が展開される。

 不思議な展開のされ方で、一度ネオの背後から構築されていき、徐々にフリーの方へと広がっていく。

 ネオの魔力は完全に回復しており、さらに彼の周囲には紫色の光が数多漂っていた。

 不気味な雰囲気を放つ、夜の森の世界。それがネオの魔導領域『【闇妖精域】』である。

 その領域はついにフリーにまで到達し、あとは完全閉鎖を待つだけだった。

 その時、フリーはただむしゃくしゃしていた。

 額を抑えていた手は髪をかき上げ、頭をかかえる形となる。ぐしゃぐしゃと掻き乱し、何か吹っ切れたように振り下ろす。

 右の拳を硬く握り、目を閉じ、顔の前に持ってくる。

 ふぅ、と短く呼気し、開眼。ただ一言、ネオに告げた。

「――あまり俺を、煩わせるな……!!」

 そしてフリーは、自身の背後、(くう)を殴りつける。


『術式展開――魔導領域【空虚域(ギンヌンガガプ)】』


 全ては無に帰した。ネオの領域が、決壊する――

ステータス

〈フリー・アンノウン〉

・窮極魔法【壊】

・魔導領域【空虚域】


〈ネオ・ファルシュ〉

・窮極魔法【霊】(=精霊術)

・魔導領域【闇妖精域】


〈エウロパ〉

・窮極魔法【眼】

・魔導領域【万華郷】


〈フランツェ〉

・窮極魔法【樹】

・魔導領域【天達樹】


〈ティラユール〉

・究極魔法【銃】

・精霊術【分身】


〈ネレイス・ヴァールハイト〉

・窮極魔法【空】

・精霊術【水操作】

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