生き残り魔女の恋
魔女のミラ(17歳)と元王子のルーク(22歳)は医術を生業とし順調に旅をしていた。魔女を排除する東の果ての国から、魔女を知らない西の果ての国まで。
ミラと街道を歩きながらルークの頭にある疑問が渦巻いていた。
『ミラは俺のことを受け入れてくれているがどんな対象としてなんだ?』
かれこれ1時間ほど前の食事の際、ルークがミラの頬についた汚れを拭いてあげた。
「ありがとう、ルークお父さんみたいだね」
屈託のない笑顔でミラはルークに言った。
『おれはミラに隣にいさせてくれと言った。ミラも俺と離れることは考えられないと言った。…ミラは異性としてではなく家族的なものとしてだったのか⁉』
ルークの顔が渋くなっていく。
「ルークどうしたの?」
「…何でもないよ」
ルークは微笑みミラの頭を撫でる。
『12歳で親と別れ、約2年間1人で暮らし、その後も狼の俺といたんじゃ難しいのか…』
頭をクシャクシャとかきながら空を見上げる。
「変なルーク」
ミラはルークを見ながら呟いた。
「ミラ、この指輪可愛いな。買おう」
ミラに意識してもらおうと次の日からルークは行動を起こす。
「いらない。お金の無駄遣いだよ」
「う"…」
ルークも15歳で狼になってしまっていたため上手いアプローチ方法を思いつかない。しかも昔は町で生活していたミラの方が金銭感覚がしっかりしていた。
『ならば…』
「ミラ、靴擦れができそうだったろ?背負おうか?」
「魔法で治したよ。ありがとう」
「そうか…」
『ミラの魔法はやはりすごいな…って、俺は用無しか…』
お風呂上がりには
「ミラ、髪の毛を拭こうか?」
「ありがとう、昔よくお母さんにも拭いてもらったなぁ」
「そうか…」
『ああ、ミラいい匂いがするなぁ…って、これも違うか…』
寝るときには
「ミラ、今日は一緒に寝ようか」
「うん。ルークは温かいね。おやすみなさい」
「おやすみ…」
『ミラはやっぱり可愛いなぁ…って、俺たち22歳と17歳だよな…』
ルークは自分にひっついて寝るミラの頭を撫でながら天井を哀愁に満ちた目で見つめていた。
ミラにベタ惚れなルークのアプローチはその後も続いたが、ミラの反応は変わらなかった。
ある夜、焦れたルークが意を決っする。
『もう直接アプローチするしかない!』
宿で荷物の整理をしているミラにルークは声をかける。
「ミラ、俺はミラが好きだ」
「ん、知ってるよ。私も好き」
ミラが金色の瞳を細めながら微笑む。
『かっ可愛い…って違う!多分ミラの様子だとこの好きは友達とか家族への好きだ…もっとはっきり言おう』
ルークはミラの笑顔に見惚れながらも、もう一度アプローチする。
「俺の好きはミラを女性として愛していると言うことだ」
ルークがミラを真っ直ぐに見つめ気持ちを伝える。
「だから、私もだって。こういうことでしょ?」
ミラの顔が近づきルークの唇にミラの唇が重なる。
ルークの顔が真っ赤になる。ミラも頬を染めながら唇を離す。
「みっミラ…」
「…合ってる?」
ミラが頬を染め上目遣いで恥ずかしそうにルークを見つめる。
『かっ可愛すぎる…ってそうじゃなくて、ミラは俺のこと男としてみてくれていたのか⁉』
「合ってる…」
「ひゃっ」
ルークは嬉しさのあまりミラをぎゅっと抱きしめる。ミラも応えるようにルークを抱きしめた。
「ミラに何だか異性として意識されていないような気がして不安だった」
「…どうして?」
「…お父さん、お母さんみたいって言われたから」
「ふふっ、ルークがいてくれるからお父さん達を思い出せるんだよ。もしも、ルークがいなかったら寂しすぎて思い出せないよ」
ルークの胸に顔を埋めミラが幸せそうに話す。
「…あと、何だか…その…俺に対してあまり異性として接してくれていない気がして…」
顔を赤くしたルークがミラの耳元でボソボソと呟くように言う。
「それは…魔法の本の最後にお母さんからの言葉があって…私は好きなものに一直線に行っちゃうから好きな人が出来たら嫌われないように遠慮がちにしときなさいって…だから…」
ミラも頬から耳を赤くしボソボソと答える。
ミラの赤くなった耳にルークはキスをし、ミラの肩を持つ。熱をもったサファイアブルーの瞳でミラの金色の瞳を見つめる。
「ミラのこと愛してる。これからもずっと一緒にいていいか」
「私も愛してる。私こそずっと一緒にいさせて」
熱を持ち揺るぎない瞳でルークを見つめるミラに、ルークが優しくキスをした。