走馬灯
ふとこれまでの人生を走馬灯のように振り返る。
無邪気に遊んでいられた幼稚園。
思えば人生においてあの瞬間が一番楽だったのだろう。
社会の基本を学んだ小学生。
あの頃は本気で友達を百人作ろうと思っていた。
少し大人になった中学生。
あの時、自分は特別な何かだと、他の人とは違う隠された力が眠っているとか痛々しいことを思ったっけ?
本格的に将来を考え始めた高校生。
大学か就職かで悩んだっけ?
初めて彼女ができた大学生。
成人式に懐かしい顔に会えてうれしかったな。
そうこうしている内に四十、五十とだんだん数が増えていく。
六十を超えたあたりで異変に気が付いた。
どこか具合が悪いのだろうか?
七十、八十、そしてついに九十になった時、ボクは死を予感した。
隣を見ると彼女が無表情に笑っていた。
そうか。
そうだったのか。
キミだったんだね。
ごめんよ、浮気なんかして………。
謝るから。
だからどうか、__________この車を止めてくれ!
ブレーキの壊れた、ボクたちを乗せた車は猛スピードのまま壁に衝突したのだった。