自衛官足らないんだってさ。職業選択の自由について
先日、とある動画を見ていた際に、CIA職員が世襲だと聞きまして、お前はいったい何を見てるんだという話なんですが、むしろ、その動画から、考えてみれば世襲でないと困る専門的な職業って、結構多くあるなと気付かされました。
こんにちは、ふりがなです。
今回は、近代思想から始まった、職業選択自由の側面について書こうかなと思います。
私は、一度この手のテーマで作品を書いた事がありまして、直接職業選択の自由について書いた物ではないのですが、その内容は、近代まで、離農対策は国家の大前提でしたよという物です。
作品の名前は、世界一解りやすい農業の補助金の話~ですね。
平たく言えば、肥料の三大要素の発見か、ハーバーボッシュ法(1906)の完成まで、離農対策無しで、職業選択の自由は、成立しようがないというという物だったりします。
では、その離農対策に何を選ぶのかという話に、歴史では、身分制度が出て来るんですよね。
これは、細かく書いてしまえば、他の産業に比較して土地を多く使い、かつ、たくさんの人手を必要としない産業である農業が、都市を大部分を形成する、三次産業と非常に相性が悪いという特性を持っているため、都市から離れたほうが都合の良いせいです。
逆に、小さな土地で大量の労働力を必要とする、労働集約的農業は、必ずしも三次産業と相性が悪いとは言えないのですが。
例えば、大量の労働者を必要とする、輪栽式農業は都市と相性がよく、産業革命のきっかけとなりました。
近代までの日本の水田も、労働者を大量に必要とする農業ですから、都市と相性が悪いとは言えません。
まぁ、農地を出来るだけ使わずに、賃金を貰う人がたくさん必要な農業なら、三次産業とも相性良いよね、ならばその逆では?という簡単な物です。
天候次第で収入も安定しない、戦争に人手を取られる、その上(農業と相性の悪い)三次産業もない、夢の無いこんな村なんて出て、都会に行ってやる!
一方で、都市は農村から得た税収による財政政策もあり、二次産業や三次産業も発展した所でした。
人類の文化発展は、都市と共にありです。
そりゃ、職業選択の自由があったら、みんな都市に行きますよね。
貨幣経済の発展の課程で、離農問題が出て来るのは、当然すぎる事でした。
この流れは、現代の日本も変わりません。
お隣中国でも、急激な格差の拡大で、離農問題が取りだたされています。
噂では都市の失業者を、強制的に農村に帰したなんて話もありました。
何?農民が農地を放棄していなくなった?
ならば、奴隷を使えば良いじゃない!
もしくは農民の移動を禁止するか!
近代以前の国家では、農業が崩壊しては、国家を維持出来ませんでした。
冒頭で書いたように、食糧供給能力に問題のある近代までは、離農対策として、職業選択の自由、更には人の移動の自由の保障は、移動の安全が確保出来るか以前の問題で成立しないのです。
離農対策は、国家の最重要課題でした。
離農対策が歴史的にどう落ち着いたのかは、件の作品を読んで貰うとして、この離農問題が、例えば他の産業で起きたならばという話が、自衛官の不足問題になります。
ですから、徴兵制の話が昨今出て来ているのかなと、私は思います。
必然的に徴兵制度は、物理的な制約面を理由にした話になるハズなのですが、どうも、建前の話しか取りだたされていないように感じます。
近年、他国も始めたからだとか、若者の愛国心などの精神的な話を、徴兵制度の根拠では聞いたりします。
政治不信の昨今の中、建前だけで議論をしても、ますます政治不信が募るだけだと私は思うのですが、皆さんはどう思うでしょうか。
自衛隊にとってのハーバーボッシュ法が出来れば、徴兵制度は回避出来るのでしょうけれど。
徴兵制度の問題は、まず、間違いなく晩婚化が進むこと、これは徴兵制度のあるスイスの出生率を見て解る通り、そこまで大きな問題にはならないかもしれませんが、日本の低出生率にトドメを指す可能性があります。
※スイスは男性だけというのが大きな要因か
次に、軍隊は経済に役に立たない事です。
かつての米ソの軍拡競争では、米がソ連を巻き込んで、一方的にソ連を破綻に追い込んだとの論調が今でさえありますが、軍拡では明らかに米も悪性インフレを患っており、米ドル通貨切り下げ、日本の米国債の引き受けを鑑みれば、実質米ソは共倒れだったと見る方が正しいでしょう。
そして、冷戦のその間に日本は、驚異的な経済成長を遂げます。
強くなりすぎた他先進各国の労働組合のせいとする論調もありますが、仮に兵役を2年間として、若者の2年間は思ったよりも、技術への習得に影響が多きかったのではと私は考えます。
日本人の若者が働いて技術を習得していた間に、アメリカ人の若者は戦地に送られていたのですから、そりゃ差くらいつくという話です。
単純に、徴兵制度を財政政策として考えても、自国内の産業を疎かにして経済成長は出来ません。
徴兵制度は、人足らずの今、各産業に少なからず影響を与える事になるでしょう。
それでも、自衛官が足らないという物理的な制約面から、どの道少子化で維持できないという所には目をつぶって、近い将来、私達は日本で、徴兵制度が再び成立するか否かの場面に突き当たる事になるでしょう。
これは、なし崩しで可決されつつある日本の移民政策と同じリソースの問題ですから、意外と確度の高い予想です。
というか、ここまで読んで、職業選択の自由の成立条件をお解りになった方もいるでしょう。
徴兵制度は職業選択の自由に反しないと言う人も、中にはいるでしょうが、その実態は、国家の前提には、なにが必要なのかという完全に同等の問題なのです。
果たして、自衛官の不足問題で、きちんとした議論は成されるのでしょうか。
各国で右派が台頭し、民主主義の限界について問われてきているようですが、繊細な問題だからといって、そもそも議論さえしないで、法案を通してしまう。
そのような体制が、果たして民主主義と呼べるのか。
同問題は、私達の政治体制を問われるような問題なのかもしれません。
ロボは日本を救うのか?