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スプーンで世界はすくえますか?  作者: 木林森
第一章 イスト編
31/55

「バトルロイヤルですか?」12

「ネクロ⋯⋯マンサー⋯⋯」


 バースの言葉に俺は少なからず衝撃を受けていた。

 ロマンがネクロマンサー?

 たしかに、あの不思議な技は魔法とはまた違ったものだ。

 それに、ユーシャにあった文献にも"死霊使い(ネクロマンサー)"は特殊な召喚術を用いる者達であると書かれていた。

 それらを照らし合わせれば、ネクロマンサーである可能性は十分にあるだろう。

 それでも、ロマンがネクロマンサーであるはずはないのだ。

 だって、ネクロマンサーは⋯⋯俺がユーシャにいた頃に聞いた話では⋯⋯


「にしても驚いたぜ。生き残りがいたとはな」


 すでに絶滅しているのだから。


 そんな状況の中、痛みに耐え、俺は立ち上がる。


「ーーっ! つっ!」


「ちょっとユウ! まだ動いちゃ⋯⋯」


「いかねぇと⋯⋯」


「え?」


「あいつが何者であろうと、今は同じチームの仲間だ。助けに行かねぇと」




「ネクロマンサー? 私には何のことだか分かりませんね」


 ユウが立ち上がっていたその頃、二人の間ではなおも会話が続けられていた。


「あくまでとぼけるってか。まぁいい。確かめる方法は他にもあるからな」


 そう言うとバースはロマンの顔ーーーーその面に向かって手を伸ばし始める。


「ネクロマンサーってのは目の色が片方ずつ違うんだろ? その面外して確かめさせてもらうぜ」


 バースの手はロマンの面にどんどん近付いていく。

 地面に突っ伏したままのロマンは、腕に力を込め、まるで面に触れるなと、そう言わんばかりにバースに向かって杖で攻撃した。

 だが、その攻撃はバースの空いていた左手によって防がれてしまう。


「おっと、あぶねぇ」


「ーーっ!」


 杖を手元に戻そうとするロマンだったが、その杖の先端はしっかりと握られていて、動かすことができない。

 そんな中、刻一刻とバースの手は面に近付く。


 ーーーー頼む、間に合ってくれ!


 そして遂に、面に指先が触れた、その時だった。


「ロマンから離れろぉ!」


 駆けつけたユウがバースに殴りかかる。

 バースはそれに気付くと、ロマンの面から手を退けて、その拳をかわすのだった。



 ーーなんとか間に合ったと、そう思っていた俺だったが、殴りかかった拳はあっさり避けられてしまっている。

 それどころか、勢いよく殴りかかりすぎて、このままじゃ地面に一直線だ。

 どうする。いや、考えてる暇はない。そうしてる間にも地面に近づいているのだから。

 とにかくここは、感覚に任せるしかない!


 倒れゆく中、俺は思いっきり右足を前に出してブレーキをかけた。

 そして、すぐさま左足をその少し前に置くと、フリーになった右足で時計回りに回し蹴りをくらわす。

 しかし、


「そんな無理な体勢から俺に当たると思ったのか?」


 軸にしていた左足に足払いを受けて、回し蹴りはバースに届く前に防がれてしまう。

 さらに、軸を失った俺の体は頭から地面に向かって倒れていく。


「まだだ!」


 倒れていく中、頭より先に両手を地面に付けると、頭は付いていないが、ヘッドスピンの要領で再び回転蹴り。

 だが、これもあっさり右腕で防がれてしまう。


「それはさっき見たぜ!」


 そして、先程と同じ展開が訪れる。

 そう。無防備になった俺のボディへの蹴りだ。

 だが、バースが言うように、俺もこれはさっき見た。同じやられ方を二度もしてたまるものか。


 対策は立ててあった。この回転の威力を利用して少し先の地点へと地面から手を離し回避する。と。

 が、いざ実行に移ろうとした時、アクシデントが襲う。


「つっ!」


 最初に受けたダメージだ。


 まずい、今ので回避がーーーー。


 これによってワンテンポ遅れ、回避は厳しくなった。

 どうする。何かないか、ここから何か、今すぐできる対策は!

 一瞬の間に俺は必死に考えた。

 スプーン? いや、スプーンでどう回避する! それに取り出している暇もない。

 他に俺にできることーーーーフレイム。いや、あんなライターで何ができる!

 他に⋯⋯他に⋯⋯⋯⋯っ!

 いちかばちかの賭けだったが、俺はこれに託すことにした。


「ライトニング!」


 刹那、バースの蹴りが俺に直撃する。

 しかし、どうやら作戦は成功したようだ。


「って!」


 ライターと、もう一つ俺にはあったんだった。静電気が。

 回避するのは無理だと判断した俺は、威力を殺すことにシフトチェンジした。

 そして、その思惑通り、触れた瞬間の静電気のおかげで、バースの蹴りの威力は弱まっている。もちろん、飛ばされた距離は短く、ダメージもほとんどなくて、すぐに立ち上がることができた。


 立ち上がった俺だったが、その目に映っているのはバースの後ろにいる二人。

 頼むぜ、お二人さん。


「ちっ、何だ今のは⋯⋯っ! ははっ! いいぜ、いいぜお前ら!」


「さっきはやってくれましたね⋯⋯次は、こちらの番です」


 さて、第二ラウンド開始だ。

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