やっちまった……?
2話目です。
「おぉ、町並みがファンタジーだ」
中世ヨーロッパを彷彿とさせる石造りの家々が建ち並ぶ大きな町。その中心には王城がある。
琳花改めリンはまず自分のステータスを確認する為に、虚空にステータスウィンドウという半透明のパネルを出現させる。
~~~~~
リン
混合種(+森精種)(+レッサーワイバーン)(+シャドウウルフ)(+機甲種)(+ロック鳥)
Lv.1
所持金:3,000
HP:69/69[40(+8)(+6)(+5)(+0)(+10)]
MP:65/65[40(+10)(+10)(+5)(+0)(+0)]
STR:52[5(+0)(+2)(+5)(+20)(+20)]
VIT:42[5(+5)(+2)(+4)(+20)(+6)]
INT:31[5(+15)(+7)(+4)(+0)(+0)]
RES:26[5(+10)(+3)(+4)(+0)(+4)]
AGI:55[5(+2)(+10)(+8)(+10)(+20)]
DEX:13[5(+8)(+0)(+0)(+0)(+0)]
装備
武器:
頭:
胴:布の衣服
手:
足:革の靴
スキル:
【遺伝子組み換え】
称号:
保有遺伝子:
【森精種】【機甲種】【シャドウウルフ】【レッサーワイバーン】【ロック鳥】
~~~~~
「何て見にくいステータスだ……」
恐らく、大量の括弧は身体の継ぎ接ぎ部位によるものだろう。
初期のこの身体の中には5種類の生物の遺伝子があるという事だ。
「あれ、そういえばロック鳥って神話か何かであった気がする。これだけ少し数値も高いし……ひょっとして当たりを引いたのかな?」
取り合えずステータスの確認は終わった。
次はスキルの確認をしてみたいのだが……。
リンが辺りを見回すと、彼女の外見のせいかかなり視線を集めていた。
「……取り敢えず町の外に出てみよう」
***
町の外に広がる草原を人気のない方へ進んでいく。
しばらくして周囲に人影がなくなったのを確認すると、リンは【遺伝子組み換え】を発動させた。
すると、ステータスとは別のウィンドウが表示される。
~~~~~
【森精種】 20%
【機甲種】 20%
【シャドウウルフ】 20%
【レッサーワイバーン】 20%
【ロック鳥】 20%
【】
【】
【】
【】
【】
~~~~~
ステータスウィンドウにもあった種族名と何かの割合表示。
「これって……もしかして今の私の身体を作ってる遺伝子ってこと?」
リンは試しに数値を【森精種】だけにふり変えてみる。
すると彼女の身体が急激に変化する。獣の手足が、金属の腕が空気に溶けるように消えていき、代わりに人の手足が現れる。
左頬に触れてみると、しっかりと皮膚があるのが分かった。
次に両耳に触れてみる。すると予想通り、長く尖った耳が手に当たる。
「これ凄っ!」
何とも劇的な変化に感動していると、ふと気付いてステータスを確認してみる。
~~~~~
リン
混合種(+森精種)
Lv.1
所持金:3,000
HP:95/95[40(+55)]
MP:125/125[40(+85)]
STR:20[5(+15)]
VIT:33[5(+28)]
INT:58[5(+53)]
RES:50[5(+45)]
AGI:32[5(+27)]
DEX:40[5(+35)]
装備
武器:
頭:
胴:布の衣服
手:
足:革の靴
スキル:
【遺伝子組み換え】
【ウィンドアロー(消費MP4)】【ウィンドカッター(消費MP7)】【アースウォール(消費MP5)】
称号:
保有遺伝子:
【森精種】【機甲種】【シャドウウルフ】【レッサーワイバーン】【ロック鳥】
~~~~~
「おおーっ! ステータスとスキルも変わるんだ!」
中々に使い勝手の良さそうなスキルに気を良くしたリンは種族や割合を変えて色々と試し始め、15分程度でスキルの検証を終えた。
このスキルについておおよそ分かってきた。
まず、一つの種族だけに極振りすると身体は完全にその種族のものになる。つまり【シャドウウルフ】や【ロック鳥】だと見た目は完全にモンスターになる。これには少々、いやかなり驚いた。
【シャドウウルフ】になるのはいい。外見はただの黒い毛並みの狼だ。
問題なのは【ロック鳥】。白い羽毛に覆われたその身体は、正しく神話の如し姿だった。つまり尋常じゃなく大きい。体長は10メートルくらいはあるだろうか。場所によっては非常に使いづらくなるだろう。
次に、その種族のスキルを使うには4割以上をその種族に割り振らなければならない。つまり2種族分まではスキルを同時に使えるという事だ。
それと、もう1つ思ったことがある。
(ロック鳥だけステータス可笑しくない?)
~~~~~
リン
混合種(+ロック鳥)
Lv.1
所持金:3,000
HP:174/174[40(+134)]
MP:103/103[40(+63)]
STR:87[5(+82)]
VIT:76[5(+71)]
INT:45[5(+40)]
RES:76[5(+71)]
AGI:91[5(+86)]
DEX:25[5(+20)]
装備
武器:
頭:
胴:(布の衣服)
手:
足:(革の靴)
スキル:
【遺伝子組み換え】
【崩天(1日に1度だけ使用可)】【鎌鼬(消費MP10)】【暴風(消費MP18)】
称号:
保有遺伝子:
【森精種】【機甲種】【シャドウウルフ】【レッサーワイバーン】【ロック鳥】
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まず装備が括弧になってるのは、鳥の身体じゃ装備できないからだろう。まあ、そこは別に良い。
先ほど確認した森精種のときのステータス8項目の総合計値は453。他の種族も大差なかった。なのにロック鳥での値は677。
(これちょっとぶっ飛んでない? それとも他がショボいだけ?)
次にリンはスキル欄を見やる。
【崩天】──自分を中心とした広範囲に爆発的な嵐を発生させる。1日に1度だけ使用可能。
【鎌鼬】──扇状の風の刃を飛ばし、攻撃する。MPを10消費する。
【暴風】──周囲に強力な突風を発生させる。MPを18消費する。
「うーん……やっぱり戦ってみないとどんなもんか分からないなぁ」
辺りを見渡すが、周囲にはモンスターの姿はない。
モンスターを探しに移動するために、再び人型に戻ろうとしてふと気付いた。
「今の私って空飛べるんじゃ……?」
思い立ったらやらないわけにはいかない。ステータスの確認など後回しだ。
まずは己の感覚を頼りに両翼を広げてみる。するとそれだけで周囲に突風が起こり、周りの木々を大きく揺らす。
しばらくその場で動かしてコツを掴んだリンは力強く両翼を羽ばたかせ、大地を蹴る。
その瞬間、リンの巨大な体躯は宙を駆け出した。
「凄い! これ楽しい!!」
そこからは悠久の大地が果てし無く続いているのが見えた。
リンは自分の心境を示すように、上昇したり急降下したりとアクロバティックな飛翔をする。
その30分後、ようやく当初の目的を思い出したリンはそのまま空からモンスターを探す。気分は獲物を探す鷹だ。
しばらくしてリンは、森の端にモンスターの群れを発見する。まだだいぶ距離はあるが、鳥の視力を得たリンにはそのモンスターたちの様子がハッキリと見えた。
ぼろ布をまとった薄汚い小柄なそれは、間違いなくゴブリンだろう。
雑魚モンスターの定番である彼らは、当然の如くこのIROでも雑魚枠だ。そう考えると少々哀愁が湧かないでもない。
とまれ、リンにとっては格好の相手と言えた。リンのスキルは範囲系のものなので、数の差は不利足り得ないし、仮に負けそうになっても空に逃げることが出来る。
リンは気負う事なくゴブリンたちの方へ、地面スレスレまで降下した。
するとリンを見たゴブリンたちは怯えたように尻餅をつき、必死に後退る。
どうしたことかとリンは疑問に思ったが、どうあれこのまま逃げられる訳にもいかない。
何のスキルを使うか、はたまた直接攻撃してみるか迷ったが、自分の実力が全く分からないので取り合えず一番威力の強そうなスキルを使ってみる。
「【崩天】!」
そしてそれは起きた。
一瞬でリンの周囲の気圧が急激に上がり、直後に空気が爆ぜた。竜巻が、塵旋風が、ダウンバーストが、大地を抉り天を裂き、周囲の全てを蹂躙する。
モンスターだろうが人だろうが、プレイヤーだろうがNPCだろうが関係ない。一切合切を平等に破壊し尽くす。
再び青空が広がった時、そこに残っていたのは、大きく抉られ窪地となった地面と、何処と無く呆けた雰囲気を漂わせる大鳥だけだった。
『レベルが23に上がりました』
『称号【虐殺者】を獲得しました』
『称号【格上殺し】を獲得しました』
『称号【殲滅者】を獲得しました』
『称号【殺人鬼】を獲得しました』
『【天翼種】の遺伝子を獲得しました』
『【ゴブリンロード】の遺伝子を獲得しました』
『スキル【悪食】を獲得しました』
『遺伝子情報が更新されました』
今日、もう1話投稿します。