4話
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次の日の四限目は、憂鬱な課題が出された。
担任教師の藤田ゆきえは、教卓に立つなりプリントの束を両手で揃えた。クラス中に微妙な緊張感が漂った。
「今日は将来の目標について書いてもらいます。自分が目指す職業や、理由を空白の欄に書いて下さい」
藤田ゆきえは特に笑いもせず、いつも通り厳しげな皺を、小さく口角に刻んでいた。
プリントが前の列から順に配られていくと、一番後ろの僕の席まで滞りなく渡った。
まっさらなプリントを見ると、まるで図形のように欄が並んでいて、その横に第一希望、第二希望、など、形式ばった文字が書いてある。
クラス全員に行き渡ったのを確認して、藤田ゆきえは言った。
「15分後、一人一人と廊下で面談をするから。そのつもりで書きなさい」
突き放すような冷たい声を出した後、藤田ゆきえは教卓の椅子に座った。微かに教室中がざわめいた。
「どうしよう、思い付かねぇよこんなの」
とある誰かがそう言った。女子生徒もヒソヒソ話をし始める。ふと、斜め前の席の律と目が合った。僕は困ったような微笑みを返して、プリントに目を伏せた。
「それじゃあ、面談を始めるから。名前順に来てね」
15分などあっという間に過ぎる。こういう時、席順で名前が最初の方でなくて良かったと思う。椅子の足が床を引きずって、一番目の男子が藤田ゆきえの後に続いて廊下へ出ていった。
教師の姿が消えた途端、クラス中から一気に声が上がった。
「まじかよ、面談なんて聞いてねーぞ」
「全然終わってないのに、やばい」
プリントを手にしながら、既に自分の席を立っている者もいた。
僕の前にも海斗と律がやってきた。
「本当やんなっちゃう。こんなのずるいよね。将来の夢とかわかんないし」
律はプリントを眺めながら眉間にシワを寄せていた。ペンを持ってきていないということは粗方書き終えたのだろう。
一方海斗は、余裕の顔を見せていた。




