13話
僕達はそれから日が暮れるまでの間、真剣に勉強をした。窓の外は薄暗く、すっかり夜を迎える準備をしている。
「はぁ、疲れたー。そろそろ休も」
律は息を吐いて、その場に勢いよく仰向けになった。
「そうだな。そろそろ、終わりにするか」
海斗も同意して、ノートと参考書を閉じた。僕も同じく閉じる。
「なんか喉乾いちゃったな」
そう言うまま、律は冷蔵庫を開けた。
「酒飲もうぜ!酒」
と、海斗。律は言われるまま冷蔵庫から缶ビールを三本取り出し、テーブルの上に置いた。
「私ビール飲むの初めてかも」
律は両手で冷えた缶ビールを持って、まるで貴重な代物かのようにラベルを見つめていた。一足先にぷしゅっと噴き出す音が聞こえたのは海斗の方からだった。
「乾杯しよう。皆お疲れ!」
続けざまに律も同じ音を出して、最後に僕もプルタブをねじ曲げた。
「かんぱーい」
賑やかな声が上がると、律と海斗はビールに口をつけた。僕は躊躇いながらも、楽しい時間に水を差したくないという思いから、寸秒遅れてビールを口にした。鋭い苦味が舌の上に広がりピリピリする。アルコールの匂いがした。幼い頃からよく嗅いでいた匂いだ。好きな匂いではなかった。
「苦!何で大人ってこんなの美味しそうに飲んでるんだろ」
律は眉を寄せながら、さっきと同じ角度で缶ビールのラベルを見た。今度は貴重品ではなく、汚れた雑巾でも見るような顔だった。
「大人は逃げ道がないから、酒を飲んで逃げ道を作るしかないんだよ」
そんな事を言いながら、海斗は表情一つ変えずに酒を飲んでいる。
「私はそんな大人にはなりたくないな」
「律は将来何になりたいんだ?」
海斗の質問に、律は少し考えるように頭を下に傾けた。
「私は将来、お金持ちと結婚して海外に行く!」




