「バトルロイヤルですか?」2
ーーーー「すごい人の数だな」
俺達は闘技場の前に来ていた。周りはたくさんの人で溢れている。
「いい? 私達の目的はただ一つ、優勝あるのみよ!」
「はいはい、わかってるって」
相変わらず賞金が目当てのエル。だがまあ、その気持ちは分からなくもない。昨日みたいにヘトヘトになりながら宿を探すのは、できればもう避けたいからな。
「何よ、本当に優勝する気あるの?」
「ああ、昨日よりかはあるよ。おばちゃんにも恩返ししたいしな」
「⋯⋯そうね」
昨日の俺と違う点が一つ。それは誰かの為に優勝しようと思っているということ。
昨日はあくまで俺とエルの資金稼ぎだけのつもりだった。だが、今は無償で宿泊させてくれたおばちゃんや、
「⋯⋯どうかしましたか?」
理由は分からないが、ロマンの為にも優勝する必要がある。
「いや、別に⋯⋯とにかく勝つぞ!」
「⋯⋯? はい」
「ねえユウ、参加者は向こうだって」
「⋯⋯よし、行くか」
こうして俺達は、控え室へと向かう。
控え室には既におよそ百人くらいの参加者がいて、それぞれが来たるバトルロイヤルに向けて準備運動などをしていた。
「すげえな、これ全員参加者かよ」
その時、誰かと肩がぶつかる。
「おっと、わりぃ⋯⋯ん?」
「あ! あんた、あの時の!」
「おお! 誰かと思ったらお嬢ちゃんの連れじゃねぇか!」
「いや、正しくはこいつが俺の連れなんすけど」
「⋯⋯はっはっは! そりゃすまんな。あれから少し気になって見てたんだが、振りまわっされぱなしだったからつい連れかとな」
「⋯⋯そういうやつなんですよ、こいつは」
「そうか、まあ、お互い頑張ろうや!」
そう言って男は参加者の中に混じっていった。
「⋯⋯あの人は知り合いですか?」
「いや、お前を誘う前に何人か声をかけててな、そのうちの一人だよ」
「そうだったんですか」
そういえばあの人も参加者だったか。もしかしたら戦うことになるかもしれないな。
「ねえ、それよりさっきの聞いた? ユウ、あなた私の連れだって」
「たしかに文字通り連れ回されてはいたから、そう見えたのかもな」
「まあ、なんなら本当にこれからは連れってことでもいいのよ?」
「いや、遠慮しておくよ」
「そうよね、断る理由が⋯⋯って何でよ!」
当然だ。パーティーになったのはあくまで成り行きであって、こいつからパーティーメンバーにならないかと誘われたら断るに決まってる。攻撃が当たるかどうか運次第みたいなやつだからな。
「ふっ」
「あ、今笑ったわね!」
「ええ、一体どこからそんな自信が湧いてくるのかと考えていたら思わず」
「⋯⋯自信なんて見ればわかるでしょ、このプロポーション抜群の美少女に誘われて断らない者はいないわ」
「今、断られましたが」
「そ、それは⋯⋯きっと照れてたのよ!」
「照れてないぞ?」
「いや、照れてた! 絶対!」
「だから、照れてな⋯⋯」
「自分に自信があるのは分かりました。ですが、そんな人が洗面所で⋯⋯」
「ーーっ!! 何でそれを!」
「偶然見かけましたので」
「⋯⋯ん? 何かあったのかロマン」
「はい、実は⋯⋯」
「もうこの話はおしまい! 私はユウのパーティーメンバー、連れよ! はい、解決!」
「は? 何だよ急に⋯⋯」
「あなたももういいわね? この話はおしまい!」
「⋯⋯分かりました」
エルはロマンの手を引いて、そそくさと前の方へ歩いていった。
ったく、何があったってんだ一体。
よく分からないまま、前に行った二人に合流する。
そのすぐ後に参加者の入場合図がかかり、俺達は闘技場の中心、闘技スペースに入場した。
ーーーー「さあさあ、皆さん! いよいよバトルロイヤル開始となります!!」
放送席からそうアナウンスが入ると、たちまち円形に取り囲む観客席から歓声が湧いた。
「⋯⋯まずは今一度、選手の皆さんにはバトルロイヤルの説明をさせていただきます。試合形式はトーナメント、そして、相手チームを行動不能、または気絶、もしくは相手チームのギブアップ宣言が出た場合、勝ちとなります! もちろん、殺傷行為は認められていません! それでは、抽選でトーナメントを決定したいと思いますので、各チームの代表は前へ!」
俺は前へ出て、くじ順を待つ。右端側にいた俺は、左端から始まったくじをしばらく待った。
そうして、ほとんどが引き終わった後、俺の番が回ってくる。
差し出された四角い箱に手を入れて、中に入っている紙をかき分ける。たしか前にもこんなことがあった気がするな。
だが、今回はただの番号を引くだけ。別に気負うことはないはずだ。
そうして俺が引いたのは、一番の紙。くじを係りの者に渡し、元の場所に戻る。
「⋯⋯どうだったの!?」
「一番だとさ。後は対戦相手だが⋯⋯まあ、こればっかりは運だろ」
そう。あくまで抽選はくじ引きによるもの。結局は運が絡むと思っていた。だからこそ、その言葉を借りるのならば、この後の展開はまさしく不運と言うべきものだろう。
「参加者全員がくじを引き終えたので、今からトーナメントを発表していきたいと思います!」
前に大きく貼り出されたトーナメント表に、各チーム代表者の名前が書かれていく。
「次、一番、ユウチーム」
一番に俺の名前が書かれる。
それからも記入は続くが、半分以上を過ぎた後も、隣の二番はまだ空白のままだった。
さらに、残り五組となるも、まだ二番に名前はない。
「⋯⋯二十三番、バースチーム」
そこから一つ、また一つとトーナメント表の空白が埋められていく。
そして残り二組となった時に、その時は訪れた。
「二番、イアンチーム」
俺達の初戦はイアンチーム。一体、どんなチームなんだ?
そう思っていた俺だが、意外にも早く、敵チームの情報は訪れた。⋯⋯できれば聞きたくはなかったけどな。
「⋯⋯チーム。⋯⋯さて、これで全チームが出揃いました! 今回の参加チームは全部で三十二組! 今回も前回優勝のイアンチームが優勝を勝ち取るのか!? それともダークホースが現れるか!? 一戦たりとも目が離せないぞぉ! ⋯⋯それでは! ここにバトルロイヤルの開始を宣言します!」
さらっと流れた敵チームの情報。
しかし、その情報はとても聞き逃すことの出来るものではなかった。
「⋯⋯ゆ、優勝チームだと!?」
どうにも、俺のくじ運というものは恵まれてはいないみたいだ。




