「バトルロイヤルですか?」28
「うぅ⋯⋯」
目を覚ますと、その瞳に白い光が差し込む。
その光の正体は電灯。天井に取り付けられたそれは明るく輝いている。
⋯⋯ここはどこだ?
見上げていた天井から視線を外し、そして、
「ーーっ!」
横に白いものを発見して驚く。
白いものというよりかは、白い服。いや、それよりもこの服装は⋯⋯
「目覚めたのですね!」
間違いなく修道服の彼女であった。
そして彼女は、嬉々とした表情と明るいトーンで、俺の目覚めを迎えてくれたのだ。
もちろん、ありがたい気持ちはあった。でも、
「⋯⋯なんであなたがここに?」
何故こんなことになっているのかは分からなかった。
目が覚めたら医務室の様な所にいて⋯⋯まあ、これは分かる。大方、運ばれたのだろう。
だが、なぜ隣に彼女がいるのだろうか。
エルは動けないにしても、ロマンは動けるはずだ。
⋯⋯⋯⋯まさか、優勝の目的を果たしたからパーティーは解散? いや、待て。俺とエルは動けない状態だった。それならば賞金は誰が受け取る? そう。間違いなくロマンだ。そして、ロマンはこの場にいない。
そこから導き出される結論は持ち逃⋯⋯
「ロマンさんが一人で表彰に出られて、エルさんも動けない。だから私が代わりに、というわけです」
巡り巡った思考回路は、跡形もなく消え去った。いや、自ら消去した。すまんロマン、疑って。
「そうだったんですね⋯⋯って、ん? あなたは表彰に参加しなくていいんですか?」
「私ですか? 心配ありませんよ。ルーク⋯⋯私の隣にいた彼が、一人で参加していますから」
「それならいいんですけど、一人って⋯⋯バースは?」
「それが⋯⋯」
それから彼女は語り始めた。
その話を簡単にまとめると、バースはあの後すぐ、一人で闘技場を跡にしたようだ。
何でもその間際に「次は負けねぇ」と呟いていたようだが、それはこちらの台詞。今以上に強くならなければならない。
あとは、そこからの経過。体感長く寝ていたようにも思ったが、実際はほんの十分程度しか経っていないらしい。
動けないエルに関しては、俺とは別室に運ばれたようだが、運び終えた時には、僅かに指なら動く程度に回復していて、そろそろ歩けるくらいにはなっているのではないかということだ。
そこまで聞いて、ようやく俺は状況を理解した。
が、それと同時にある事に気付く。
「そういえば⋯⋯痛みがない」
バースから受けた数々の攻撃。完治するにはさすがに早すぎる。
そんな疑問を抱いていた俺だったが、
「ああ、それでしたら、失礼ながら、私が治させていただきました。エルさんに関しては、今の私には魔力の回復というものはできないので、お役に立てませんでしたが」
そこへ彼女から不意の一言。
後半、エルについても何か話しているようだったが、それを聞き流してしまうくらいに、俺は前半へ気をとられていた。
「治したって⋯⋯あなた、一体⋯⋯」
思わず口に出てしまう。
たしかにこの手の回復魔法は見たことがあったが、エルのものとは比べ物にならない。
それだけの魔法を使う彼女は一体何者なのだ、と。
その問いに、彼女はにっこり笑って答えた。
「そういえば、まだ自己紹介をしていませんでしたね。私はシス。今話した通り、主に回復魔法や、サポート系の魔法を専門としています」
「回復とサポート⋯⋯ということはあの膜も」
「はい。あれは『ガード』という魔法。対象を様々な攻撃から守ります。もちろん、耐久度は使用した魔力に比例するので、防げないものもあるのですが」
あの青い膜⋯⋯あれは『ガード』というらしい。
彼女は防げないものもあると言ったが、エルの最大火力のフレイムを防いだ時点で、それを防ぐ彼女の魔力、いや、それを可能とする彼女の魔力量は十分なものであるといえるだろう。
「そうなんですね。⋯⋯まあとにかく、傷を治してもらったこと感謝します。ありがとうございます」
「いえ、お気になさらず」
修道服の彼女、シスのことを少し知れたところで、正面にあった扉が開かれた。
PV2500、ユニーク1000を突破しました。
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