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ハヤト教、入信者募集中

ハヤト教入信者の声


素晴らしいです。ハヤト教に入り、毎日お布施を渡すようになってから、学力が上がり、体力もつきました! 更に以前は友達すら一人もいなかったのに恋人まで出来て、今ではクラスの人気者です!


ハヤト教に入ってから、何だか頭がスッキリしたような気分になり、仕事がとても捗ります。上司や同僚との対人関係も良好で、最近昇進する事に。これもハヤト様のおかげです。


※個人の意見です※

 IROを始めると最初にプレイヤーたちを歓迎する【城下町】。多くの人々が行き交う活気に満ちたこの町の一角には、大規模な闘技場がある。

 普段は馬鹿に出来ない額の維持費を持っていくだけだが、この度ようやくその本領を発揮するときがきた。


「さあ皆さんお待たせ致しました! まもなくハヤト教主催、パーティー対抗戦決勝リーグ開幕です!!」

「「「オオーーーー!!!」」」


 放送席から拡張された声が発せられ、場内に大歓声が響き渡る。

 同時に、IROの運営はこの世界では宗教団体として扱われており、最高責任者が神格化している事が分かる。ちなみに最高責任者の名前は村崎勇人(むらさきはやと)だ。


「司会は一般募集の枠を見事勝ち取ったこの私、ナタリーが務めさせて頂きます! そして! 本日の審判はこのリーズ王国騎士団副団長、レーナ・ファルコット様です!!」


 その紹介と共に白銀の鎧を身に纏った、金髪の女性──レーナが放送席から下のリング内へ飛び降りた。




「あれ? あの人この間ギルドに来た人に似てない?」


 レーナの姿を見たリンが声を上げる。


「似てるも何もあれは同一人物だ。騎士団の副団長だっつってただろうが」

「あー、そうだっけ?」


 ガクが呆れた表情を見せる。

 レーナが「正々堂々と~」云々ありふれたありがたいお言葉を垂れ流しているが、リンもガクも真面目に聞く気はない。ラスプだけは、何か重要な事を話すかもしれないと一応聞く耳は持っていた。




「それでは決勝リーグ、トーナメント表の開示を行います!」


 虚空に巨大なスクリーンが現れ、そこにトーナメント表が表示される。

 たくさんのプレイヤーの名前が表示され、皆食い入るようにそれを見つめる。


「……うん、私たち以外誰も分かんない。ねぇ誰か強そうな人いる?」

「いや、ほぼ全員がこれまでとは桁違いのトッププレイヤーなんだが……まあ知らんやつもちらほらいるが」

「でもやっぱり最高レベルプレイヤーであるスイさんは特に注意が必要じゃないですか? プレイヤースキルも高いらしいですし」

「スイ? ……あ、あった。私たちと当たるのは決勝戦だね」


 その後ルール説明が行われたがほとんどは予選と同じ内容だった。

 大きな違いは以下の一文が追加された事。


・戦闘リングと観客席の間には障壁が張られるが、万が一対戦相手以外に死傷者を出した場合、即失格と見なす。


「障壁ってどのくらいまで耐えられるんだろう。流石に殴ったくらいじゃ平気だよね?」

「いや、お前が本気で殴ったらどうなるか分からんぞ?」

「……気を付けとこ」




 準々決勝第1戦は、先程話題となったスイのパーティーが出る。

 偵察も兼ねて試合を観戦する事にしたリンたちは、出場者用の席でその様子を見守る。


「お待たせ致しました! それでは準々決勝第1戦 MANABU、セイヤ、蒼士、呂布奉先 対 スイ、奏、フレア、アルトの試合を始めます!!」


「呂布って三国志のやつだよな?」

「あー、俺も聞いた事あるな」


 場内のプレイヤーたちがにわかにざわついたが、リングのすぐそばの審判席に座っていたレーナが立ち上がると、途端に静かになる。


「両チーム準備はいいか?」


 レーナの言葉にリング内のプレイヤーたちが首肯く。それを確認したレーナは右手を掲げ、声を張る。


「──始め!!」




***




 全身を鈍い銀色のフルプレートで覆い、右手にショートソードを持った人類種(ヒューマ)──スイは自分たちの前に対峙するプレイヤーたちを見つめる。

 すると、彼の真正面にいた長槍の鬼人種(オーガ)──呂布奉先と目が合った。

 彼もこちらに気付き、ニタリと顔を歪ませる。


 呂布奉先はその名前や、本来馬上で使う長槍を得物としている事で度々笑い種になるが、それとは裏腹に、彼の実力は折り紙付だ。


 スイと呂布奉先は互いを標的と認識し、互いに相手との距離を縮め始めた。

 同時に得物を振るい、スイのショートソードと呂布の長槍が火花を散らす。


 スイは流れるような動きで剣を振るう。呂布はそれを全ていなしながら槍を回転させ、力を乗せた薙ぎを見舞う。

 スイは、ガントレットで守られた左手も剣の切っ先にそえ、両手で支えた剣でしっかりと呂布の攻撃を受け止める。

 そして柄を持っていた右手を放して剣を左手で逆さに持ち、そのまま呂布を殴りつけた。

 呂布は思わぬ反撃に対応しきれず、攻撃をまともに受けてリングを囲う壁際まで吹き飛ばされた。

 

「……いってぇなぁ、スイィ~。もうちっと優しくしてくれよぉ」


 呂布は攻撃を受けた脇腹をさすりながら起き上がる。それに対しスイは一切油断する事なく、相手を見つめていた。


「お前相手に手加減など出来るわけがないだろう。そんな事をすればすぐに俺が負ける事になる」

「クハハ、まだスキルも使ってねぇのに良く言うぜ」


 スイは答えず肩だけすくめる。お互いに得物を構え直し、呂布が先手を取る。


「【砕岩槍】!」


 彼の持つ槍が淡く青白色の光を纏う。

 呂布がスイに槍を振るう。それをスイは受け止めずに躱した。空を切った槍は軽く地面に触れる。するとそれだけで大地が抉れた。


「【光剣】、【筋力上昇】」


 スイもスキルを発動させる。スイの剣も白い光を放ち始めた。更にスイ自身のSTRも増幅する。

 再び呂布から動く。

 強く大地を蹴り、長槍を力任せに叩き付ける。スイはその一撃を剣で受け止める。その衝撃だけでスイのHPが僅かに削れ、彼の足元の地面が窪んだ。

 それでもスイは槍をしっかりと弾き返し、鋭く突きを放つ。呂布はそれを槍の柄で逸らし、お返しにと連撃を見舞う。

 呂布は長く扱い辛い槍を巧みに操り、穂先を、柄を、石突きをスイに振るう。スイはその全てを躱し、防いでいるが、呂布の攻撃のどれもが必殺の威力を秘めており、少し間違えれば即決着がつくだろう。

 しかしスイはそれらを全て捌き、隙を見ては反撃してくる。

 攻め立てているのは呂布であるが、より削られているのも呂布であった。

 このままでは勝てないと判断した呂布は切り札を切る為、一度間合いの外に出る。


「【震穿槍】!!」


 呂布の長槍が先ほどとは比べ物にならないほど強く輝く。

 それを呂布は持てる全ての力で、スイに叩き付ける。そこには技術など一切要らない。純粋な暴力のみで相手を捩じ伏せようとする。


 ──一拍。爆音と衝撃が辺りに走り、地面が吹き飛ぶ。その余波だけで客席前の障壁が軽く軋む。


 舞い上がった砂ぼこりが薄れてくると、抉れた大地に呂布だけが立っているのが見えてくる。


「【滅光刃】」


 ──と、急に呂布がバッと上を見上げた。彼が認識出来たのは、天から自分目掛けて落ちてくるスイの姿と、その一瞬後に自分が切られた事だけだった。




***




「MANABU、セイヤ、蒼士、呂布奉先 戦闘不能! よって勝者 スイ、奏、フレア、アルト!」


 レーナのジャッジと共に歓声が鳴り響く。


「おぉ~、確かに凄いねぇ。予選とは全然違うや」


 リンが緊張感のない声を上げる。「最後のよく避けれたなぁ~」などと言っているので、一応見てはいたのだと分かる。


「決勝まで行けたら苦労しそうだな」

「スイさん以外の方々もかなり強そうですしね」

「あ、スイって人の戦闘しか見てなかった。……それで次の試合はどんなのが出るの?」

「片方は大技大好き共の集まりだな。もう片方は……全員初めて見るな」


 リンたちが話している間に、荒れ果てたリングが魔法によって整地されていく。


「──それでは準々決勝第2戦 カレン、†破壊神†、Akihiro、アレクサンダー 対 Α、Β、Γ、Δ の試合を始めます!!」


 ガクが話した大技大好き集団(中二成分配合)は獣人種(ビースト)森精種(エルフ)など種族はバラバラで、大剣やメイス、杖を装備している。

 もう一方のチームは全員が機甲種(オートマタ)だ。3人が最小限急所のみを覆う防具を身に付け、手にはアサルトライフルを持っている。残りの1人は3人よりはしっかりした、しかし動かしやすさ重視の防具を着ている。手にはサブマシンガンを持っている。

 その雰囲気はまるでどこかの軍人のようだった。


 第1戦のときと同じような流れで試合が始まる。


「【土壁】」


 開始と同時に機甲種(オートマタ)側の重装備のプレイヤーがスキルで防御用の壁を作り出す。ざっと20枚ほどをリングのあちこちに。




 それは対等な戦闘ではなく、一方的な殲滅だった。

 機甲種(オートマタ)のチームは壁を利用して隠れながら移動し、相手の認知範囲の外から弾丸の雨を浴びせていった。あるときは意図的に姿を見せて相手を撹乱し、土壁を追加で作り出し、相手の注意が逸れたところで一気に畳み掛けた。

 相手チームもお得意の高威力の技で土壁を破壊するが、その隙すらも好機と見て弾丸が浴びせられた。

 相性が悪かったというのもあるだろうが、終始一方的な展開で終わった。


「勝者 Α、Β、Γ、Δ!」


「ねぇ、あれ絶対本物だよね?」

「あ、ああ。たぶん。何か手信号とか送ってたし。ガチでそういう職業っぽいな」

「ひえ~。……まあ私なら素手で壁壊せそうだし、目隠しすれば死角もなくなるから問題ないかな」


 リンは実際に戦った場合の事を考えて、大丈夫そうだと結論を下す。というよりも彼らの戦い方はもともと対人戦向けであって化け物と対峙する為の戦術ではない。


「……それで次の人たち、名前が変なのがいるんだけど知ってる?」

「さあな。にしても2人組か。よく勝ち進んできたな」


 先程よりも時間をかけてリングの整地が行われ、ある意味でスイの戦闘以上にリンが気になっていた第3戦が始まる。




「それでは準々決勝第3戦! 私だ。、おにょにょにょにょ 対 ヒユウ、次郎、きなこ、ユウキの試合を始めます!!」

プレイヤーネームって考えるの大変ですね。

次は15日更新予定です。

お時間ございましたら感想、ブクマ、評価などよろしくお願いいたします。

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