「この少女は誰ですか?」1
町の入り口まで来ると、見張りの兵士が二人立っていた。
俺達はその間を通るようにして町の中へと入っていく。
【冒険者の町 アドベント】
ーー町の中はたくさんの人で賑わっている。
そして、そのほとんどが装備を身に付けていた。
「ここが、冒険者の町か。村で聞いた通りどこもかしこも冒険者ばかりだ」
「⋯⋯⋯⋯」
町に入ってもエルはこんな調子だ。
「なあ、元気出せよ。お前の気持ちは分かるが、仕方なかっただろ?」
「そうだけど⋯⋯」
返事をしながらもうつむいたままのエル。なんとか励ましてやりたかったが、所持金がゼロとなり、今晩の宿すら確保できない状態で、何と言ってやればいいのか分からなかった。
「⋯⋯ほら、見てみろよ! ここにはたくさんの冒険者がいる。事情を話せば助けてくれるかもしれないぞ?」
「⋯⋯そうね」
ーー駄目だ。完全に放心状態に入ってやがる。簡素な返事しか返さないエルと、気まずい雰囲気の中歩き続ける。
そして、前を見ず歩いていたエルは、前から歩いて来る人に気が付かず、ぶつかってしまった。
ーー当たった相手は背丈が小さく、大きなフードで顔は完全に覆われていた。
「あ、ごめんなさい」
相変わらず気の抜けたような声で謝るエル。すると相手は、
「⋯⋯まったく、どこ見て歩いてるんですか」
とだけ言うと、行ってしまった。
「おい、大丈夫か?」
いつもならすぐに言い返すであろうエルが、何も言い返さなかった事に驚きつつ、そんな言葉をかけた。
返ってきたのは、
「うん、ごめん」
の言葉だった。いつもと違って素直なエルに俺は
「⋯⋯ったく、気を付けろよ?」
としか言えなかった。
らしくない、こんなのいつものこいつじゃない。
ーーそれからしばらく歩くと町の中心部の闘技場の様な場所へ着いた。
中にはたくさんの人が溢れている。
「何だ? 何かやってるのか?」
中へ入るとその大人数の理由が分かった。皆、上にぶら下がっている大きなモニターを見ていたのだ。
何が流れているのか気になったので、俺も見てみる。
「ーー冒険者のみなさん? 今回も遂にやってきました! ⋯⋯その名も? バトルロイヤルぅぅ!」
モニターに映るナレーターらしき女性がそう言うと、その場にいた者達から大きな歓声が上がる。
バトルロイヤル? なんだそりゃ。
「知ってる人も知らない人も、ルール説明! バトルロイヤルとは、旅する冒険者一同が、それぞれの実力を競い合う祭典よ! 優勝者には多額の賞金と副賞が与えられるわ! 競技内容は純粋なトーナメント戦! 参加希望者はそこに置いてある紙に署名して提出ね! 以上!」
言い終わると画面は消えてしまった。その直後からそこにいた者達は、こぞって申し込み用紙を取りに行く。
それにしても賞金⋯⋯か。貰える貰えないはともかく、これで少しでも元気出してくれるだろうか。
「⋯⋯はは、賑やかだな」
とりあえず軽い話題から本題を振ろうと思い、横にいたエルに話しかけた。
ーーーーが、横にはもうエルの姿はなかった。
「⋯⋯あれ? おい、エル?」
どこにいったんだ? 辺りをキョロキョロと見回すがエルの姿はない。
と、その時、前の人ごみの中から低い体勢でエルが出てきた。
「ふぅ⋯⋯」
「おまっ! 何でそんなとこから!」
そこにいたエルは先程とは打って変わって元通りになっていた。
「何でって⋯⋯これよ」
そう言ってエルが俺に見せてきたのは、申し込み用紙だった。
「それって⋯⋯まさか⋯⋯」
「そう! 出るのよ!」
ーー訂正しよう。元通りではない。むしろパワフルさが増していた。
「何で急に⋯⋯」
「もちろん賞金に決まってるじゃない! ほら、早く書いて!」
変わり身が早いやつだ。だがまあ、元気になってくれてよかった。
差し出された紙を手に取り、書いてある内容を目にした時だった。
「おい、これ⋯⋯」
「どうしたのよ⋯⋯っ!!」
そこに書いてあったのはこうだ。
ーー三人組のパーティーを組んで参加者の名前を署名してください




