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蒼春  作者: 白宮 安海
青春となにか
8/27

8話

僕の返事を聞くなり、律は嬉しそうに拳を上げて飛び跳ねた。

「やったあ!じゃあ今週の土曜日ね!」

「今週の土曜日って、明日じゃん」

僕は思わず突っ込んだ。

「早い方がいいでしょ?先延ばしにすると、永遠にその日が来ない気がするし」

と、律は少し唇を尖らせながら言った。

「それとも何か用事でもあるの?彼女とデートとかー?」

律は口を抑えてにやにやと笑っていた。僕が彼女などいないと知っての、イタズラっぽい顔だ。

「謙一に恋人なんていないって。奥手だし」

海斗は被せて言ってきた。僕は二人に言われるまま、いい気分はせずに、黙って目を細めながら二人を見ていた。

「ごめん、ごめん。冗談。謙一が良ければ、いいかな?私も謙一が来てくれた方が嬉しいし」

律にそう言われて、僕の心は単純にひっくり返った。何でもないような言葉なのに、僕にとってははしゃぐ程心地のよい言葉だった。

「じゃあ明日、プレハブで勉強会だ」

僕は言い放った。

「決まり!思い出つくろうね」

律はニカッと歯を見せていた。白いタイルが隙間なく並んでいるようだ。

「思い出って、勉強するんだからな。分かってるのか?」

海斗は横目で律を見た。

「分かってる。でも、楽しみなんだもん。お泊まり会だからね」

律は何気なく、お泊まり会と口にした。律と一緒に、同じ部屋で一晩過ごすという事だ。僕の鼓動は急に脈打つのが早くなった。顔が赤くなっていないか心配で、前髪や鼻を意味もなく触った。

「お泊まり会かー、子供の時以来だな」

と、海斗は思い出すかのように目線を上に向けた。

「ね、枕投げしようね。あとトランプ」

律は既に浮かれていた。海斗は、そんな律の額を軽く指で小突いた。

「だーかーら、勉強するために行くんだろ?」

えへへ、と律は笑みを止める事なく額をさすっていた。

僕は既にお泊まり会の事で頭がいっぱいだった。律だけじゃなく、異性と一緒に一晩過ごすというのも、高校生になってからは初めてだった。とても楽しみだ。

僕は、学校が終わって帰る途中でも、自転車に乗りながら笑いを抑えるのに精一杯だった。


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