これ最初から詰んでないかなぁ
小説を書くのは初めてでかなり自信がないです。変なところは今後の参考にしていきたいので、オブラートに包んで包んで包みまくってから感想欄などでそっと教えて頂ければ幸いです。
Infinite Role Online(インフィニット・ロール・オンライン)。数多のフルダイブ型MMORPGが知られている今日。略称IROというこのゲームは他の物とは一線を画していた。
IRO最大の特徴は何と言ってもその自由度にある。開発者曰く、ゲームシステムの7割はAIが作ったという事で、開発者自身も何処まで出来るのか全く把握出来ていないとの事(もちろん、R-18指定を受けるような行為は出来ないようになっている)。
また、このIROは自分の思い通りにキャラメイクをすることは非常に困難である。というかほぼ出来ないといって良い。
と言うのも、このゲーム内でのスキルは一般的な『この条件を満たしたらこのスキルが手に入る』というものではなく、プレイヤーのプレイスタイル、思考パターン、ゲーム内での過去の言動などから、AIがふさわしいと判断したスキルを得られるという仕組みなのだ。
ともあれ、IROはその自由度と特異なゲームシステムから非常に注目度の高いゲームとなった。
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「んー、あんまりこういうのやったことないんだけどなあ」
荒巻琳花は妹の香苗から貰ったゲーム、Infinite Role Onlineのパッケージを眺める。
つい先日誕生日に貰ったそれは、2週間ほど前に発売され、今爆発的に売れているVRMMORPGだ。
どうやら香苗は自分が気になっているそのゲームを姉と一緒にやってみたかったようで、やけにキラキラした目で渡してきた。
琳花はその時の様子を思い浮かべ、苦笑しながらゲーム機の電源を入れる。
幸い今日から3日間は学校は休みなので、時間はたっぷりとある。
「まあ、嫌いってわけでもないし良いんだけどね」
ともあれまずは初期設定からだ。ゲーム機の起動が完了すると、一瞬の浮遊感の後、琳花の意識は現実世界から隔離された。
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まずはプレイヤー名を決めなければ。琳花は少し考えると、『リン』と入力する。
次に種族を決める事になる。種族は本当に多彩にあり、ここで選べる基本種族から更に派生した種族もあり、エクストラ種族のようなものもあるのではないかという噂まである。
だが、その選択肢の中には『AUTO』の文字もある。これはそのままの意味でAIに任せるという事だ。
実際の所、狙ったスキルを獲得できないこのゲームでは、脳波パターンから種族を勝手に決めてくれるこの“お任せ”を使った方が後々やり易いそうだ。
琳花は特に拘りもないので『AUTO』を選択する。すると──
『あなたは種族名【混合種】となりました』
「えぇ……人間じゃないのかぁ」
混合種というのは、残念ながら不人気種族の1つだ。理由はいくつかあるが、まず思い付くのはその外見だ。名前から分かる通り、中々に混沌とした外見になる。誰も自分の姿で吐き気を催したくはない。
また、混合種はその種族の特性上、プレイしているうちに肉体が変化していく。それはもう骨格から何からバンバン変わっていく。その為、折角異形の身体に慣れてきたのに……何て事になりうるのだ。勿論、AIもその人に合ったものを用意してくれるが、それでも馴れるまでは碌に歩くことも出来ないという事もある。
それらの理由から、既に攻略サイトや掲示板などでは混合種は大変残念な評価を受けていた。
種族設定はすぐに反映される為、琳花の外見も奇形のそれへと変わる。
琳花は己の身体を眺めると、げんなりとした表情を浮かべる。
まず視界に入ったのは、左右で大きさや形の違う両足。左足は煤色の鱗が生え、鋭い鉤爪のある三本指の爬虫類のような足。
右足は左よりも一回り小さく、鳥の足のような形をしていた。
胴体は人間と同じスベスベの肌だが、右手は毛むくじゃらの獣のそれだった。人の肉など簡単に裂けそうな爪がある。
左手は肉ですらなく、人のそれと同じ形の装甲がある。それもよくあるガントレットのようなものではなく、指先などが鋭利に尖っており、明らかに他者を傷つける為の形状をしている。
自分の顔がディスプレイに写し出されたのでそれを見ると、一見人間に似ているが、やはり違うところがある。
まず右目の瞳孔が爬虫類の如く縦に割れている。左目など一つの目の中に瞳が二つある。所謂、重瞳とか多瞳孔症とか言われるものだ。正直に言うとちょっとばかし気持ち悪い。
他にも左頬だけ裂けていて、肉食獣を彷彿とさせる鋭利な歯や歯茎が剥き出しになっていたり、右耳だけ尖って(エルフ耳)いたりした。
中々の化け物っぷりだが、2足歩行で人型を保っているだけ混合種にしてはましな方だ。
「我ながらショッキングな絵面だなぁ。まあ面白そうだしこのままでいっか」
琳花はキャラメイクの修正などはせず、そのまま先へ突っ走る。
「次は……髪型かぁ。髪は……流石にこの左目は隠した方が良いかな? でも頬も裂けてるしなぁ。もうこのまま髪の色だけ変えればいいや」
琳花は適当に髪の色を脱色して銀髪に──しようとして白髪になる。結果、彼女の身体は中々ちぐはぐな色使いとなった。
その後しばらくの間、虚空に『初期スキル取得の為、脳波測定中…』という文字が表示される。
一番最初に1つだけスキルが貰えるのだ。
そしてこれによって最終的なプレイスタイルが決められると言っても過言ではない。ここで入手出来た系統のスキルは今後も入手しやすいのだ。
待つことおよそ1分。先程までの文字が消え、代わりに取得したスキル名が表示される。
『スキル【遺伝子組み換え】を獲得しました。』
「えっ、何それ……」
何とも健康に悪そうなスキル名に戸惑った琳花はスキルの詳細を確認する。
【遺伝子組み換え】──獲得した遺伝子と自身の遺伝子を組み換えられる。遺伝子は10種類まで保持可能。
「こ、これって……強いのか弱いのか全然分かんない……。もうなんでもいいや。あとはええっと、初期武装かぁ」
琳花は虚空に表示される選択肢を見ていく。
【バスターソード】【ロングソード】などの代表的な近接武器や【弓】【銃】【スリングショット】といった遠距離武器、【杖】【魔導書】【護符】等の魔法補助用の道具など様々な種類がある。
それらを物色していて、ふと気付く。
「……あれ、私って武器持てなくない?」
彼女は両手を見下ろす。鉤爪のついた獣の右手。鋭利な形状をした機械の左手。とてもではないが道具を使える手ではない。
やむを得ず、何も選択せずに初期設定を終える。
「これ最初から詰んでないかなぁ」
琳花はそのぼやきと共に、視界を光に覆われる。
その光が消えたとき、そこは綺麗な町並みの城下町、その広場だった。