ストーカーから隠密にジョブチェンジ。
突然私を異世界に誘う神様。
さすが神様。冗談も神がかっている。
「何を上手いこと言ってるのさ。異世界トリップってやつ知らない?ラノベ…なんて読まないか。
ほら、こっちじゃまた誰かに襲われるかもしれないでしょ?でも僕の世界なら魂が強い人しかいないから、君を見てもせいぜいポッとなるくらいだよ!」
ポッとなるって何なんだ。それよりも聞かなきゃいけない事がある。
「……宮田くんは、そこで生きているんですか?」
「うん。彼には役割があってね。大変だと思うけど生きているよ」
嬉しくて涙が出そうになる。例えどんな世界だとしても、彼が生きているならそれでいい。
大変?役割?
「ああ、僕の世界は剣と魔法のファンタジーってやつなんだ。文明は中世くらいなんだけど科学の代わりに魔法が発達している」
「腕輪物語みたいな?」
「そうそう。そして……魔物とか魔王がいるんだ。今すぐじゃないんだけど、彼はその討伐に加わる事になってる」
「そんな!!そんなのないです!!ひどい神様!!」
「僕の管轄外なんだよ。世界の戯曲は僕にはどうにもできないんだ」
どうしよう。どうすればいい。
私は彼を助けたい。彼に救われた命なら、彼を助けることに使いたい。
そして今度は……私が彼を守りたい。
「すごいね…こんな強い魂の光は久しぶりに見たよ…気に入った。君が上手く僕の世界で力をつけられるように少し手を貸そう。彼の願いを受け取れない代わりにって事で」
「お願いします!」
「君の今ある力は『魅了』と『隠密』…?何でこんなのがあるの?」
「顔隠して生きてきたから?ストーカーもしてたし?」
「ぷっ…あははははっ、もう本当に君って面白いね!可憐な乙女が隠密って!!」
「わ、笑わないでください!」
「あー、久しぶりに笑えたー。でもこれで君の行動を定めることが出来るね」
「魅了と隠密で?」
「そうそう。世界を渡った後の、君のステータスを見せよう」
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名前:マイコ
年齢:10
レベル:1
HP:500
MP:500
魔法:隠密の心得(隠遁、火遁、水遁、地走り)、土魔法、精神魔法(魅了)
加護:隠者の神、美の神、大地の神、渡りの神、ガイアの神
称号:強き魂を持つ者、理を持つ者の守り手
適性職業:隠密、吟遊詩人
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「体力(HP)と魔力(MP)は高めだよ。体を強くするにあたって年齢は若返る。宮田一之介も若返ったから年齢は近いと思うよ。レベルは魔物倒すか魔法を使い続けるとあがる。魅了あたりがオススメ」
「職業の隠密って?吟遊詩人って?」
「君の元々持ってる資質から割り出したものだよ。隠密はスパイみたいなもの。敵の情報を得たり、敵を撹乱させたりね。吟遊詩人は今でいうネットニュースみたいなのを歌で伝える情報が全ての職業だ。隠密なんてバレたら大変だから隠れ蓑にはちょうど良いかもね。すごく危険だから…やめるかい?」
「やめません!」
「うん。いい子だ。ステータスは他の人に教えないこと。ほとんどの人の加護は一つあるか無いかなんだ。君の隠密の心得っていうのもレアだよ。土魔法と精神魔法は使える人が多いから大丈夫だけど…」
「わかりました」
「君はまず王都に入る。孤児の君は教会から紹介されて『森の憩い亭』というレストランで働くことになる。そこで出会った吟遊詩人に弟子入りするといい。その人なら君の資質に気づき伸ばしてくれるから」
「森の憩い…吟遊詩人…」
「そのレストランには冒険者も多く来る。身分の高い人も来る。きっと情報は集まるよ」
情報が集まれば、宮田くんの事も分かるかも。魔王の動きとかも…。
うん。確かに私はバシバシ戦えるタイプじゃないけど、ずっとやってた『人目を避けるスキル』なら誰にも負けない!
「それよりもさ、君ってずっと下向いてたでしょ?だから大地の神の加護がついたって……ぷぷっ……面白すぎるよ!!あっははははは!!」
それ、私はぜんぜん面白くない!!
お読みいただき、ありがとうございます!
やっと少し明るくなりました(内容が