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22話
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その夏のはじまりを境に、僕らの青春は死んだ。
「なあなあ、あいつさ、ゲイらしいよ」
隣りの机の男子の言葉が、僕の耳に入ってくる。それを聞いたもう一人の男子は、引いたようなリアクションをすると、ふざけたように言った。
「え、マジで。ヤバい、俺狙われるかも!」
不自然に抑えた声が、僕の鼓膜に不快だった。
あれから律の机には誰も座っていない。海斗とも、以前のように話す事はなくなった。
僕は、二人の事を忘れようと、大学受験に専念した。
沢山の水滴が無遠慮に大地を叩く夜。湿った土の匂いに、僕は安心した。自分の部屋の中で、参考書とノートを開きながら復習をしていると、携帯画面に、律と表示されていた。僕は急に鼓動がどくりと唸り、すぐに電話に出た。
「ごめん。今いい?」
電話越しに懐かしい声を聞くと、涙がこみ上げそうだった。
「大丈夫」
「出てこれる?」
「え?」
「下にいるよ」
僕は、2階の部屋から窓を開けると下を覗いた。緑色の傘の中から、律が見上げていた。
「分かった。待ってて。今行く」
急いでポールに掛かったハンガーから、適当なカーディガンだけ羽織ると、携帯をポケットに放り、階段を降りてビニール傘を手に律の元へ向かった。後ろを向いていた律は、僕に気づくと振り返った。
「……雨の日に呼び出してごめんね」




