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蒼春  作者: 白宮 安海
青春となにか
21/27

21話

「うるさい!もう放っておいてくれ」

僕は叫びながら海斗の体をを突き飛ばした。呼吸が苦しく、このまま心臓が止まれば良いと思った。

しかし海斗は僕を責めなかった。その代わりに、意識しなければ通り過ぎ去ってしまいそうな声で言った。

「好きだ」

海斗の言葉に、僕は耳を疑った。最初は悪ふざけなのかと思った。だけど海斗は、嘘のないような必至な眼差しを僕に向けたままだった。

「俺は謙一の事が好きなんだ」

と、続けざまに海斗は言う。僕は、あまりに予想していなかった言葉に、当然躊躇った。まだ信じられない。

「やめろよ。冗談は……。海斗が好きなのは、律だろ?」

「俺が好きなのは謙一だ」

海斗は真っ直ぐに僕を見詰めた。嫌な沈黙が二人の間を流れる。僕はこの場が酷く心地悪いのに不思議と足が固まっていた。海斗は立ち上がって、一寸の隙もなく僕の唇を奪った。女性の唇とは違って、硬く薄い唇だった。僕は勢いよく顔を背けると、海斗の体を押しのけた。それから唇を拭って、息を荒くしながら海斗を見る。すると、海斗は小さな声で言った。

「何であいつなんか。メンヘラだし、性格荒いし。俺の方がいいのに」

一緒に居て、あんなに仲良く笑っていた海斗の言葉とは思えなかった。今目の前にいる人間は、僕の知る人間とは別の人間に見える。海斗はプレハブ小屋を出ていった。一人取り残された僕はその場でしゃがみこんだ。

ぐるぐると色々なことが頭を巡り、もう何もする気が起きない。

海斗と律は、その夜プレハブ小屋には戻ってこなかった。

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