そしてやがて『e=0』へ
~e=1。ぶつかった物体同士、元の相対速度を維持したまま離れていく。
e=0。ぶつかった物体同士がくっつき、運動を止める。
どちらかを選べといわれたら、僕は後者を選択するね。
だって、折角ぶつかったのに、そのまま離れていくだなんて、
寂しいじゃないか。会者定離なんて死ぬ時だけで十分さ。~
彼と彼女は赤の他人。
近づかず、されども離れず
両者の相対速度はゼロのまま
互いの距離も同じまま
平行な線は交わる事無く
ただわが道を行くのみ
ぶつからない二人の運動式に
反発係数の入る余地など無い
彼と彼女はキニナル仲。
じわじわと、けれど確実に近づく
両者の相対速度は下がりだし、
やがて距離を詰めていく
傾きを得た線は進路を変え
交点を目指して歩み始める
いずれはぶつかる二人の運動式に
反発係数が顔を覗かせ始める
ようやく出会った二人の恋人
ぶつかる想いの衝撃は
運動式を全く変えてしまった
互いに作用しあうエンティティーは
もう元の状態に戻れない
だけども別れた二人の恋人
離れる想いの喪失感は
運動式を全く変えてしまった
独立してしまったエンティティーは
もう元の状態に戻れない
ぶつかった二人は、悲しくも離れていく。
反発係数>1から導かれてしまった、悲しい結果。
ただ、彼は、彼女がやっぱり好き。
これは、運動式から導き出されなかった結果。
そして、彼女も、彼がやっぱり好き。
これも、運動式から導かれなかった結果。
もしも恋が物理的事象なら、
秋の扇は見向きもされず
一時の別れは永久のものとなる
けれど、恋は形而上学的事象、
雨が降れば地固めが起きる
一時のすれ違いは永遠になるとは限らない
彼と彼女は相思相愛。
近づかず、そして離れもせず
両者の相対速度はゼロになり
二人を隔てる距離が無くなる
軌道修正した線は重なり合い
二本共に同じ道を行く
くっついたままの二人の運動式では
遂に反発係数はゼロになる