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スプーンで世界はすくえますか?  作者: 木林森
第一章 イスト編
26/55

「バトルロイヤルですか?」8

 笑みを浮かべてこちらへ向かってくるバース。

 ロマンの攻撃が効かない? いや、そんなはずは⋯⋯


「もう一回だロマン!」


「わかりました」


 そう言って再び杖を構えるロマン。

 そして、バースの足元からはまた手が現れた。が、


「リバース」


 バースがそう言うとまたもや手は消えてしまった。


「くそっ! エル!」


「任せて! フレイム!」


 放たれるフレイム。だが、バースは進路を変えることなくまっすぐこちらへ歩いてくる。


「当たらねぇもん撃って何がしてぇんだ?」


 その言葉通り、エルのフレイムは全く違う方向へ逸れる。

 見破られていたのか。エルのコントロール能力を。


「もう一回だ! 次は当てろよ!」


「分かってるわよもう!」


 再び放たれるフレイム。

 そして、なんと今度は真っ直ぐバースの方へ向かっていった。


「やった! やったわユウ!」


「ああ、そうだな! これであいつも⋯⋯」


「⋯⋯リバース」


 が、真っ直ぐ向かっていたフレイムはバースに当たる直前に進路を変えた。


「なっ!?」


 突然の出来事に俺はすかさずエルの方を見る。


「ち、違うわよ! 私じゃない!」


 そんな中、フレイムを回避したバースが向かってくる。


「へっ、全部が全部当たらねぇってわけじゃないみてぇだな」


 その言葉に俺は違和感を覚えた。

 全部が全部当たらないわけではない?

 ということは今のは当たっていた? じゃあ、なんで⋯⋯


「ユウ!」


「何ぼーっとしてやがんだおらぁ!」


「⋯⋯っ!」


 しまった、つい考え事に集中していて⋯⋯

 俺は咄嗟に、殴りかかってきたバースの拳を避けた。


「ちっ!」


 あっぶねぇ。持ち前の身体能力があって助かったな。

 なんて考えてる場合じゃない。バースはもう目の前だ。

 しかし、俺達の攻撃はことごとくこいつに通用してない。

 これは非常にまずい状況だ。こんな時はまず⋯⋯


「もう一回攻撃だ! 一旦距離を取るぞ!!」


「えっ、でも⋯⋯」


 横からエルが口を開く。


「当たらなくたっていい! とりあえず牽制するんだ! ロマンも頼んだぞ!」


「わかりました」


 俺達は後方へ下がりながら牽制を開始する。

 その最中、うちの一番の戦力、ロマンも攻撃するのだが、


「ワンパターンじゃいい加減飽きてくるぞ? リバース!」


 やはり通用しない。

 だが、そんなことは百も承知だ。

 俺がやろうとしていたのは、


「おいエル!」


「なによ!」


 ロマンが牽制している僅かな時間で、俺はエルに一つの作戦を伝えた。


「え! でもそれって⋯⋯」


「大丈夫だ! お前ならできる!」


「でも⋯⋯」


「自分を信じろ! 俺はお前を信じてるから言ったんだ!」


「ユウ⋯⋯わかったわ!」


「よし、頼んだぞ!」


 後ろでは相変わらずロマンが時間を稼いでいた。


「どうだロマン」


「駄目です。何をやっても全く通じません」


「そうか、なら次は⋯⋯」


 次いで、ロマンにも作戦を伝える。


「⋯⋯わかりました」


「おいおい! こんなもんかよお前はよぉ!」


 そんな中、相変わらずバースは歩いてこちらへと向かってくる。

 さっきから一度も走っていないのは、きっと、余裕の表れだろう。

 俺の方が強い。という強者の余裕。

 だが、そんな余裕がいつまで続くかな?

 ここからはーーーー俺達の反撃だ!


「じゃあ⋯⋯いくぞ二人とも!」


「はい」


「ええ!」

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