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私が直々にぶちのめす……予定だった

すみません、ちょっと長めです。

何かあったときに皆さんにお知らせしやすいかとTwitterのアカウントを作ってみました。今のところ、大したことは載せていませんが。


今回のあらすじ

「貴様らに逮捕状が出ている」

「粗茶ですが」

「あ、お気遣いどうも」

「……それで、貴様らに逮捕状が──」

「こちらお茶請けです」

「あ、どうも」

 血を吸い終えたリンはノーラにお礼を言うと、早速ステータスを確認する。


~~~~~


リン


混合種(キメラ)(+ヴァンパイア・ロード)


Lv.42


所持金:471,392


HP:433/433[82(+351)]

MP:132/132[82(+50)]


STR:278[47(+231)]

VIT:65[47(+18)]

INT:68[47(+21)]

RES:70[47(+23)]

AGI:276[47(+229)]

DEX:252[47(+205)]


装備

武器:

頭:怨嗟の封視幕

胴:怨嗟の黒衣

手:

足:革の靴


スキル:

【遺伝子組み換え】【悪食】


【超再生】【血液操作】【不死者】


称号:

【虐殺者】【格上殺し】【殲滅者】【殺人鬼】【ギルドマスター】〔ダンジョン単独踏破者〕〔マスコットキャラクター〕


保有遺伝子:

森精種(エルフ)】【機甲種(オートマタ)】【天翼種(ケイレム)】【ゴブリンロード】【シャドウウルフ】【レッサーワイバーン】【ロック鳥】【腐蝕竜】【ヴァンパイア・ロード】


~~~~~


【超再生】──時間経過と共にHP及び部位欠損を回復する。

【血液操作】──自身の血液を意のままに操る。発動中はHPの最大値が半分になる。使用後は最大値は元に戻るが、回復はしない。

【不死者】──自身への回復魔法、状態異常、即死を無効化する。日光を浴びるとダメージが入る。


 因みに日光に関してだが、IRO内の昼夜は10時間おきに入れ替わる。その為、現実世界とは一日当たり4時間ほどズレが生じている。これにより、一定の時間帯しかゲームを出来ない人でも、昼夜両方の世界を楽しめるようになっていた。


「おおっ! ちゃんと遺伝子入手出来た! けど【ヴァンパイア・ロード】?」

「はい。私の種族は吸血鬼の王、【ヴァンパイア・ロード】です」

「吸血鬼の王様がメイドかよ……」


 チンピラBが何やら言っているが、リンはノーラの発言に小首を傾げる。


「種族の選択肢の中にそんなのあったっけ?」

「いえ、恐らくマスターが大金をつぎ込んだので勝手に上位種族に変えられたのでしょう。私のレベルも50ありますし」

「……え?」


 嫌な予感がしてステータスを確認し直す。すると所持金の欄の桁が明らかに減っている事に気づく。


「じゅ、十万と百万を間違えた……ていうか私よりレベル上だし」

「いや、そりゃそうだろ。今一番レベルの高いプレイヤーが44のはずだからな。つうか百万って……」

「そうなの? じゃあ私も結構上の方かな。42だし」

「は? 何お前、そんなにレベル高かったの?」

「うん。……っと、もう0時か。私、そろそろ寝なきゃ」

「おう、もうそんな時間か。じゃあここを拠点登録しとけよ」

「拠点登録?」


 知らない単語にリンが聞き返す。


「次ログインしたときに、ここのギルドホームからスタート出来るようにするんだ。システムウィンドウの設定画面から登録出来る」

「へぇー」


 チンピラBの話を聞きながらシステムウィンドウを操作すると、言われた通りに拠点を変更する。因みに拠点は町中しか設定出来ない。そのまま他の設定項目も見ていくと、幾つか気になるものを見つける。


「ねえ、この“感覚レベル”って何?」

「それで触覚の再現度を調整出来んだよ。低過ぎると物を触った感覚とかが無くなっちまうが、あんまり高いまんまだと敵を切った時にその感触が全部わかっちまうんだ。この辺は人によって許容範囲が変わってくるからな」

「あー、骨砕いたときとかのやつかぁ」

「ほ、骨を……?」


 ぶっちゃけ、特に嫌悪感があったわけでもないので、取り合えずそのままにしておく。その下の“残酷描写表現レベル”も最大値のままスルー(高いほどグロい)。


「それと、この“変態時演出”は? 何か“ファンタジー”と“リアル”の選択肢があるんだけど」

「えーっと、それは混合種(キメラ)専用の設定だな。良くは知らんが身体の形が変わるときの演出を変えられるらしいぞ?」

「へぇ。ちょっと気になるなぁ」


 今は“ファンタジー”が選択されているので、身体の端から空気に溶けていくような、今までのあれがそうだったのだろう。リンは試しに“リアル”に変更し、【ヴァンパイア・ロード】に極振りしていた構成遺伝子の3割ほどを【ロック鳥】に移してみる。


 すると、彼女の皮膚の下でゴキゴキと骨が急激に軋み、骨骼を作り替えていく。そして、ブチブチッ!と音をたて、皮膚を裂くようにして巨大な翼が姿を現した。


「……よし、これでいこう!」

「いやいやいや! 滅茶苦茶キモいしグロいわ! 何か不気味に痙攣してたぞ!?」


 そうこうしている間にかなり時間が経ってしまった。リンは周囲にいた者たちに挨拶を済ませログアウトする。


 余談だがその日、琳花はノーラの温もりや柔らかな感触が脳裏から離れず、中々寝付けなかった。




***




 翌日、学校から帰宅した琳花は早速IROにログインする。初めはそこまで乗り気ではなかったのに、今ではすっかり嵌まってしまった。


 昨日の設定通りギルドホームのエントランスにイン出来た事に若干の感動を覚えつつ、今日は何をしようかと辺りを見回す。


「そういえばこのゲームってRPGなんだし、クエストみたいなのってないのかな?」


 リンが唸っていると、そこへ禿頭を輝かせながらチンピラBがやって来る。


「あ、丁度良い所に。ちょっと聞きたいんだけど、IROってクエストとかってないの?」

「おっす、マスター。クエストってーか、依頼ならこの町の中央広場の掲示板に依頼表があるぞ。そこで依頼を探して、依頼主のとこに話を聞きに行くって流れらしい」

「そうなんだ。でもその“らしい”ってチンピラは依頼受けた事ないの?」


 そう言うと、チンピラBは「受けた事はないが、そう言うと語弊があるかもな」と何やら言葉に含みを持たせる。


「俺たちは普通の依頼は受けれないか、仮に受けられても成功にはならないんだよ」

「え? どういう事?」


 何でもPKを繰り返している者は依頼を受けようとすると依頼主が騎士団に通報、そして敢えなく御用となるらしい。他にも騎士団の詰め所や王城付近、神殿を彷徨(うろつ)いていると面倒な事になるとか。


「じゃあ私たちって依頼は一切受けれないの?」

「いや、普通の(・・・)依頼だけだ」

「普通じゃない依頼?……ああ、何か分かったかも」

「そういう事だ。公に出来ないような後ろ暗いものなら問題なく受けれる。依頼表は広場じゃなくてスラムの近くの酒場だがな」

「へぇ~。試しに行ってみようかな。チンピラ、この後予定ある? 良かったら一緒に来て欲しいんだけど」

「うーん……いや、いいぜ。お前が戦ってるところとか見てみたいしな」

「やった。じゃあ行こう!」


 そう言って話が纏まったとき、突然ドンドンと入り口のドアが叩かれた。

 リンとチンピラは思わず顔を見合わせる。ギルドメンバーはノックなどしない。だが他に昨日新設されたばかりのここを知っている者などいるとは思えない。つまりここのドアをノックする人間などいないはずなのだ。

 周囲にいた他のメンバーたちも困惑の表情だ。

 ドアの一番近くにいたリンは、戸惑いながらもその扉を開ける。

 すると目の前に銀に輝くフルプレートの鎧で身を包んだ4人の男が見える。


(あ、これは良くないパターンだ……。そんな気がする)


「我々はリーズ王国騎士団の者だ。昨夜、怪しげな大規模集団がこの辺りを彷徨(うろつ)いていたという報告があってな。周囲を調べていたらここを見つけたのだ」


 リーズ王国騎士団というのは言ってしまえば警察と自衛隊を足したようなものだ。この国の戦力そのものであり、治安を守る為の機関でもある。

 とまれ、その騎士が来たとの事だが、これは実に不味い。PKの集まりであるここは、言わば全員が(すね)に傷がある者たちだ。

 案の定、入り口からホームの中を覗いた騎士たちが驚愕の声を上げる。


「なっ、貴様らは指名手配中の……!?」


 その言葉は誰を指しているのか、あるいは全員か。メンバーたちを見た騎士たちは血相を変えた。


「おい、カイルは増援を呼びに行け!」

「はっ!」


 カイルと呼ばれた男が急いで去っていこうとする。だが──


「どちらへ?」

「にひひ。逃がさないよー!」

「お前に行かれちゃ面倒なんでな」


 ラスプ、カナ、ジンの3人が行く手を阻む。3人ともナイフと銃、日本刀を持っており、既に戦闘体勢だ。


「き、貴様らは……最重要指名手配犯の……! クソッ、抜剣! 我々だけでの対抗は困難だ。何としても本部に報告するぞ!!」


 他のメンバーたちもホームから出てくると、自分も混ぜろと、PK特有の強烈な殺気を放ち始める。


 大抵のRPGでは町中での戦闘は出来ない。しようとしてもダメージが入らなかったり、そもそも戦闘行為事態が取れないようになっていたりする。

 このIROでも基本的にプレイヤー間(・・・・・・)でのダメージは入らない。例外は、両者が合意した“決闘”のみだ。

 ところが相手がNPCになると、このシステムから外れる事になる。与ダメージも被ダメージも普通に通る。もちろん以前ノーラが言ったように、奴隷や支配下にあるNPCを痛め付けると即座に警告が飛んでくる。しかしそれ以外の一般人を攻撃すると、騎士が駆け付けてくるのだ。

 つまり一般のNPC、延いては騎士に対しての戦闘行為は、システム上は禁止されているものではないという事だ。


 とまれ、どうやら荒事は避けられないらしい。何とか穏便に事を済ませられないかと思案していたリンは溜め息をつく。


「まあ、隠すのは良くないって学んだばっかりだしね」


 折角のイベントだ。なるようになれの精神で楽しもう。


(そうだ、良い機会だしRPとかしてみようかな? マスターだしそれっぽい威厳とかあったほうが良いよね)


 リンは騎士たちを威圧するように一歩前に出る。すると、全員がこちらに視線を向けてくる。リンは嘲笑するように口元を歪めた。


「ごきげんよう畜生共。私がこのギルド“退廃の瞳”のマスターよ。実は貴方たちがこのギルドの最初のお客様なの。喜ぶと良いわ」

「え、あんた誰?」


 隣のチンピラが空気を読んでくれないが、一先ず無視する。これが終わったら適当にフィールドに誘い出して殺そう。

 とまれ、今はこの騎士団たちの相手だ。


「それと帰るのは少し待ってちょうだい。碌にもてなしも出来ないとあってはギルドの沽券に関わるものね」


 そこで一度言葉を止め、目隠しを取る。更に構成遺伝子を少しだけ操作してロック鳥の左翼を生やす。状況を鑑みるに、これだけで十分だろう。

 バサリと翼を広げ、見下すように重瞳を歪める。


「私を含め、この場の全員で盛大にもてなしてあげるわ……!」

「ひっ! ち、“重瞳の悪魔”……!!?」

「何でこんなところに……!」

「う、狼狽えるな! 何としても情報を持ち帰るんだ! 行くぞ!!」


 それを合図に騎士たちが走り出す。敵の最も少ない、後ろの路地へ。

 無理矢理道を切り開き、一人だけでも情報を持ち帰らせようという作戦だ。

 相手が普通のならず者の集団なら1つの作戦足り得ただろう。そもそもエリートたる騎士団の彼らなら、この人数差でも善戦出来たかもしれない。

 だが、相手は対人戦のエキスパート、PKのプロたちだ。彼らを相手に背中を見せるというその行為は正しく愚行だ。


 口元を三日月のように歪めた彼らは、一斉に獲物に飛びかかる。騎士たちはやむを得ず反転し応戦する。この反応の良さは流石と言うべきだろう。

 だが一度背中を見せた代償は大きい。すんでのところで防いだ初撃は深く入り込まれ、騎士たちは無理な体勢を強いられた。

 何とか体勢を立て直そうとするが、それを許す者はここにはいない。短剣が、斧が、ナイフが、鉈が、矢が、入れ替り立ち替りに騎士たちを襲う。

 なんとか致命傷だけは防ぐものの、身体の至るところに傷がついていく。

 残念だが、彼らに出来る事は何もなかった。ただひたすらに攻撃に耐える。それは彼らの、騎士としての意地だった。


 そうしてどれだけの時間が経ったか。突然、辺りに物々しい無数の足音が響いてきた。


「おい! そこで何をっ──お前たち! 無事か!?」


 現れたのは、4人と同じ装備を来た兵士たちだった。その数20はいる。

 その中の指揮官と思われる男は“退廃の瞳”の面々に襲われているのを見て驚愕し、そして憤る。


「くっ、よくも俺の部下たちを……! 全員抜剣、大盾隊を最前列に奴等を包囲しろ! ただし決して仕留めようとはするな! 足止めする事だけを考えろ!!」


 矢継ぎ早に指示を出す指揮官は、同時に隣の騎士に目配せをする。

 すると、その意を汲み取った騎士は自身のスキルを発動させ、空に火の玉を飛ばす。その火球はある程度の高さまで上がると、大きな音と光を放った。


 どうやら仲間に情報を伝える為の信号だったらしい。それを悟ったリンは「うわー、何かどんどん事が大事(おおごと)になってくなー」と現実逃避気味に思う。


(にしても助けに来た仲間が更に助けを呼ぶのか……何て回りくどい……てか私、まだ何もしてない気が)


 しかしここまで来た手前、もはや引き返す事は出来ない。このまま行き着くところまで行くしかないのだ。


「あら。敵わないと悟ってお仲間でも呼んだのかしら? 涙ぐましい努力だけど、戦う前から戦力差を理解できた事は評価出来るわね」

「ちっ……。それが分かっていて何故お前たちは攻撃してこない? もうじき団長が200人の騎士たちを連れて来る。今この状況を打開出来ねばお前たちに未来はないぞ」


 リンは引き続き威圧的な表情を崩さない。だが、彼女は気付かなかった。周囲のメンバーたちが「あれ? ノリでやってたけど、何か思ってたよりヤバくなってきてない?」と慌て始めている事に。

 故に彼女は更に煽っていく。


「あはははっ! 本当に滑稽ね、貴方。聞いてもいない事をぺらぺらと喋って」

「なっ、何だと──!?」

「それに取るに足らない玩具が200も来たところで何も変わらない。玩具がたくさん貰えると聞いてはしゃぐのは子どもだけよ」


 子どもの(くだり)を聞いてチンピラ共がリンの方をまじまじと見つめてくるがやはり無視だ。あとで絶対泣かせてやる。


 一方の指揮官はもう顔が真っ赤だ。茹で蛸のようになっている。だがちゃんと冷静さは残っているようで、怒りに身を任せる事なくしっかり包囲を維持し続けていた。

皆様、誤字修正やミスの指摘ありがとうございます。気を付けているつもりなのですが、己の不甲斐なさを痛感します。

こんな拙文ではありますが、少しでも楽しんで頂ければ嬉しいです。

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