10話
残りは簡単な片付けだけをして、二人が来るのを待った。時計を見るとそろそろ待ち合わせ時刻の12時になりそうだった。
最初に扉を開けてやって来たのは律だった。
「お邪魔しまーす。わー、涼しいー!」
律は思い切り伸びをして頭上から全身に冷気を浴びた。僕は律の普段とは違う格好や雰囲気に戸惑った。
白地の小花柄のブラウスの下、栗色のショート丈のフレアスカートに黒のスパッツがはみ出していた。いつものショートヘアの耳の上に、丸い真珠型が装飾されているピン留めを挟んでいた。
初めて見る律の女の子らしい姿に、暫く見とれてしまっていた僕と律の目が合うと、僕は視線をさまよわせた。
「海斗は?まだ来てないの?」
「まだ来てない。そろそろ来るんじゃないか?」
時刻は12時を過ぎている。不意に床置きのテーブルへ視線を投げた時、扉が勢いよく開いた。
「ごめんごめん、ちょっと遅れた」
海斗だった。毛先をワックスで跳ねさせて、雑誌から飛び出たように、全身が決まっていたが、程よい抜け感があるシンプルカジュアルな格好だ。知らない人が見たら、きっと大学生に見えるだろう。
「海斗、遅刻!これは罰ゲームしないとダメだな」
と、律は両腕を前に組んで言った。海斗は後頭部をかいて眉を下げた。
「罰ゲーム?そんな、ちょっと遅れただけで厳しいな」
「遅刻は厳禁なので」
「はぁ、謙一何とか言ってくれよ」
海斗は僕に助け舟を渡した。僕は急なパスに言葉を詰まらせながらも、律に言った。
「まあ、そんなに待ってないし、許してやろうよ」
「謙一がそういうならしょうがないな。じゃあ、今回は特別に許してあげる」
海斗は参ったなと言わんばかりに眉を寄せ、わざとらしく頭を下げた。
「はいはい、ありがとうございます」
二人のやりとりに、僕は笑みを零しながらも、リュックに詰めていた荷物をテーブルに置きはじめた。




