3
話し合いましょうとは言ったものの、六歳相当の幼女の身長しかないシーアルから見れば、プライマル・フォルツェが放つ圧迫感がやたらと強い。
立っているだけなのに、無駄に強い圧迫感。
シーアルは弱気になりかけた。
ロボットは大きい方が格好良くて強そうで、変形しそうだよね、とか。
うきうきと、プライマル・フォルツェをメイキングした前世の自分に会えるものなら、二時間ほど説教をしたい。
因果応報。
自己責任か。
シーアルはまっすぐにプライマル・フォルツェを見上げる。覚悟を決めて言い放つ。
「正座」
大きな声ではない。
だが、プライマル・フォルツェは即座に従おうとする。二メートル近い金属の体をかがめ、シーアルの前に、プライマル・フォルツェは姿勢を正して座った。
足を折って膝をそろえ、かかとも合わせる。
古式ゆかしい日本文化伝統の座り方。
正座だ。
目線の高さが近づいて。
ちょっとだけ、シーアルの気持ちが落ち着いた。
話し合う体勢ではないかもしれないが、見た目は成人男性と幼女なのだから、ハンデということで許容範囲にして欲しい。
「まず、私たちは恋人同士ではありません」
シーアルに容赦はない。遠慮だとか、気遣いだとかは、そんなものは投げ捨てた。できれば後で拾いたい。
プライマル・フォルツェは、シーアルの話をおとなしく聞いている。
シーアルは言葉を続けた。
「あなたは私との親密度の高さを、恋愛感情だと勘違いしているだけなのよ。私があなたの創造主だから」
シーアルは、自分自身にも言い聞かす。
忠誠を誓ってくれても。
愛を語ってくれても。
プライマル・フォルツェの言葉を、本気にしてはいけない。
だって、私のNPCだもの。
私に逆らわず、理想通りの反応をする私専用のNPC。
転生前はそれだけで良かった。
………なんだろう。
自分で言っておきながら、次第に気持ちが落ち込んでくる。
そこまで言わなくても、とか、少しぐらい、とか。心の奥が愚痴をこぼす。
「シーアル」
プライマル・フォルツェは、シーアルの名前を優しく呼んだ。
正座したままの、情けない姿だが。プライマル・フォルツェはシーアルの顔を見つめて、心配そうに眉を寄せた。
「どこか、痛いのか?」
シーアルは返す言葉を失った。
呆然と、プライマル・フォルツェを見つめ返す。
「辛そうだ」
プライマル・フォルツェが告げる言葉は短いが、シーアルを本気で心配している気配がする。
すると思いたかった。
クリエートオンラインで、プライマル・フォルツェと一緒にすごした時間を、楽しかった記憶を、一人芝居で終わらせたくなかったのかも知れない。
「私の話を聞いていた?」
意識して、きつい表情でシーアルが問いかけると、プライマル・フォルツェは笑顔を見せた。
「恋人同士でなくても、私がシーアルを愛していることは変わらない」
「その愛が、プログラムの数値計算によるものだったとしても?」
シーアルは軽く視線を反らす。プライマル・フォルツェを直視できない。
プライマル・フォルツェは真顔だった。
「一緒にいて優しくされて、その相手を好きになるのは不自然なことなのか?」
そう言われると。
困る。
シーアルは本気で困る。
できることなら、心の底から抗議をしたい。
愛がどうのこうのと私に聞かないで。
こっちが聞きたいわッ!
「……そうよね。良く考えたら、悩んでも仕方ないじゃない」
シーアルはぼそりと口にした。悩んでも何も変わらない。済んでしまったことは、どうしようもない。
プライマル・フォルツェがNPCであっても、プログラムで動いていようと、それがどうした。
愛してると言ってくれるなら、愛されようじゃないか。愛されてると信じよう。
後のことは後で考える。
「あなたの愛は認めるとして、私はあなたを愛しているか分からないの。だから、時間が欲しい。そして、正直に言ってしまうと、私にはあなたの力が必要なの」




