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スプーンで世界はすくえますか?  作者: 木林森
第一章 イスト編
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「バトルロイヤルですか?」10

「リバァァァァァス!!」


 バースがそう言った時、信じられない光景を目にする。

 近距離ーーーーわずか数十センチ程の距離から放たれたフレイムが、その瞬間垂直に曲がり上空へ向かったのだ。


「なっ!」


 そして、驚くべきことはもう一つあった。


「おらぁぁぁぁぁ!」


 フレイムが垂直に逸れた直後、バースが殴りかかってくる。

 しかし、本来ならばそれは起こり得ない事態だったのだ。

 何故なら俺は、フレイムが放たれる直前、やつから離れていたし、多少とは言えスプーンの拘束を解くのにも時間がかかるはず。

 それを一瞬で可能にしてしまうのはどう考えても不自然だ。


「くっ!」


 しゃがみこんではいたものの、バースの拳をかわす。

 その後、避けた勢いをそのまま利用して地面に両手をつき、体を回転させて反撃の回し蹴りをくりだした。

 だが、それはあえなく左腕で防がれ、そして、


「ーーうっ!」


 地面に両手をつけ、回し蹴りをくりだし、無防備になっていた俺の体は、もろにバースの右足蹴りを受ける。

 おそらく十数メートルは飛ばされただろうか。

 浮いていた俺の体は地面に叩きつけられる。


「ユウ!」


 そこへエルと、


「大丈夫ですか?」


 ロマンが向かってくる。


「ああ、なんとかな」


 と返答したが、正直痛かった。

 あいつのことだ。手加減なんてものはないだろう。

 そんなあいつはと言うと、


「さぁて、次はどんな手を見せてくれるんだ?」


 相変わらず余裕の歩きっぷりだ。


「くそっ、作戦失敗かよ」


 最初から期待値は低かったが、それでも少しのダメージは与えられると思っていた。

 それなのに、ここまで圧倒されてしまうと、これはいよいよお手上げかもしれない。

 そんな落ち込み始めの俺をフォローするようにエルが声をかける。


「そんなことないわ! 私はいい作戦だったと思うもの!」


「そう言われてもな⋯⋯」


 そして、この男も。


「たしかに、さっきのはよかったぜ。ちょっとひやっとしたしな。だがそれだけだ。俺の勝利には影響しねぇ」


「はっ、褒めてるつもりかよ。作戦ってのは成功しなきゃ意味がねえんだ」


「そうか。じゃあ次は成功する作戦を立ててくれよ」


「⋯⋯言われなくてもそうするつもりだ」


 とは言ったものの、他にいい作戦が思いつかない。

 さっきのも割と自信作、いや自信作(戦)と言うべきか?

 運要素はあったものの、割といけると思っていた。

 たしかに、エルのフレイムを近距離で放てた点では作戦の一連の流れは成功だ。

 しかし、この作戦の目的は「バースに攻撃を当てること」である。

 その点で言えば作戦は失敗だ。


 それにしても、一体何をどうすれば、ロマンの攻撃を無効化し、エルのフレイムを逸らし、俺の拘束を一瞬で解くことができる?

 そんなことを考えながら俺は、さっきまでバースが立っていた地点を見た。


「ーーっ!」


 そこにあった光景はーーーーまっすぐ地面に突き刺さった二本のスプーン。

 おかしい。俺はスプーンを曲げていたはずだ。

 それに、いくら力で強引に外したとしても、あそこまで綺麗に、まるで新品のようにまっすぐするなんて人間業じゃない。

 これも⋯⋯攻撃が当たらないのと何か関係があるのか?


「おいおい、次は何だ?」


 そう言うバースの目の前にはロマンが立っていた。


「おい、ロマン、何を⋯⋯」


「ユウ!」


 話している途中、痛みに襲われ言葉が詰まってしまう。

 まだ痛みはなくならない。軽くはなったが時折強い痛みが襲う。

 そんなことより、なぜロマンはやつの前に、俺達の前に立っている?

 これといった作戦は伝えていない。まさか⋯⋯負傷した俺を守るためか?


「お前の力は俺には通用しねぇぞ?」


「えぇ、わかっています。ですが⋯⋯時間稼ぎくらいにはなります!」


 その瞬間、ロマンが杖を掲げる。

 すると、今度は手だけではなく全身、まるでミイラのような怪物が地面からたくさん現れた。

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