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蒼春  作者: 白宮 安海
青春となにか
23/27

23話

「いや、全然」

言いたいことは山のようにあるのに、何一つ口に出せない。すると律が先に、雨でぼやける暗がりの向こう側を指差して言った。

「ちょっと、近くの公園に行こう?」

僕は頷いて、律と一緒に小さな公園まで歩いた。歩いている間、一言も会話を交わさなかった。ごめん、とか、会いたかった、とか、伝えたくても、僕はそれを軽々しく言うことが罪のような気がした。

体を捻らせて銀の柵をこえる。雨の降る夜の公園には誰もいなかった。

僕と律は、ペンキの剥げたブランコの前で向き合った。

「あのさ」

と、僕はやっと切り出した。

「ごめん。あの時の事」

律に向かって頭を下げる。すると律は穏やかな口調のまま言った。

「別に、もう気にしてないし。どうでもいいから」

僕はゆっくり頭を上げた。律は、僕を見ないようにしているようだった。

「海斗から聞いたんだ」

「え?」

「海斗、謙一の事が好きなんでしょ?」

「何でそんな事」

僕は正直、律には知られたくなかった。あの時の事はあの時のまま、永遠に自分の中で閉まっていたかった。

「私、海斗に告白したの」

律の顔は上を向いた。瞳に浮かんでいるのは、今も海斗の姿だった。

「それで?」

「振られちゃった。最悪。凄く悔しくて、もう何もかも嫌になっちゃった」

律の声は震えていた。僕は、思わず口にしていた。

「何であいつなんか」

こんなに自分は律の事が好きなのに、よりによって律は、何で海斗なんかを選んでいるのだろう。僕は少し苛ついて、湿った砂利を靴の爪先で抉った。

「あんたなんかいなければ」

と、律は言った。いつの間にか僕の顔を見ていた。それも恨めしそうな顔で。それから律は傘を落として僕に掴みかかって揺さぶった。

「何で?ねえ何で?何であんたなの!ねぇ何で!」

律の頬は雨じゃないもので濡れていた。僕は何も言えずに、ただ俯いていた。

「……私の方が、海斗の事好きなのに」


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