私がストーカー(?)になった理由。
よろしくお願いします。
思えば私、岡崎麻衣子は小さい頃から変な人達に好かれてきた。
近所のおじさん、隣のお兄さん、塾の先生、同じクラスの男子……皆なぜか私に付きまとうようになったのだ。
私は人が怖くなって、前髪を伸ばして顔を隠し、いつも俯くようにしてなるべく顔を見せないようになった。
すると付きまといはピタリと止み、それ以降私の生活に平穏が戻ったのだ。
私の顔は、男を狂わせる。
それに気づいてからの私は、常に下を見る癖をつけた。必死だった。
今はまだ良いけど、将来的には困ると思い、最悪整形しかないと在宅ワークでお金を貯めている。
男には寄らない、話さない、関わらないという三原則を自らに課し、恋愛なんか……恋することでさえも夢のまた夢だと思っていた自分だけど、高校二年生の春、そんな私の『全てが変わる出来事』が起きてしまった。
「麻衣子、マイコー、次は体育だよー」
古典の授業は好きなのに眠気に勝てず、後半すっかり寝入ってしまった。
友人の容赦ないハリセン攻撃を受けながら、嫌々仕方なく体を起こす。
「マイケルみたいに言うな。あと体育はサボる」
「ダメ。麻衣子は部活に入ってないんだから、しっかり運動しないと」
どっかのオカンみたいな事を言いながら、友人の瀬川沙耶は再びハリセンでパスパス叩く。
……ってゆか、そのハリセンどっから出した。
「ハリセンは常備してある。隙あらば麻衣子はボケるから、ツッコミとしては必要不可欠!」
「なにそれ」
思わず笑ってしまうと、沙耶は満足そうに微笑んだ。
正直、沙耶がいなかったら私はボッチ暗い女認定されて、寂しい高校生活を送っていたに違いない。私の事情を分かった上で、気軽に接してくれる彼女の存在にはいつも助けられている。
「じゃあ、行きますか」
着替えて二人で外に出ると、何やら上が騒がしい。見上げると三階の窓から誰かの腕が見える。
隣のクラスかな?
いつもたくさん笑い声が聞こえるから、クラス仲が良いのだと思う。
その時突然ふわっと、黒い影が私に覆いかぶさった。
「麻衣子!」
沙耶の慌てた声と目の前が突然暗くなった事で、パニックを起こしてしまう。
思わず座り込むと、ふわりと甘い香りがした。
「ん?これって…誰かの上着?制服?」
甘い香りをクンカクンカしてたら、その上着を取り払われてしまった。ああ、もう少し堪能したかった…
目の端に沙耶の慌てた顔が見えた。
「大丈夫?」
心地よいテノールの声。
強くなる甘い香り。
この人から香ってくるんだと気付いて、頭を上げ……る前に気づく。
この人……男だ……
ヤバイと思って慌てて下を向く。顔を見られたかも…どうしよう…
沙耶が私の前に立って彼から私を隠してくてた。少しホッとする。
「この子は大丈夫だから、戻っていいよ」
「……そう、みたいだね。ごめんね。あいつら俺の制服窓から落としちゃってさ」
「分かったから、ほら行った行った!」
シッシと手で追い払う真似をする沙耶。さすがにそれは失礼かと思ったけど、その人は「あとは頼んだよ」って言い、去って行った。
「そんな事して大丈夫なの?」
「ん?宮田の事?生徒会で一緒だから知らない仲じゃないし、色々察してくれたと思うよ」
生徒会で一緒と聞いて、少し変な気持ちになる。何だろう、何か腑に落ちない。
そんな私を見て、沙耶が吹き出した。
「麻衣子ってば分かりやすい!私は面食いじゃないから大丈夫だよ!」
「面食い?今の人かっこいいの?」
「なんだ、顔見てなかったんだ。なら何でそんな顔してるの?」
「良い匂いがする人だと思って……私の顔変?どんな顔?」
「恋に落ちた顔!」
そんな馬鹿なってその場では笑ったけど、心臓はドキドキとうるさいくらいだった。
そう。
私は初めて恋をした。