14話
律は明らかに酔っていた。酔っていたといっても、それはほろ酔いのレベルで、僕の知っている本当に酔う、というレベルにはまだ達していなかった。僕も段々とアルコールの味にも慣れ、脳からの信号のまま、ビールを喉に流していった。ふわふわとした感覚が、心地よかった。
「謙一は?」
今度は僕に向かって、海斗が質問を投げかけてきた。僕は何だか気が大きくなって、自分ならどんな事も成し遂げられるという根拠の無い自信に漲っていた。
「僕は絵描きになる」
口から出た後、もっと僕の自信は大きく膨らんだ。そうだ、今からでも遅くない。絵を描いて、有名になって、いつか個展を開く。僕の夢の後に、海斗は言った。
「お前、絵上手いもんな。やれるよ。俺はさ、ロックミュージシャンになりたい!」
海斗は大声で叫んでいた。海斗のそんな夢を聞くのは初めてだった。
僕たちはずっと変なテンションで、笑いが耐えなかった。
気がつくと、窓から見える外は真っ暗だった。時刻は20時。海斗は突然立ち上がって僕達を見下ろした。
「そろそろ花火やるか!」
「いいね、やろやろ」
律も手を上げて同意をした。
プレハブの外は涼しかった。空にはぽつぽつと星が浮かんでいて、僕達は世界に取り残されたような孤独と特別感に高揚した。
海斗が、子供向けのカラフルな絵の描いてある花火の包装を破ると、僕達に花火を選ばせてくれた。




