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スプーンで世界はすくえますか?  作者: 木林森
第一章 イスト編
36/55

「バトルロイヤルですか?」17

「『逆転リバース』⋯⋯」


 たしかに言われてみれば、"事象の変更"ならもう少し応用が利きそうな場面も、全て真逆の反応を引き起こしていただけだった。

 そう考えると、"逆転"という発想も出るのだが、どうやら俺はそれを見落としていたようだ。


「⋯⋯それにしても、この短時間で見抜くなんて、やっぱりお前最高だな。ますます楽しくなってきたぜ。」


 そう言うバースであったが、その少し後、俺達の後方から、高く大きな声が響く。


「バースさん!」


 それは修道服の彼女であった。

 しかし、なぜ彼女達は駆け寄ることをしないのか。いや、それ以前にさっきの局面で手助けに入らないのも不自然だ。

 と、俺は思っていたのだが、その答えはすぐに分かる。


「あぁ!?」


「お怪我は大丈夫ですか!」


 優しくも力強いトーンでそう発する彼女。

 それに対するバースの返答はというと、


「心配する必要はねぇ! だから、そこから絶対動くんじゃねぇぞ!」


 荒っぽいものであった。

 そして、俺の気になっていた点もその返答の中に含まれている。

 どうやら、あの二人が動かないのはバースの指示らしい。

 なぜそんなことをするのかーーとも少し考えたが、こちらの答えに関してはすぐに分かった。

 戦闘中、一切走らなかったくらいだ。きっと、自分一人で十分ということだろう。


 返事をしたバースは、


「さぁて⋯⋯じゃあ、そろそろ本気でいかせてもらうぜ?」


 再び俺達の方に視線を戻すとそう言った。が、言葉の後半、今まで感じられていた余裕は感じられなかった。

 おそらく、さっきまでは本当に加減していたのだろう。

 言葉通り、ここからがバースの本気のようだ。

 ⋯⋯ったく、こっちは常に全力だってのに。


「へぇ。でも、ご自慢の『逆転』は既に見破ってるんだ。やっぱり早いうちにケリをつけておいた方がよかったんじゃねぇのか?」


 しかし、あくまでそれは悟らせないよう振る舞ってみせる。

 それに対しバースは、準備運動のように軽く手足をプラプラさせながら、


「たしかに、さっきは見事にやられちまったが心配いらねぇ」


 と答えた。そして、その後揺らしていた手足を止め、


「もう⋯⋯」


「⋯⋯?」


「次はねぇんだからよぉ!」


 そう言うと同時に、ものすごい勢いでこちらへ向かってくる。

 それも、先程までは全く使わなかった「走る」と言う手段で。


「ーーっ! 来るぞ!」


 ーーここからが、最終ラウンドの幕開けだ。

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