「プロローグですか?」
【??? 山頂】
ーー轟音が鳴り響く。
周囲には煙が立ち込め、煙の奥からそいつは近付いてくる。
「どうした? もうおしまいか?」
その声と共に煙の中から放たれる数発の魔弾。俺はそれらを回避し、やつとの距離を一定に保つ。
こいつは今まで戦ってきたやつらとはレベルが違いすぎる。
つい先程までは勝てそうな勢いだったってのに、瞬く間に戦局が変わってしまった。遊ばれてたってわけか。
辺りには俺の仲間が二人倒れ込んでいる。やつの一撃で二人ともこの有様だ。たった一撃で。
かくいう俺も、瀕死だった。紙一重で直撃は免れたものの、直撃していたら俺も今頃、この地べたに這いつくばっていただろう。
「もっと私を楽しませてくれたまえ!」
不敵な笑みを浮かべながら、やつは着々と近付いてくる。
何度も攻撃で距離をとろうと試みているが、すべてをねじ伏せ、やつは一歩、また一歩、こちらへと歩み寄ってくる。
実力が身に付いてきたと思った矢先、この実力差だ。勘弁してくれ。
魔王に近しい存在ってのは、こんなに桁違いな強さなのか。
さっきまでの、浮かれていた自分を、殴り飛ばしてやりたいよ。まったく。
「少年よ。もう万策尽きたのかね?」
ーーもう駄目だ。太刀打ちできない。少しずつ縮まる差に比例して、俺の中の絶望が膨らむ。
くそっ! 俺にもっと力があればーーーー仲間を守れたか? こいつを倒せたか?
ーーああ、何だって俺は、こんな能力なんだ。