18話
海斗は、律の隣に行きたいようだった。僕も気を遣って立ち上がる。
「じゃあ僕がそっちに移ろうか」
「いや、そのままでいいって」
「え?いや、でも。ここにいたら邪魔だろ?」
「まあ、ちょっとだけだから」
そう言って海斗は立ち上がり、テーブルを避けてこちら側に回り込んできた。そうして僕の隣に腰を下ろした。香水でもつけているのだろうか。本来なら汗の匂いがする筈なのに、ハーブの匂いが漂ってきた。
「謙一はさ、もし男性が男性を好きになったら、どう思う?」
唐突な質問だった。同性同士を好きになるというのは今や珍しくない。もしもそういった人達が自分の周りに居たとしても、僕は気にしないだろう。
「別に構わないと思う。本人達の自由だし」
「そっか」
海斗は、やけにすっきりとした顔をさせて、伸びをした。それから、
「あー!明日が来なければいいのにな」
と、嘆いた。
「もういいや。ありがとう」
海斗は立ち上がると、また反対側へと戻り、今度はそこに寝転がった。僕もつられてその場に仰向けになる。天井の木目が遠くの方でうねっている。
「海斗はさ――」
僕は問いかけたが、海斗は既に眠っていた。二人の寝姿を確認すると、僕もそろそろ眠ろうと思い、立ち上がってプレハブの灯りを消した。窓から月明かりが入って淡い暗さになると、急に夜の静けさが耳に痛かった。僕は、一つしかない薄手の毛布を引っ張ってくると、律の上に掛けた。そうして、僕はソファで寝るのではなく、さっきの位置にまた戻って床に寝転んだ。
どっと眠気が押し寄せてきた。眠るまでの間、僕は海斗の言葉を思い出していた。明日が来なければいいのに。――僕も同じ意見だった。




