01 修行開始!
初投稿です。楽しんでいただけると幸いです。
突然爆発音のような轟音が鳴り響いた。土煙が濛濛と立ち上る。
絶海の孤島と呼ぶには大きく、大陸と呼ぶには小さい、そこは島国ドラコ。
住民の九割は、古代種と呼ばれ、多く、頭には二本の角が、背中からは竜の翼が生えている。人は彼らを獣竜族と呼ぶ。いわゆる、竜人だ。彼らは希少にして崇高、そして地球上最強の種族である。
立ち上る土煙。それはドラコの最高峰である火山からのものだ。
数千年前に幾度となく噴火を繰り返し、ドラコが誕生してから噴火の頻度は少なくなり、現在は死火山となっている。
その山に埋め込まれたかのように鎮座する城。
実はこの城、山を彫刻のように削られて出来ているのだ。自然を生かした建築は、まさに芸術である。絶海に浮かぶ秘境の地であることと相まって、ドラコは一種の観光名所となっていた。
穏やかで自然豊かなドラコ。
だからこそ、観光客は驚愕した様子で音の方を見る。
「な、なんだぁ!?」
「煙?ここの火山は死火山のはず…」
「魔族が襲ってきたのか!?」
と口々に声をあげて、パニックになっていた。
「またか…」
「フリー様だ。今日も容赦ないねぇ」
「日常茶飯事だよ。自然現象でもなんでもない」
「フリー様のお城、壊れないといいが…」
だが、獣竜族は呆れた様子だ。
この騒ぎの正体は、この国を治める王であり、史上最強の種族王、獣竜王フリー・アンノウンだった。
「立て。この程度で死ぬ貴様ではないだろう?」
獣竜王フリーは言った。
フリーの視線の先は、立ち上る土煙でよく見えないが、やがて煙が晴れると人影が現れた。
蒼白の頭髪は短く、狼の耳と尾を持つ少女。
彼女の名はシリウス・ブラウ。この島で唯一の人狼族である。獣人の一種だ。
「痛ェ…」
フリーの強烈な一撃をまともに食らったシリウスは、山の斜面まで飛ばされ、激突したのだった。
(本気ではないとはいえ、俺の攻撃を耐えたか…。普通はまともに立てないんだが)
砂まみれで汚れているシリウスだが、大きな傷は残っていない。
受身だけは上手い奴だ。と、フリーは呆れながらも感心していた。
「シリウス、貴様の目標は何か、分かっているな?」
シリウスが立ち上がったのを確認するなり、問いかける。
口元を拭い、シリウスは言う。
「王になる…!」
「そうだ。貴様は人狼の王になる。だが、その程度では王とは言えないな」
「言われなくても分かってるよ」
吐き捨てるように、シリウスはフリーに言う。
それに言い返すでもなく、フリーはシリウスの欠点を指摘した。
「次手の組み立てが出来ていない」
「じて?」
シリウスは首を傾げた。
フリーは続ける。
「一度攻撃しただけで満足している。引くなり、守りに入るなりしなければ、痛い目を見るぞ」
戦闘において、休んでいる暇などほぼない。当然、フリーまでとは行かずとも、強者との対戦となれば、一撃で仕留めるなど、なかなか出来たものではない。
仕留め損なえば、相手は反撃に来る。しかし、シリウスの場合、相手の動きを待っているだけである。一瞬の油断や、隙を作ることは、戦闘において命取りとなるのだ。
「頭使うの苦手なんだけど…」
項垂れるシリウス。フリーはそれを叱責した。
「貴様は馬鹿か?頭を使わない戦闘など、この世には存在しない。常に互いに探り合い、裏をかく。相手の意表を突き、調子を崩し、優位に立つ。基本中の基本だ」
思案するシリウス。フリーの言葉を頭の中で整理する。
「つまり、素早い次手の組み立てが、戦闘で優位に立つコツってことか?」
「そうだ。それを踏まえて、俺に攻撃してみろ」
煙が完全に晴れた。シリウスの目つきが変わる。
集中力を高め、短く呼気し、地面を蹴る。
瞬きのうちにフリーの懐に来ると、胸元めがけ拳を放った。
ーーが、フリーはひらりと身を翻し、飛び上がり、その勢いでシリウスのうなじに蹴りを飛ばす。
その時、フリーの眼前に迫ったのは、シリウスの足だ。シリウスもまた、空振った勢いのまま、回し蹴りを放ってきたのである。
「クハッ!」
獰猛に笑うフリー。飛んでくる足を、片手で受け止める。
「フッ…!」
足がフリーの手に触れた瞬間、シリウスは全体重を左足に込めた。
空中にいるフリーは、強化もしていない、シリウスの素の力でも押し切ることができた。
シリウスの全体重がのし掛かった回し蹴りに押され、フリーの体は飛ばされる。
持ち前の身体能力で立て直したフリーだが、シリウスは先の一手に確かな手応えを感じていた。
「見事だ。あえて左側を攻撃してきたのも、左足での蹴りに繋げるためだな」
珍しく、シリウスを褒めた。フリーとしては、相変わらず自分の反撃を受けて、シリウスが吹っ飛ばされると思っていたのだろう。
「右に避けてくれなかったら、終わってたけどな」
服の埃を払い、シリウスは言った。
この時のシリウスは、フリーが左側に避けていれば、本当に何も撃つ手が無かったのだろう。
最初にしては、なかなかの奇手だった。とフリーは感心していた。
太陽はすでに真上を通り越し、やがて西の海に沈もうとしている。
そろそろ…とフリーはシリウスに告げた。
「今日はここまでだ。この感覚を忘れるな」
「分かってるよ!ありがとうございました!」
一礼するシリウス。踵を返すと、風のように山を降りていった。
「さて、次は“術式”を教えてやるか」
そう呟くフリー。シリウスの後を追うように、城に戻るのであった。
ステータス
〈シリウス・ブラウ〉
No data
〈フリー・アンノウン〉
No data




