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スプーンで世界はすくえますか?  作者: 木林森
第一章 イスト編
44/55

「バトルロイヤルですか?」25

「正直⋯⋯期待外れだ」


 残念そうにバースは言う。

 勝手に期待されて期待外れだと言われても迷惑な話だが、その言葉で俺は、改めて自分の立場を理解した。

 少なからず俺は、期待を抱かれているのだと。


 停滞していた人類を一歩先に進めた勇者の息子。それだけで期待されるには十分すぎる理由だ。

 きっと、息子も立派な功績を残すはず。人類の悲願を果たすはず。そんな期待が俺にはのしかかっているのだろう。

 現に、ユーシャでの知名度は国王に次いで、いや、それと同等のものだった。知らないものが珍しいくらいの。


 だが、俺は別に気にしてなかった。

 父のようになると決めたんだ。これくらいの期待は纏わりついて当然だ、と。

 でも、バースの言葉ではっとなった。

 この期待はーーーー今の俺にはとても大きな枷であると。


 一体、どれくらいの人が俺に期待しているのだろう。

 ユーシャだけでなく、この広い世界に少しずつ、俺が父、ユウシの息子だと、どれほど広まっているのだろう。

 広まれば広まるほど、それは期待へと変わり、俺に重くのしかかる。

 更には、バースのように少なからず俺に敵対心を抱く者もいるだろう。

 父親の功績に依存しているだとか、七光りだとか、良くないイメージを抱く者が。

 そしてそれも、無慈悲に俺に背負いかかる。


 ーーバースの言葉。迷惑な話だとは思った。

 でも、それよりも⋯⋯とても、悔しかったのが本当のところだ。

 今の俺には、それだけの目に見えないものを受け止めるだけの実力はとてもない。それは事実。

 だが、父を超えるには、この状況を乗り越えていかなければならない。

 だからこそ、今の自分の実力不足が悔しかった。

 動けなくなるまで仲間に頼り、更には傷つけてしまう。そうすることでしか、相手への勝機を見出せない自分が。


「さて、そろそろ宣言してくれねぇか? ギブアップを。悪いが俺には、動けないやつをいたぶる趣味はねぇからよ」


「⋯⋯たしかに」


「あぁ?」


「たしかに俺は、お前の期待には届かなかったかもしれない。実力不足だってのも分かってる」


「何言って⋯⋯」


「それでも⋯⋯今ここで負けていいことにはならない!」


 微かに動く右手。いける!

 俺は下がっていた右手をバースに向かって振り上げ、思いっきり叫んだ。


「フレイム!!」


「くっ! リバース!」


 勝ち誇って油断したが故に、バースは俺の目の前。

 咄嗟の攻撃を避けることはできなかったのだろう。

 だが、バースは知らない。今まで使わずにいた俺のフレイムが、取るに足らないものだと。


 勢いよく発動してしまった為、少し魔力を使い過ぎた。

 ただ、それもあって、いつものライターよりかは高火力。

 でも、とてもバースを倒せる程ではない。それどころか、当たりも、届きすらしない。


「⋯⋯はぁ? なんだそりゃ」


 その光景に驚嘆するバースだったが、その表情は、隠し持っていた切り札がとてつもなくしょぼかった、とでもいわんばかりの呆れ顔。

 だが、それでいい。

 ここまでくるのに大分時間はかかったし、たくさん傷も負った。

 それでも、やっと、思い描いていたシチュエーションに辿り着く。

 そして、これが正真正銘、俺達の、


「⋯⋯なあ、バース」


「あぁ?」


「お前今、『逆転』を使ったよな?」


「⋯⋯それがどうした」


「いや、なに、お前の勝利が⋯⋯敗北に逆転してなきゃいいと思ってな。⋯⋯ああ、横、気を付けろよ?」


「ーーっ!」


 最後の、作戦。

 ーー次の瞬間、大きな火の玉がバースを包み込んだ。

次で決着になります。

そして、長かったバトルロイヤルももう少しで終わり。

ここまで読んでくださった方には感謝しかありません。


誤字、脱字や、読みにくいとか、ここが分かりにくいなどのご指摘やその他答えられる範囲での質問、話の感想などもお待ちしております。


それでは引き続き、この作品をお楽しみください!


※余談ですがバースの能力、リバースについて一つ。本文中『』で囲まれているものの読みは「リバース」、それ以外は普通に「ぎゃくてん」と読んでいただければいいです。ややこしくてすみません。

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