「バトルロイヤルですか?」7
「さあ、いよいよ決勝戦だぁ!」
アナウンスが入ると、ゲートの向こうでは大きな歓声が上がっている。
「いよいよね」
「ああ、そうだな。もう体調は大丈夫なのか? エル」
「ええ! ばっちりよ!」
二回戦以降しっかり休息をとったため、エルは本調子に戻っていた。
「そうか」
そう言って、俺は最後にロマンとエルの方を見てこう言った。
「それじゃあ、いくぞ!」
「それでは、ここまで勝ち上がったチームの紹介だぁ!」
そのアナウンスと共に目の前のゲートが開かれた。
俺達は中央に向かって歩いていく。
「まずはユウチーム! 一回戦では番狂わせを起こしその後も順調に勝ち進んだ、まさに今大会のダークホース! さらに二回戦からはロマン選手一人で相手を圧倒するなど、まだ底が見えないチームだ!」
歩いている途中、ご丁寧なアナウンスが入ったが、一つ訂正してもらいたい。
底ならとっくに見えている。それも一回戦で。
ロマン一人で圧倒したのではなく、ロマン一人だからこそ圧倒できたのだ。
俺達が加勢しても足を引っ張るだけだったろうしな。
そこのところを未だにこの場にいる俺達以外が誤解しているらしい。
そうこう思っているうちに向かいのゲートが開かれる。
そして、そのゲートの中から出てきたのはーーーーやはりあいつだった。
「続いてはバースチーム! こちらも初出場で決勝戦まで上がってきた、やはりダークホースという言葉が似合うチームだ!」
アナウンスと共にこちらへ向かってくる。
バース。名前を聞いてもやはり何の関係も思い出せない。
「そしてなんと、こちらもバース選手たった一人で決勝戦まで勝ち上がってきているため、まだまだ底が知れない!」
「⋯⋯なっ!」
あいつ一人の力で勝ち上がってきただと!?
⋯⋯これはちょっとやばいかもしれないな。
「よぉ、ちゃんとここまできたみたいだな」
バースが話しかけてくる。が、そう言うバースは少し離れたところにいた。
「ああ。それにしても何でお前はそんなところにいるんだ? バース」
何となく予想はついていたが、挑発も兼ねて尋ねることにした。
「念のためだ。一回戦みたいな襲撃を受けるかもしれないからな。まあ、俺は別に目の前に行ってやってもいいんだが」
「へぇ、そこまで言うなら来てくれよ」
「ふん、いいぜ。後悔するんじゃねぇぞ」
そう言ってこちらへ向かってくるバース。
挑発は成功のようだな。あとはエルがしっかり当ててくれれば⋯⋯
だが、バースはこちらへ来る途中に引き止められる。
引き止めたのは修道服の彼女だった。
「駄目ですよバースさん。もし何かあったら⋯⋯」
「あぁ? 俺に何かあったらってか? そんなことあるわけねぇだろ。それにお前達だって俺の力を⋯⋯」
「それではいよいよ決勝戦を開始します! 最後まで盛り上がっていくぞぉぉ!」
バースの話を遮るようにアナウンスが入る。
観客の歓声もアナウンスの直後、さらに勢いを増す。
それは一回戦の番狂わせの時よりも大きく、おそらく今日一番の盛り上がりだろう。
「ちっ! おい! 離せ!!」
そんな中、バースは相変わらず袖を掴まれていた。
「駄目です! 私は心配なのです!」
「余計なお世話だ!」
なかなか離してもらえずだんだん不機嫌になっていく。
そして、
「それでは決勝戦⋯⋯」
開始の合図が始まろうとしていた。
正直、修道服の彼女のしたことは誤算だ。
あいつが目の前に来てくれないのならエルの襲撃は使えない。
だが、それなら別の手を使えばいい。
そう、例えば、
「はじめえぇぇぇぇ!!!」
揉めているうちに襲うとかな!
「いけ、ロマン!」
そう言うと同時にロマンは杖を構えた。
「ちっ!」
バースのやつは気付いたみたいだがもう遅い。
お前の足元には既に手が見えているからな。
数秒後にはお前はもう地面の中だ。
この勝負、俺の勝⋯⋯
「⋯⋯リバース」
その瞬間、バース達の足元にあった手が消えた。
「なっ!!」
そして、袖を掴んでいた手を離されたバースはこちらへ向かってくる。
「いきなりやってくれるじゃねぇか。だが、それでこそ倒した時の喜びが増す! さぁ、もっと楽しませろ!」
まずいな。ちょっとじゃなくて、結構やばいかもしれない。




