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スプーンで世界はすくえますか?  作者: 木林森
第一章 イスト編
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「一人目ですか?」3

「なあ、エル。もしかして、こいつが長とかいうやつなんじゃ⋯⋯」


「たしかに、他のゴブリンとは違うみたいね」


 突如現れたそれは、まさにこの辺を仕切っているのは俺だ、そんな雰囲気を醸し出していた。


「まあ、そっちから出て来てくれるなんて好都合だわ! フレイム!」


 相変わらず加減を知らない女だ。まあ、でもこれで依頼は終わ⋯⋯り⋯⋯、

 嘘⋯⋯だろ? 並のゴブリンなら一撃だったぞ。

 ーーまだ、勢い衰えず燃えている草むらの中から、再びそれは現れた。


「⋯⋯おい! どうなってんだよエル!」


「私だって聞きたいわよ!」


 まるで何事もなかったかのように、こちらへ向かって来る。


「⋯⋯たまたま一発凌いだだけで、いい気になられても困るわ! 食らいなさい、フレイム!」


 二発目のフレイムがゴブリンに向かって放たれる。が、二発目を食らっても尚、ゴブリンは歩みを止めない。


「くっ! しぶといやつね! でも、次こそ⋯⋯」


「待て! 一旦逃げるぞ!」


 そう言って俺はエルの手を取り、ゴブリンに背中を向けて走り出す。


「⋯⋯ちょっと! 次こそあんなやつ!」


「次も倒せないかもしれないだろ! ここは少し距離をとろう」


 逃げながら、俺は図鑑を開く。何かないのか、手がかりは。


 ゴブリン⋯⋯見かけとは裏腹に、戦闘力はさほど高くない。武力で決められた彼らのリーダーは「キングゴブリン」と呼ばれ、キングを筆頭に群れを形成する。


 ーー手がかりとなるものはなさそうだ。分かったのは、あいつが「キングゴブリン」ってやつだということくらいだな。


「きっと倒せなかったのには何か理由があるはずだ。例えば、単なる実力差とか⋯⋯」


「私はレベル七よ! 長だかリーダーだか知らないけど、この私があんなやつに負けるわけないわ!」


 本来なら、俺とは五つも違うレベルに驚くところではあったが、状況が状況だ。そんな場合ではなかった。

 レベル七。⋯⋯それでも勝てないほどの実力なのか? キングゴブリンは。


「だから、あと何回か撃てばあいつだって!」


「⋯⋯っ! 止まれ!」


 走っていた俺達は、足を止めた。


「⋯⋯? どうしたの?」


「⋯⋯前、見てみろよ」


 ーー前からは無数のゴブリン達が群れをなして俺達の方へやって来る。


「仕方ない! 一旦後ろに⋯⋯」


 そう言って後ろを振り向くと、後ろからはキングゴブリンが他のゴブリンを引き連れて俺達の後を追って来ていた。

 まずい、挟み撃ちか!


「ーーくっ! こっちだ!」


 挟まれないよう、横に向かって走り出す。


「ねえ! どうするの!」


「今考えてる!」


 窮地ってやつだな。キングゴブリンにはエルの攻撃は効かないし、大量のゴブリンには追われるし。どうすればいいんだ? この状況。


 そんな時、エルが俺に話しかけてきた。


「⋯⋯ねえ。先頭のあいつはともかく、他はただのゴブリンでしょ? 一発撃てばあいつら、少しは減らせるんじゃない?」


 ーーそれだ! あまりにピンチすぎて忘れていたが、並のゴブリンなら一撃でお陀仏だ。ーーなかなかいいことを言うじゃないか。


「⋯⋯よし、頼んだ!」


「任せなさい! ⋯⋯⋯⋯フレイムっ!」


 放たれたフレイムが、ゴブリンの群れ目掛けて飛んでいく。が、次の瞬間、思わぬ事態が起きる。

 なんと、先頭のキングゴブリンが合図すると、群れは横に二つに別れ、フレイムを回避した。そして回避するとまた、合流したのだ。


「⋯⋯は? 何よ、それ。そんなのあり!?」


「俺も⋯⋯驚いてるよ。」


 衝撃だった。だって、あいつらーー


「あいつら、見るからに脳筋じゃない!」


「⋯⋯俺もそう思ってたよちくしょう!」


 くそっ、どう見たって知能が高そうには見えないってのに、なぜだ。そういえば、キングゴブリンが合図してたように見えたな。リーダーの指示には従うってか?

 その時俺は、エルのお母さんが言っていた言葉を思い出した。


「ゴブリンの群れはーー」


 厄介。まさにその通りだ。リーダーがいるかいないかで、全く別物のモンスターのように思える。


「なあ、お前のフレイムって途中で曲げたり⋯⋯」


 そこで言うのをやめた。そういえばこいつは、コントロール力が皆無だったな。


「⋯⋯何? 何て言ったの?」


「⋯⋯いや、何でもない」


 ーー万事休すか。もう、為す術がない。せめて、攻撃さえ当たれば⋯⋯。


「⋯⋯ウ! ちょっとユウ!」


「ーーっ! 何だよエル」


「あんた、いつまでそこに立ち止まってるの! 追いつかれるわよ!」


 そう言って強引に俺の手を引くエル。為す術のなさに、思わず呆然と立ち尽くしていた俺は、半ば不安定な体勢のまま、エルに引きずられる。

 そして、体勢を立て直そうとしたその時、地面の小石に躓いた。


「ちょっと! 転んでる場合じゃないって!」


「いてて⋯⋯悪い。ーーーーっ!!」


 その時、俺の頭の中に案が閃いた。


「これだ! ⋯⋯これなら!」


「何? 何か思いついたの?」


「とりあえず走れエル! 逃げながら説明する!」


「⋯⋯立ち止まってたのはあんたでしょ!?」


 再び走り出した俺達は、全速力でゴブリン達との距離を引き離す。

 攻撃が当たれば、やつらの数は減らせる。つまり、攻撃を当てれる状況さえ作れればいいわけだ。

 しばらく走った後、エルに合図をして俺達は立ち止まった。


「それで? 何を思いついたの?」


「いいか。ここはどこだ?」


「どこって⋯⋯草原だけど?」


「⋯⋯そう! だから、俺達が今からするべきことは⋯⋯」


「するべきことは⋯⋯?」


「草を⋯⋯結ぶんだよ!」


「草を⋯⋯結ぶ?」


 それから俺はエルに作戦を説明し始めたーー。

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