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スプーンで世界はすくえますか?  作者: 木林森
第一章 イスト編
34/55

「バトルロイヤルですか?」15

 三人で一斉にバースに襲いかかる。

 先頭は俺。勢いよくバースに向かっていく。

 ーーその間合いが数十センチになった時、バースの右足蹴りが繰り出された。

 それを俺は屈んでかわし、屈んだ体勢のまま距離を縮める。

 そして、バースの真下まで来ると、足を蹴り上げた。足版アッパーだ。


「ちぃっ!」


 後ろに身を引いてかわすバース。

 だが、これで終わりではない。

 屈んだ体勢から勢いよく立ち上がると、今度は脇腹めがけて右足蹴り。

 それをバースは左腕で防ぐ。


「いいのか? それで」


「あぁ?」


「ライトニング!」


「ぐっ!」


 咄嗟に左腕で足を振り払うバース。


「どうだ、さっきと同じくらいピリッときたろ?」


「ちっ! やっぱりさっきのもてめぇか!」


「これくらいで終わりだと思うなよ!」


 再び攻撃を開始する。

 しかし、二度も同じ攻撃を受けたからか、バースは攻撃を受け止めようとせず、全て回避する。

 そこからは互いに攻撃を繰り出しては避け、繰り出しては避けの繰り返し。状況は五分だった。

 だが、別に攻撃は当たらなくていい。専念するべきは俺が攻撃を受けないこと。

 常に攻撃を繰り出すことでやつの意識を俺に集中させる。

 そのためには攻撃をやめてはいけない。攻撃を受けて中断してはならないのだ。

 そんな考えの中、俺は一心不乱に回避と、そして攻撃という陽動を行う。


 ーーーーそろそろか。


 バースの右ストレートが思いっきり繰り出される。

 それを俺は避けることをせず、両腕で目の前にガードを作って受け止める態勢をつくる。その時、


「ライトニング」


 と呟いて。


「小賢しい真似しても無駄だ! リバース!」


 もちろん、バースが"リバース"と言ったため、ライトニングは"帯びていない"状態となった。

 だが、別にそこは問題ではない。大事なのは⋯⋯やつに能力を使わせることだ。

 直後、俺はバースの拳を思いっきりガードで受け止める。


「ってぇー⋯⋯」


 ガードしていたものの、その衝撃で後ろに倒れこむ。

 それに、やはり痛いものは痛い。

 しかし⋯⋯作戦は成功だ。

 俺のガードの構え。これこそが、作戦開始の合図である。


「ーーっ!」


 バースの足首は既にロマンの召喚した怪物により、掴まれていた。

 そして既に怪物はバースを地中へと引きずり始めている。


「くそがぁ!」


 陽動により、反応を遅らせることができた。

 もちろん、能力を事前に使わせたというのもあるだろうが。

 ⋯⋯だが、これしきで終わるやつではないと思っている。

 それも想定して、この作戦にはまだ続きがあった。


「リバァァァァァス!((ライトニング!))」


 想定ではもう少し埋まるはずだったが、そこはさすがのバース。

 気付くのが早かったせいもあって、埋まったのは足首まで。

 でも、これでいい。


「⋯⋯ったく、大したもんだ。厄介な能力だぜ。結果を変えちまうなんてな」


 ーー確証はなかったが気になったことがあった。

 それはライトニングを避けた理由。なぜ能力を使わなかったのか。

 そこから俺が導き出した結論は、"当たらない"という事象を"当たる"という事象に変えてしまうのではないか、ということ。

 ランダムに降り注ぐライトニングにエルのコントロールだと、フレイムと違って安易に判別ができない。

 そこで誤って発動しようものならそれは自傷と化してしまう。

 そういった理由から使わなかったのではないかと俺は推測する。


 そして、もう一つ。"効果を及ぼすものの取捨選択ができないのではないか"、ということ。

 こちらは、それまでに決定的な証拠がなかったが、今、はっきりした。

 やつがロマンの怪物を打ち消すと同時に、俺はライトニングを体に纏ったのだが、怪物と共に体の電気も打ち消されている。

 もちろん、バースは俺がそんなことをしていたなんて知らないだろう。

 つまり、やつの周囲のもの全てに効果は適用されるということだ。


 後者に関しては賭けであったが、こうもいい方向に転んでくれると、作戦は大成功と言えるだろう。


「ーーなぁ、バース」


「あぁ?」


「足元に気を取られてたようだが⋯⋯いいのか? それ」


 バースの頭上を指差して俺はそう言った。

 その指の先には、大きな黒雲が広がっている。


「ーーっ!」


 能力の発動タイミングでライトニングを使っていたのは俺だけじゃない。もう一人、エルがいたのだ。

 攻撃を慌てて回避しようとするバースだったが、その足は地面に埋もれていて、とっさの回避は不可能だった。


「⋯⋯言ったろ? 痛い目見るって」


 次の瞬間、無数の雷撃がバースに向かって降り注ぐ。

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