「バトルロイヤルですか?」27
「え、えーっと、優勝は⋯⋯ユウチーム!」
突然の出来事に会場中がどよめいている。
無理もない。なぜなら、どう考えたってバースの口からギブアップが出るような状況ではないから。むしろ、ギブアップするのは俺の方だと皆思っていたはず。現に、俺もそうしようと思っていた。故に、この事態は誰にも予想できなかっただろう。
「なんで⋯⋯」
疑問に満ちる中、バースに尋ねる。
あと数秒もすれば、俺はギブアップしていた。
いや、そうじゃない。バースはギブアップする必要などないはず。なのに何故だ。
尋ねられたバースは答える。
「納得いかねぇからだ。俺一人の力で勝ってこそ意味がある。だから、あれを俺の力で防げなかった時点で負けも同然。いや、厳密にはあれを受けても俺はまだやれたに決まってる。いいや、絶対にやれた。⋯⋯まあ、とにかくギブアップってのはそういうわけだ」
「あれ」とはおそらくフレイムのことを指すのだろう。
遠回しに、水を差されたから興が冷めた、と言っているようだったが、ギブアップにはそういう理由があったらしい。
ーーまあ、理由はどうあれ俺たちは、優勝してしまったようだ。
「それでは表彰にうつりたいと思います。上位三チームは中央に整列してください」
アナウンスが入って、戦いは終わったんだな、と感じる。
辺りを見回すと、立ち上がって歓声を上げる者や、大きな拍手をする者もいた。
視線を下に落とすと、そこにはバースと無傷の二人。そして、ゆっくりと起き上がるロマンに、相変わらず倒れたままのエル。
「エル。もう、フリはいいんだぜ?」
「⋯⋯馬鹿言わないでよ。ピクリとも動けないわ」
「ははっ、そうか。待ってろ、今行く⋯⋯」
冗談めかしてエルに話しかけた後、起こしてやろうとエルの方へ歩こうとした。が、立った時、体に異変を感じる。
立ちくらみのように、目の前がぼんやりと。
「なん⋯⋯だ⋯⋯これ⋯⋯」
ぼやけはますます酷くなり、遂には視線の先のエルすら、原型をとどめないくらいに曲がりくねって見えた。
それどころか立ってることすら厳しくなり、気付けば、目の前には地面が映っていたように思える。
ぐにゃりとしていてはっきりは分からなかったが、この場で、人以外に見えるものといえば地面くらいだ。
そして、それが見えたかと思えば、今度は歪みが一気に収まり、代わりに真っ暗な景色が、俺の目を支配し始める。
「ユウ!」
「ユウさん!」
ーー薄れゆく意識の中、微かに二人の声が聞こえた。




