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スプーンで世界はすくえますか?  作者: 木林森
第一章 イスト編
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「バトルロイヤルですか?」27

「え、えーっと、優勝は⋯⋯ユウチーム!」


 突然の出来事に会場中がどよめいている。

 無理もない。なぜなら、どう考えたってバースの口からギブアップが出るような状況ではないから。むしろ、ギブアップするのは俺の方だと皆思っていたはず。現に、俺もそうしようと思っていた。故に、この事態は誰にも予想できなかっただろう。


「なんで⋯⋯」


 疑問に満ちる中、バースに尋ねる。

 あと数秒もすれば、俺はギブアップしていた。

 いや、そうじゃない。バースはギブアップする必要などないはず。なのに何故だ。

 尋ねられたバースは答える。


「納得いかねぇからだ。俺一人の力で勝ってこそ意味がある。だから、あれを俺の力で防げなかった時点で負けも同然。いや、厳密にはあれを受けても俺はまだやれたに決まってる。いいや、絶対にやれた。⋯⋯まあ、とにかくギブアップってのはそういうわけだ」


「あれ」とはおそらくフレイムのことを指すのだろう。

 遠回しに、水を差されたから興が冷めた、と言っているようだったが、ギブアップにはそういう理由があったらしい。


 ーーまあ、理由はどうあれ俺たちは、優勝してしまったようだ。


「それでは表彰にうつりたいと思います。上位三チームは中央に整列してください」


 アナウンスが入って、戦いは終わったんだな、と感じる。

 辺りを見回すと、立ち上がって歓声を上げる者や、大きな拍手をする者もいた。

 視線を下に落とすと、そこにはバースと無傷の二人。そして、ゆっくりと起き上がるロマンに、相変わらず倒れたままのエル。


「エル。もう、フリはいいんだぜ?」


「⋯⋯馬鹿言わないでよ。ピクリとも動けないわ」


「ははっ、そうか。待ってろ、今行く⋯⋯」


 冗談めかしてエルに話しかけた後、起こしてやろうとエルの方へ歩こうとした。が、立った時、体に異変を感じる。

 立ちくらみのように、目の前がぼんやりと。


「なん⋯⋯だ⋯⋯これ⋯⋯」


 ぼやけはますます酷くなり、遂には視線の先のエルすら、原型をとどめないくらいに曲がりくねって見えた。

 それどころか立ってることすら厳しくなり、気付けば、目の前には地面が映っていたように思える。

 ぐにゃりとしていてはっきりは分からなかったが、この場で、人以外に見えるものといえば地面くらいだ。

 そして、それが見えたかと思えば、今度は歪みが一気に収まり、代わりに真っ暗な景色が、俺の目を支配し始める。


「ユウ!」


「ユウさん!」


 ーー薄れゆく意識の中、微かに二人の声が聞こえた。

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